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シネマ365日

2014年1月8日

特集「初笑い」 がんばれ! ベアーズ (1976年 スポーツ映画)

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監督 マイケル・リッチー
出演 ウォルター・マッソー/テイタム・オニール/ジャッキー・アール・ヘイリー

キレイごとって大事だ 

 今や古典となったスポーツ・コメディ映画ですが、本作が古くならないのは映画のなかに人を生き生きさせる活力源がたっぷりあるからでしょうね。子供たちのコンプレックスからの脱出とか、いい加減な監督の負け犬人生からの復活とか、勝利至上主義の挫折とか、いじめとか差別を乗り越えていく力とか、プライドとかチームワークとか。地方の草野球チームだから勝つとか負けるとかいっても知れている。オリンピックのメダル争いでもないし世界選手権の決勝戦でもない。監督が「この試合が終わったら家に帰り、1年たったらまた集まるのさ」というように、子供たちも監督もそれぞれの個人生活があり、野球がすべてではない。でもときとして同じ目的のために同じ方向をみて、助けあってあるだけの力を出し尽くして讃え合えることは、人生でとても値打ちのあることなのだと、映画は素直に思わせてくれる▼少年野球チーム・ベアーズとは、まともな奴がひとりもいない劣悪チームだ。キャッチャーのエンゲルバーグは体重90キロの肥満児。太っているとバカにされてもヤケクソで食いまくるこの年にして敗北主義。ピッチャーのルーディはド近眼、タナーはプレーより喧嘩が好きな問題児。ハンク・アーロンを神のようにあがめるオタクの黒人少年、英語の通じないメキシコ人の兄弟。上院議員の息子がたまたまチームの一員なので、優勝できるチームにしてくれという議員の願いで、監督になったのがプールの掃除人モリス(ウォルター・マッソー)だ。彼はサンフランシスコ・ジャイアンツの二軍投手の時代、キャンプ試合でテッド・ウィリアムスを三振に打ちとったことが唯一の手柄話だ。コーチ料ももらえるとあって引き受けるが、メンバーの練習をみて絶望する。監督は選手たちがさぼるに任せコーチの「コ」もしない。子供たちもモリスを呑んだくれの人生の敗残者だとみなし、まともに彼と話をしない。初戦の相手はリーグ最強のヤンキースだった。ベアーズは一死もとれず26対0で試合を放棄した▼あまりの惨敗に子供たちは学校で嘲笑の的になる。上院議員はチーム解散を決めた。ところがこの劇的なまでの敗北がモリスの野球魂を目覚めさせた。彼はベンチで子供たちにもう一度チャレンジしてみようと話しかけるが、子供たちはすっかりモリスを軽蔑しぞんざいな言葉遣いであしらう。モリスはどうでたか「俺が監督だ、おれの言う通りやれ。文句をいうやつはブチのめすぞ」打って変わったモリスのやる気に子供たちはとびあがる。ゴロの捕球からモリスは教え始めた。なぜそうしなければいけないかもイチから説明した。一戦、二戦は連敗だった。どうせダメなおれたち、と意気消沈するメンバーに「そんなことはない。ファーストにアタマからよく突っ込んだ。あれは絶対セーフだった」とか「最初の試合は26点とられたが、今度は13点だったじゃないか」とかいって選手たちの向上を認める。モリスは「9歳の天才ピッチャー」と呼ばれた少女アマンダに会いにいった。彼女は昔別れた恋人の娘だ。彼女は12歳。バレーを習いたいからと、授業料稼ぎにロスの有名人の所在地図を売っている。モリスはアマンダに授業料をだしてやると持ちかけた。アマンダをチームに連れてきたときのみんなの反応は「ユダヤ人に黒人に今度は女か」アマンダは「打ってから言いな」と啖呵をきり、バットにかすらせもしない豪速球で三球三振に打ち取る。強いバッターがほしい。モリスはある日外野からいつも練習を見ていた少年が、拾ったボールを返球したときの肩のよさに目をつける。少年はいつもハーレー・ダビッドソンを乗り回しタバコをふかし、年上の女たちを相手にする不良のケリー(アール・ヘイリー)だとアマンダが教える。アマンダはモリスの止めるのもきかずケリー説得を買ってでた。説得は失敗にみえたが翌日ケリーはグラウンドに来て考えが変わったと言った。投打が噛み合ったベアーズは連戦連勝、ついに宿敵ヤンキースと決勝を迎えた▼モリスは「たかが子供野球だ」という覚めた感覚から「やればできるのだ、決勝まであとひとつ、どうしても勝つぞ」という勝利至上主義に変わってくる。チームワークを無視、いちばん野球ができるケリーに「外野にきた球は全部お前がとれ」と監督にあるまじき指示をだす。おかげでケリーは「チームをむちゃくちゃにする」と全員から爪弾き。相手のヤンキースの監督はピッチャーである息子がミスをしたとき「あのザマはなんだ、お前なんか野球をやる資格がない」と殴り飛ばす。息子はショックで茫然自失、捕球したボールをつかんだままマウンドで立ち往生してしまう。モリスはそれをみていつのまにか自分たち大人が「全員野球スピリッツ」を見失っていたことに気づく▼たかが草野球といえばいえる一つ一つの試合にトライしていく子供たちの〈正々堂々〉がいいですね。全力を出し尽くさなければもう自分自身が我慢できない、そんな〈一生懸命〉がはちきれそうになっている。キレイ事すぎるというかもしれないけど、やっぱりキレイなことっていいですよ。生きていく途上で人や自分のやっていることが馬鹿らしくなったときに見る映画です、これは。

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