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シネマ365日

2014年1月9日

特集「初笑い」 ドッジボール (2004年 コメディ映画)

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監督 ローソン・マーシャル・サーバー
出演 ベン・スティラー/ヴィンス・ヴォーン/クリスティーン・テイラー

毒々しいベンが最高 

 笑いには何種類もあるからどの笑いにするか、美輪明宏さんが監督にたずねた。相手は宮駿監督である。たぶん「もののけ姫」の打ち合わせだったのだろう。監督の要請に応えて美輪さんが笑ってみせると、得たりばかり、監督がとびあがって喜んだ、という話を聞いた。微笑、嘲笑、大笑、苦笑、微苦笑、笑いにもいろいろあるが微妙な感情によって千変万化する笑いは、言葉ではとらえきれないし、言葉におさまりきれない世界をつくる。この映画にもじつにたくさんの笑いがあって、始めから終わりまで、終始一貫登場人物たちは笑いがついてまわるのだ。おおげさに笑いとばしたり、意地の悪い嘲笑でコケにしたり、息の音をとめたがっているどす黒い笑いもある。それをほとんどひとりで受け持っているのがベン・スティラーだ。彼が扮するのは主人公ピーター(ヴィンス・ヴォーン)の敵役、ホワイト・グッドマンである。名前とは大違い、腹黒くて全然善良ではない小男が、エンジン全開で映画を牽引していく。おバカ映画はおバカ映画でも、ワルが最高のおバカ映画とは最高にパワフルだという、見本みたいなものだ▼オンボロスポーツジム「アベレージ・ジョー」のオーナー、ピーターは半年間も電気・ガス代を滞納し、弁護士のケイト(クリスティーン・テイラー)が支払い督促にきても無視。30日以内に5万ドルを払わないとジムを買収されることになる。買収する相手は「ジョー」のとなりにできたピカピカ最新設備のジム「クロボ」のオーナー、ホワイト・グッドマンだ。そもそも隣のジムに会員をとられてしまったから「ジョー」は閑古鳥が鳴くようになったのである。男性エステやダイエットを謳う「クロボ」では、ホワイト自らが異様だった肥満を是正し、美しい筋肉美あふれる男に変身していた。人気急上昇の「クロボ」は、となりの「ジョー」を買収して駐車場にしようという計画なのだ▼ピーターというのがこれまたヘタレ男で「目標があってたどりつけないより、目標のないほうが失望しないですむ」というようなやつ。でも「ジョー」にきて汗を流したり、しゃべったりすることで浮世の憂さを晴らしている貧乏な男たちから、ピーターは料金をとるつもりはなく、ジムはますます赤字経営である。このジムはおれたちの家代わりだという「ジョー」の常連たちはなんとか5万ドルを稼ぎだそうと知恵をしぼることにした。そんなときゴードンが「ラスベガス・インターナショナル・ドッジボール」に優勝したら賞金5万ドルだと提案する。まともにとりあわないピーターを説得し「ジョー」チームはベガスをめざす地区予選にむけ練習を始めた。ピーターの頼りない助手役のオーウェン、憧れの女生徒に近づくためにチアリーダーをめざすジャスティン、海賊姿がトレードマークのスティーブ、自惚れ屋のゴードン、それに昔ドッジボールの名選手だったという謎の老人がコーチを買って出て、彼らを半死半生の目にあわせる特訓を施す。しかし買収をあきらめないホワイトはチーム「紫コブラ」を結成。「ジョー」をぶちのめすため出場を決めた。そこへケイトがやってきた。彼女の雇い主はホワイトなのに金権主義の自己顕示欲のかたまり、歩く性欲のホワイトと縁を切って「ジョー」に参加するというのだ▼ホワイトは毒を吐くようなセリフを機関銃のように連射する。「下手な冗談野郎にしっかり教えてやる。お前らベガスで負け犬になる前に尻尾を巻いて逃げるンだな」「ヨダレ掛けを用意しな。離乳食が飛び散るぜ」と思うとケイトに近づき「僕への気持ちを隠さんでもいい」「あなたってなんていやなチビ男なの。気持ち悪くてゲロ吐きそう」「ゲロが趣味か。それなら僕チンも悪い子になるぞ」とまあ「オレ様主義」をゴリゴリに押し付けまくるのだ。それに対しピーターはなにをいわれようと挑発に乗らない。抵抗しない。「どうする、この腑抜けやろう」「言った通りだ」「勝ち目はないぞ」「だろうな」「やる気か」「おれにもわからん」「いうことは」「終了だ」である。冷静な理想のリーダーかもしれないが存在感のないことおびただしい。おまけにこのリーダーは、不慮の事故でコーチが死ぬとたちまち自信喪失、どうしていいかわからなくなって決勝寸前にチームメイトを放ったらかして帰りの飛行機にのろうとするのである。いくらこのあとピーターにいいカッコをさせても全然盛り上がらない。映画はホワイトの毒々しさが異彩を放つ一人舞台になってしまった。ベン・スティラーっていっしょの映画に出たくない俳優のひとりでしょうね。「ナイト・ミュージアム」で彼の相手役になったのが博物館の展示品だという設定は正解よ(ロビン・ウィリアムスは別として)。ドッジボールの試合はスピーディな好場面です。宿敵「紫コブラ」の攻撃は顔面と股間に集中。ルール? さあ。そんなことブッとぶ「掟破り」に弾けてしまうのです。

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