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特集「ダンディズム-dandyism-」

2014年1月16日

特集「ダンディズム」 スティーヴ・マックィーン シンシナティ・キッド (1965年 社会派映画)

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監督 ノーマン・ジュイソン
出演 スティーヴ・マックィーン/エドワード・C・ロビンソン/アン・マーグレット/チューズデイ・ウェルド/カール・マルデン

やさしさと抑制のダンディズム 

 この映画のダンディズムとはどこにあるのだろう。ノーマン・ジュイソンは多彩な、目も彩な役柄を配置している。スティーヴ・マックィーンが演じるギャンブラーのシンシナティ・キッドがもちろん主人公なのだが、一足飛びにマックィーンのことを云々するまでに、彼を取り巻く登場人物たちの性格の強さとか、キャラの彫りの深さそのものが本作のおもしろさのベースだと言いたくなる。キッドがファーストシーン、ニューオリンズのうらぶれた界隈を肩で風を切って歩いてくる。葬式に行き合うが歩速をゆるめもしない。まっすぐ前をみて脇見もしない。自分が必要と決めたこと以外のなにかに関心を持とうともしない。そんな剣(つるぎ)のような男の像がふつふつと伝わる。彼はギャンブラーだ。小さな町のチンケなポーカーゲームには嫌気がさしている。才能ある若いギャンブラーがうずうずしている。映画が始まってものの10分たつかたたないかのうちに観客はこの映画が隠している〈物語〉にくいつく。劇中何度となく言われる「スタッドポーカー」とは。一般にポーカーは札をすべてみせないのだけど、スタッドポーカーは一枚だけ隠し、残りをテーブルに見せて勝負する。見物人は楽しめるが、勝負する本人たちは、相手がもっている一枚がなにか、読みと心理戦のプレッシャーが強いのよね▼キッドは町にポーカーの名人ランシー(エドワード・C・ロビンソン)がくると知り、ディーラーの長老格シューター(カール・マルデン)に、手合わせしたいと頼むが、マルデンはやつのポーカーは神業だから相手になるなとキッドの自信過剰をいさめる。キッドはなおのこと燃え対戦に持ち込む。マルデンはキッドの後見人のような生真面目な男で、業界の信用も厚い。その男の妻メルバがアン・マーグレットだ。メルバは年の離れた父親のようなシューターにあきあき。欲望に正直で虎視眈々と男を物色している。メルバが目をつけたのがキッドだ。キッドには恋人クリスチャン(チューズデイ・ウェルド)がいる。田舎から出てきたうぶな娘だ。キッドを愛しているがギャンブラーという明日の知れない仕事は不安だ。でも止めそうもないキッドをあきらめ故郷に帰る長距離バスに乗る。ひきとめはしないもののキッドは未練気にバスを見送る▼ランシーに大金を巻き上げられた地元のボスがいた。ランシーとキッドが対戦すると聞き、キッドに勝たせランシーにひとあわふかせようと企む。そこでシューターを抱き込みキッドに有利な札を配れともちかける。シューターは断るが若い妻は金がかかるだろう、そういえば君はおれに借金があったな、と脅す。メルバはキッドを誘惑し一度はメルバの尻を叩いて部屋から追い出したキッドだが。田舎の両親の家にいたクリスチャンはある日キッドの訪問を受ける。畑を耕しているカチカチの両親は、流暢な挨拶はできないが好奇心も手伝ってキッドに夕食をすすめる。母親も父親もろくに口をきかない沈黙の食卓だ。キッドはクリスチャンにカードをもってきてくれと頼む。両親のいるところで滅相もない、クリスチャンはビビルがキッドは慣れた手つきでカードを並べ、どれか一枚選んでくれと父親に頼む。一枚手にとったとたん「スペードの3」とあててしまう。びっくりした父親も母親も笑い出し、いっぺんにキッドと打ち解ける。甘い言葉ひとつ口にしたこともなく、まして人見知りのひどいキッドが、大勝負を前にはるばる田舎までやってきて、初対面の両親に手品までして受け入れてもらおうとする、歓心を買おうとする。クリスチャンは初めてキッドの愛情がわかる。このシーン、ろくにセリフをしゃべらないマックィーンがなかなかよかったですよ。こういうのも男のダンディズムじゃないでしょうか▼ポーカーが始まる。キッドは自分のところに有利な札がくることに気づき、シューターに「おれは自力で勝てる。余計なことするな」と言い渡し、ディーラーを変えてしまう。ゲームの展開は何度かの休憩をはさんでもつれこみ、若さと体力にまさるキッドが攻勢に出る。ランシーが崩れ始めた。キッドは勝利を確信する。でもちがう。ランシーの作戦勝ちだった。女ディーラーは最後の一枚をめくり「ジャック」を示したランシーに言う「うまく誘い込んだわね」。キッドは完敗。ポーカーには負け、田舎から帰ってきたクリスチャンにはメルバとの浮気の現場を見られ、黒人少年との賭けにも負け、水に落ちた犬同然。それをマックィーンは表情を変えずいつもの「キッド」で歩いてくる。〈抑制する力〉がときにとびきりのダンディズムを示す見本みたいなラストです。

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