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特集「ダンディズム-dandyism-」

2014年1月17日

特集「ダンディズム」 スティーヴ・マックィーン 砲艦サンパブロ (1966年 ヒューマン映画)

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監督 ロバート・ワイズ
出演 スティーヴ・マックィーン/キャンディス・バーゲン/リチャード・クレンナ

最高のマックィーン 

 「砲艦サンパブロ」のときスティーヴ・マックィーンは36歳だった。「大脱走」のヒットを受け、「マンハッタン」で微妙な恋愛劇を「シンシナティ・キッド」でギャンブラーの陰影を、と着々芸域を広げ「荒野の七人」で成功したアクションスターから脱皮しつつあった。監督ロバート・ワイズは「傷だらけの栄光」のときのチョイ役のマックィーンが印象的だった。初対面をこう語っている「ラフなジャケットと小さなひさしのついた帽子をかぶってはいってきた。生意気そうだったがよく似あっているので目をひいた。小さな役を与えたが、こんな大物に成長するとは思っていなかった」当時妻だったニール夫人にいわせれば、マックィーンはそのころから、機敏な動きや眉をあげたり目線を外したりする微妙な表情など「どう動けばカメラ映りがいいかを熱心に研究」していた。10年ぶりにマックィーンを選んだロバート・ワイズが驚いたのは「自分の見せ方を熟知している」マックィーンの成長ぶりだった▼「砲艦サンパブロ」はオープニングからしてロバート・ワイズが「この映画は正攻法で押しまくります」と宣言しているような映画だ。時代は1926年。中国に革命による国家統一の機運がめばえ、蒋介石の国民党と共産党の決戦が迫っていた。CGのない時代に周到なセットと入念なロケ、人海戦術をいとわぬ密集する群衆の迫力と建造物の時代考証。だいいちこのものいわぬ主人公「砲艦サンパブロ」がじつに味がある。廃船間近のオンボロ船の乗組員たちはコリンズ艦長(リチャード・クレンナ)と下士官以外はみな落ちこぼれ。主人公の機関士ジェイク・ホルマン(スティーヴ・マックィーン)はエンジンにかけては一流の技術者だが、人間関係が円滑に結べず転属ばかりして「サンパブロ」にたどりついた。砲艦を選んだのは大きな艦隊だということをきかねばならぬ上司が多いからだ。サンパブロは米人保護と救出の任務があり、中国の奥地に宣教師を救出に行かねばならない。宣教師といっしょに来たアメリカ人の教師シャーリーがキャンディス・バーゲンで当時19歳。まあ初々しいというか、清楚というか、ホルマンはひと目で彼女に惹かれるものの「レディが水兵なんかといっしょにいちゃ、いかんです」なんていって遠ざける。でもシャーリーはいつしかホルマンが好きになる▼いくつかの複雑なエピソードが、ワイズ監督の手際のよさですっきりまとまって同時進行する。ホルマンのたったひとりの友達フレンチーの愛と死、ホルマンが機関士として育てた中国人青年ポー・ハンの虐殺、国民党から殺人罪の容疑者として身柄引き渡しを要求されたホルマンを「自首しろ、おまえがいたら迷惑だ、下船しろ」と大合唱する乗組員たち。狂気の集団と化した乗組員たちに艦長は「自首はさせん」銃をぶっ放し鎮静する。フレンチーが中国人女性と結婚するときホルマンとシャーリーが立会人となる。だれもいない教会で誓の言葉を述べたフレンチーがホルマンに「祝福してくれ」ホルマンは「ふたりの人生が幸運と平安に恵まれますように」。シャーリーは「わたしといっしょに行きましょう。人種も階級もなくただの人間で生きていくのよ。牧師があなたを技術部の責任者にしてくれるわ」ホルマンは、その背中に投げた石が乗ると願いが叶うという大きな石像「願いの象」のそばで長いことたたずむ▼砲艦サンパブロは中国側の封鎖を強行突破する。同艦の乗組員は全員で三十人いるかいないか。川面に船を並べて封鎖した中央を割くのだ。このシーンの銃撃戦、国民党の学生たちが船に乗り込んできたときの白刃戦、かさなりあう死体の山、傷だらけの兵士たちが手にするのはもはやピストル一丁、切り結ぶ武器は斧である、そんなアナログの戦闘を監督は寸秒の手抜きもなく撮りあげる。いうなればこの映画でのマックィーンは、本来クローズアップされない存在の男、組織のなかでその他大勢に組み込まれる男。仕事はできるがひとりでいることが好きな扱いにくい男、大げさな身振りで孤独をアピールする従来のヒーローではない、恋人を逃がすため、だれもみていないところで無名のまま死ぬ水兵のダンディズムを、マックィーンは最高に演じた。気に入らなければすぐ臍をまげるマックィーンだがロバート・ワイズには通用しなかったらしい。監督が難しい撮影手法を技術陣と打ち合わせしているとき、マックィーンが何かの質問にきた。「今それどころじゃない」怒鳴って追いかえすと「(仕事はするが)3日ほどおれに直接口をきかなかった」(笑)。

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