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特集「ダンディズム-dandyism-」

2014年1月25日

特集「ダンディズム」 アラン・ドロン 愛人関係 (1974年 サスペンス映画)

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監督 ジョルジュ・ロートネル
出演 アラン・ドロン/ミレーユ・ダルク/クロード・ブラッスール

聖なる男 

 アラン・ドロン扮する弁護士マルクは過去に夫殺しの女ペギー(ミレーユ・ダルク)の弁護をして精神鑑定の結果無罪にした。精神疾患で入院治療していたペギーは退院してニースにきている。テレビ作家のフランソワ(クロード・ブラッスール)は海辺をひとり歩くペギーをみて一目惚れ、ストーカーのごとくつきまとってとうとう電話番号を聞き出す。ペギーの広大な屋敷を訪れたフランソワはマルク弁護士に会い、彼女が治療に用いた薬物の依存症からまだ立ち直っていないことを聞かされるが、ますます情熱は燃えあがる。しつこい中年男の妄執と惑乱を名脇役のブラッスールが好演しています。役柄こそクレージーですが、彼の表情をよくみるととても知的です。でもミレーユ・ダルクが恋する相手という設定はかなりしんどかったけどね▼ペギーは薬物中毒の後遺症として男性恐怖症にかかっており、自分に触れる男を殺害することをマルクは知っている。だからペギーから電話で、屋敷のなかで庭師が殺されていると聞いても驚かない。ペギーには殺人の瞬間意識が空白になり自分が殺したことを知らないのだ。淡々と事後処理をしたマルクは部下に手伝わせ死体を運び出し川に沈めた。警察にタレコミがあり川から死体をひきあげたガルニエ警部は、被害者がペギーの家の庭師だとわかってピンとくる。彼とマルクはいい友人だ。マルクが、精神を病み男と肉体関係を結べないペギーを愛し、傷つきやすく繊細な彼女の神経と精神を、影にも日向にもなってかばっていることを知っている。二度目の殺人が起こる。被害者はマルクの弟ドニである。ペギーに夢中のフランソワは彼女をかくまい、弁護士も警察も彼女を陥れようとしているごとく、ナイトのようにふるまうが、マルクは女にこれ以上かかわるなと警告する。警部はマルクに「あのとき彼女を無罪にしたお前がまちがっていた。もうあきらめろ、彼女は生涯精神病院で暮らすのだ」と引導を渡す▼三度目の殺人は未遂だった。被害者はフランソワである。ペギーを抱こうとしてカミソリで切りつけられ「君は狂っている」と叫ぶ。やっと目が覚めたという感じ。マルクはペギーを車にのせ、峠の展望台に連れてきて、ペギーが行きたがっていたオーストラリアの方向である南を示し「ふたりだけいこう」。ペギーはうれしそうにうなずくがマルクの手は拳銃を握っている。彼は自分の手で女を殺すのだ。このDVDで銃声は一発だったが二発のバージョンもある。つまり女を死なせてマルクも自殺する結末だ▼さて本作の5年前「ジェフ」で共演したアラン・ドロンとミレーユ・ダルクはその後ざっと15年にわたって愛人関係が続く。ミレーユ・ダルクは1983年アラン・ドロンと別れ結婚し、相手と死別して再婚しましたがアラン・ドロンとはいいお友達かなにか、とにかくズーッとおつきあいがあり、2003年からのテレビシリーズ「刑事フランク・リーヴァ」でも共演しました。しかしこっちの共演のほうが話題でしたね。2007年「マディソン郡の橋」の舞台です。アラン・ドロン72歳。ミレーユ・ダルク69歳。本作から33年後でした。うう~む、としかいえないね▼アラン・ドロンの半生にかかわった女性三人、ロミ・シュナイダー、ナタリー・ドロン、ミレーユ・ダルクのなかでミレーユ・ダルクとがいちばん長かった。アラン・ドロンは女優を骨抜きにする名人みたいなところがあり、ロミ・シュナイダーは別れのショックでしばらく仕事から遠のき引退かとまで噂された。ナタリー・ドロンは「サムライ」のチョイ役が病みつきになって、一事女優業をめざしたくらいだが、それが原因かどうか結局離婚。ミレーユ・ダルクはアラン・ドロンの愛人という立場でのみ知られすぎましたが本来いい女優です。金髪の元祖ボブ・カット、すらりとしたのびやかな長身にいやみのない淡彩的な容貌。ジャンヌ・モローの濃い陰影やブリジッド・バルドーの肉食獣のようなパワーや、カトリーヌ・ドヌーブの目もくらむあでやかさはありませんが、要するにアラン・ドロンの好きなタイプなのですね。控えめで美しくしっかりして頭がいい(いいかげんにしろ)▼この映画のアラン・ドロンのダンディズムは徹頭徹尾プラトニックな愛にある。身体に触れたら殺される、男にそのおそれもあるにはあるが、神経が狂ってしまうほどの鋭すぎてはかなくさえある感受性、この世のものとも思えぬ繊細な女を、欲望を交えず守りぬく。唐突ですがロレンス・ダレルの代表作にして傑作「アレキサンドリア四重奏」に登場する娼婦がこう独白する箇所があります。「こわれやすい陶器のように扱われるのもいいものね」彼女の客となったその男は自殺しますが、彼が娼婦に、大切な陶器のように触れるやさしさは、セックスというより精神的な慈しみであり、本作のマルクの愛に似ていると思えるのです。この映画のダンディズムは〈聖なる男〉そのものです。現実のアラン・ドロンにそんな一面があったのかなかったのか知りませんが、とにかく彼は出演作に選んでいます。ミレーユ・ダルクはほとんどセリフがありません。肉の薄い頬をひとすじ涙が流れ、青灰色の瞳でじっと男をみつめるだけ。このミステリアスな雰囲気がよく似合っていました。ハリウッドにはあまりいなかったタイプです。

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