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シネマ365日

2014年1月29日

背徳の囁き (1990年 サスペンス映画)

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監督 マイク・フィギス
出演 リチャード・ギア/アンディ・ガルシア/ウィリアム・ボールドウィン

役者たちの「気配」のようなもの

 リチャード・ギアが初の悪役。ヌメヌメした善人ヅラで、どっぷり悪につかっているサイテー男を意外と上手に演じていました。女の内股や手の甲をなでる手つきなんか、かなりいやらしかったです。監督も役者もいいですね。マイク・フィギスは「リービング・ラスベガス」の監督です。このときの年齢はギア41歳、ガルシア34歳。駆け出しではなく、重鎮だのベテランだのとおだてて遠ざけられる年でもない。ガルシアはこのあと「ゴッドファーザー」でアカデミー助演男優賞にノミネートされました。ウィリアム・ボールドウィン27歳。四人の男兄弟がみな俳優というボールドウィン家の三男。代表作にシャロン・ストーンと共演した「硝子の塔」があります。監督が「ソルト」のフィリップ・ノイスですね。シャロン・ストーンが出演しているだけでラジー賞の対象になるのじゃないか。そう思うほど同作も例外なく同賞の候補になりましたが、今みたいにIT技術が発達した時代にみたらもっとよく「硝子の塔」の面白さがわかると思います。原題は「Sliver」。無機質なタイトルとエロティックな内容。異質なものが激しく衝突する、そんな感覚にぴったりの音楽はやっぱりこの人ハワード・ショアです▼「背徳の囁き」に話を戻すと、この映画のよさは役者たちと監督がかもす気配とかムードとかいうところにあって、筋書きそのものは変哲のない刑事ものです。ロス市警に内務調査員として赴任したレイモンド(アンディ・ガルシア)は相棒の女性のエイミーと組んで〈警察内警察〉の役割、つまり署内の悪の洗い出しにかかる。まずとりかかったのが警察大学時代のヴァン(ウィリアム・ボールドウィン)の麻薬依存の調査だった。ヴァンの背後で糸をひいているのがロス市警のやり手の警官デニス(リチャード・ギア)だ。暗黒街にも通じている彼は警備会社のアルバイトに同僚を送り込むなどして警官を抱き込み、署内に隠然たる勢力をもちやりたい放題だった。レイモンドらの調べがだんだん自分の牙城を切り崩してくることに危機感をもったデニスは、レイモンドの妻キャスリーンを呼び出してレイモンドを挑発し、彼の疑惑と嫉妬をかきたてた。レイモンドの追及によって過去の罪悪がばれることを恐れたデニスは、口封じのためヴァンをはじめつぎつぎ警官を殺していく。いっぽうレイモンドは妻がデニスと関係しているのか、疑心暗鬼にさいなまれる▼ガルシアは劇中ラテン系男子の面目というか、妻を問い詰めるのもストレートです「やつと寝たのか。寝たのか」「あなたバカじゃないの。つきあっておれないわ。いい加減にして」「言え、やつと寝たのか。楽しそうにレストランで喋っていただろう。笑っていたぞ。やつが手にさわっても払いのけなかったじゃないか」(遠くからそこまで見えるはずがないと思うのですが)女房の首を締め上げそうな勢いです。彼はこの前のシーンでパーティーで接待している妻をとらえものすごい剣幕で「本当のことを言え」と詰めより、あげくテーブルをひっくり返すわ、怒鳴りだすわ、大騒動を引き起こしたばかり。たとえ男同士の目からみても(ここまではちょっとできんで)と思うのでは。頭にきたキャスリーンはこんなやつに説得してもムダとばかり、負けじと大声をはりあげ「あなたのことで相談があるとデニスがいうから行ったのよ。心配だったからよ。なんで怒られないといけないのよッ」大噴火土石流となります。レイモンドは「浮気したら殺す。殺してやる。殺してやるからな」といいながらキャスリーンにしがみついてもう泣き声である。なにやっとンじゃ。あほくさ▼そういうところもありましたが、全体としてよくできていたのじゃないでしょうか。デニスが裏社会で手を汚すことになった原因が、三度の離婚と結婚で8人になった子供の養育費だったなんて、悪の仮面の下は生活のやりくりに追われる疲れたパパだったってこと? デニスの現在の妻をアナベラ・シオラが演じています。やさしい夫が一瞬みせる冷酷な仕草に、冷たいものが背筋を走る、そんな女の直感をよく出していました。 

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