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特集「アニマルフェスティバル」

2014年2月16日

特集「それいけ アニマル・フェスティバル2」 チキンラン (2001年 アニメ映画)

監督 ピーター・ロード

メンドリたちの大脱走 

 にわとり版「大脱走」です。卵を産めなくなったら首をちょん切られ「かしわ」にされるメンドリたち。強欲な飼い主は卵よりチキンパイのほうがもうかるとふみ、大仕掛なオートメーション「チキンパイ」製造機を導入。ニワトリをいれたらいくつかの工程で加工処理をほどこされ、最後は立派なパイの箱詰めになって出てくるあんばい。画面のすみずみまで作りこんだ精緻なアニメ技術、イギリス人独特のひねりのきいた笑い、被写体を粘土でつくるクレイアニメの丸みと温もりが、メンドリたちの過酷な運命をユーモラスに映す。本作は全米で批評家連盟の最優秀アニメーション賞を受賞、本国イギリスでは興行収入初登場で堂々1位を獲得した▼イギリスはヨークシャーにあるトゥイーディー養鶏場。飼育されているメンドリのジンジャーは、柵の向こうに広がる自由の天地を夢見て何度となく脱走をくりかえし、そのたび失敗して独房入り。彼女の計画とはいずれ死をまつメンドリの運命から仲間全員を解放する、つまりこの養鶏場から集団脱走することだ。「大脱走」のスティーブ・マックイーンの役ですね。独房の壁にボールを打ち付けるシーンまであります。欲の皮の突っ張った女主人ミセス・トゥイーディーは旦那をこきつかい、たくさんのメンドリを支配下において卵を産まなくなったトリたちを容赦なく処分していた▼脱走計画にひそかに協力するメンドリに、だれよりもたくさん卵を産み落とすバンティ、いつも編み物をしている気立てのやさしいバブス、エンジニアの天才的頭脳をもつスコットランド出身のマック、戦争中は英国空軍にいたことを自慢ばかりしている長老格のファウラー。ジンジャーは金網のフェンスを飛び越えようとしたり、柵の下に穴を掘ったり、ありとあらゆる方法を試み失敗にもかかわらず、その日も脱走計画に没頭するジンジャーの頭の上に、オンドリが空から降ってきた。墜落したショックで羽を傷めたオンドリの名前はロッキー。ジンジャーは空を飛べたらあの柵は越せるのだ、ロッキーが飛べるのだから自分たちもやってやれないことはないと、決意も新たに特訓を申し込む。ロッキーはサーカス団から逃げてきたニワトリだという。半分ちぎれたポスターには勇躍空を飛んでいるロッキーの勇姿が描かれていた。ロッキーは「簡単に空を飛べると思っているのか」とにべもなく拒否するが、サーカス団から脱走オンドリの捜索隊が養鶏場にきていることがわかり、匿ってやるかわり飛び方を教えよとジンジャーは交換条件をだす▼しぶしぶ引き受けたロッキーは胸筋をつけるための腕立て伏せ、羽ばたきと跳躍の練習、ジャンプ台からの飛び降りなどつぎつぎ練習させるが、肝心の飛翔のプログラムがない。技術者のマックは「どう考えてもニワトリは飛ぶ構造ではない」と解剖図をみせてジンジャーに報告するが、ジンジャーは脱出するには飛ぶしかないと頑として方針をかえない。チキンパイ自動製造機が組みあがり試作品のため一羽試してみるからどのトリか選ぶようにミセス・トゥイーディーは旦那にいいつけた。旦那はもちろんふだん脱走ばかりして世話をやかせているジンジャーをつかまえてくる。あわやチキンパイとなる寸前、ロッキーの機転で機械は故障、修繕の時間を稼ぐのに成功したが、翌日ロッキーが失踪してしまった。ロッキーはサーカス団のポスターのちぎれた半分を残していった。それを見たジンジャーは真相がわかった。ロッキーは自力で飛べたのではなく、大砲から空中に放り出されて羽ばたくだけだったのだ。飛び方なんかハナから知らないのだ。あのペテン師め▼万事休す。さすがのジンジャーも矢尽き刀折れる。みんな潰されてパイになるのだ。あと数日で機械は稼働するだろう。メンドリたちは気持ちがばらばらになって失意の底に沈む。ジンジャーはしかし土壇場になってひらめいた。飛べたらいいのだ、ニワトリは飛べなくても、ニワトリをのせて飛べるものがあればいいのだ。なんと彼女はファウラーが自慢していた英国空軍の飛行機をニワトリ用に造ろうというのだ。生きるか死ぬか、絶体絶命のふちからニワトリたちは一丸となった。「100万分の一の可能性しかない」というファウラーに「一ならあるということね」とジンジャー。ここからの「大脱走」バージョンがじつに楽しい。釘を集める、鳥小屋のボルトを外す、ねじ回しを調達する、布を縫い合わせる、板をつなぐ、そんな作業が夜を日についで進んだ。一方でついに「自動パイ焼き装置」は完成した。ジンジャーは迷わず発進を指示する。それまであえて部分的にしかみえなかった大脱走作戦がここで初めて全貌を現します。のけぞってしまうのだ、これが。劇場だったら大爆笑が起こったにちがいない。監督はいちばんおいしいところを最後に残していました。ロッキーもちゃんと帰ってきます。それもジンジャーとミセス・トゥイーディーの空中決戦のクライマックスで。頭の悪い代名詞みたいにいわれがちなメンドリが、あらゆる困難と失敗にめげない、ニワトリ版エレン・リプリーなことが最高。そしてきた、運命の瞬間…アッハッハ。思い切り笑っちゃおう。