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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2014年3月4日

特集 LGBT-映画にみるゲイ 黙秘(1994年 ゲイ映画)

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監督 テイラー・ハックフォード
出演 キャシー・ベイツ/ジェニファー・ジェイソン・リー/クリストファー・プラマー

母親の罪

 この映画をゲイの領域にいれるのはおかしいといわれるかもしれない。ベッドシーンもキスシーンもないし、当事者同士がゲイを表象する場面も台詞もない。しかし事件をなりたたせた精神的な背景はゲイです。初老のヒロイン、ドロレス(キャシー・ベイツ)は、22年間、ヴェラの家でメイドとして働いてきた。口やかましい女主人はひと使いが荒い。ドロレスも二言目には「殺してやる」と叫ぶ。映画は冒頭、ドロレスとヴェラが二階でもみあい「やめて、ドロレス、やめて」とヴェラが懇請する刺激的なシーンから始まる。ヴェラは階段から転げ落ち、虫の声で「お願い」と頼む。ドロレスは太い麺棒をドロレスの顔面に振り下ろそうとしたがためらう。ドロレスは弱々しい声でさらに「お願い」という。そこへ郵便配達がドアをあけてはいってきた。ヴェラはすでに息をひきとっており、ドロレスは逮捕された。マッケイ警部は今度こそドロレスと刑務所送りにしてやると決意する。18年前ドロレスの夫が死んだ。空井戸に落ちて事故死となったが警部はドロレスが殺したと信じているが証拠がなかった。そして今回も、ドロレスは「殺していない」を主張している▼原作はスティーブン・キング。監督はテイラー・ハックフォードだ。原題は「ドロレス・クレイボーン」。つまりキャシー・ベイツが演じるのはタイトルロールであり、キングはキャシーが「ミザリー」でアカデミー主演女優賞をとったあと、彼女のために本作を書きました。ハックフォード監督は「愛と青春の旅立ち」「ディアボロス/悪魔の扉」「Ray/レイ」と、青春ものから伝記もの、最近はジェイソン・ステイサムの「PARKER/パーカー」でアクションと、守備範囲が広く、どの分野にもおもしろい作品が多い監督で、妻はヘレン・ミレンです▼キャシー・ベイツにからむ俳優陣がドロレスの娘セリーナにジェニファー・ジェイソン・リー(「誘惑の接吻」)。怨みをこめてドロレスをつけねらう警部はクリストファー・プラマー(「人生はビギナーズ」)だ。原作者も監督も役者も、ただではおきないやつばっかりが、この映画をどう作ったか。見応えのあるものになりました。舞台はドロレスの故郷メイン州の小島。閉鎖的な地方の男社会だ。ドロレスの夫は妻を隷属させる家庭内バイオレンス男、ドロレスの生きがいは一人娘セリーナの成長だった。娘が13歳になった。飛び級で進学する優秀な子の成績がいっきょに落ちた。ドロレスは最悪の事態に思い至る。夫の性的虐待だった…その後名門大学を卒業した娘は島を出てニューヨークの新聞社で記者をしている。地元紙のドロレス逮捕の記事がファクスで新聞社に送られセリーナは帰郷する。娘は母が父を殺したと思い込んでおり、母と距離を保ち許していない。父親のいやらしい行為はショックにより部分的な記憶喪失になっている。ドロレスの性格は攻撃的だ。島の住民から「人殺し、島から出て行け」と家の壁に落書きされても大胆不敵に嘲笑する▼娘はそんな母親にかかわりたくない。取材があるから弁護士を世話する、あとは自分で解決してくれと冷たいものである。母親はそんな娘の荷物を解き、服をたたみ直し、身の回りを整え好きなものを作ろうとする。ドロレスの口癖は「母さんのようになりたいの? 一生人にこきつかわれて人の下着を洗濯したいの?」だった。メイドをするのは娘の学費のためだった。ある日夫から棍棒で背中を殴られ、立てなくなったドロレスは町を出ると決心し、預金を引き出しにいくと11年かけて貯めた全額3000ドルは解約されていた。ドロレスは銀行の責任者に食ってかかる。名義人でもない夫が預金を引き出しにきて、しかも大金を解約するというのに、預金者である自分に一言もことわりをいれないのか、わたしが女だからか、もし預金者が夫で、わたしが引き出しにきたら、あなたは夫の了解をえたうえで金を出したはずだ。夫は娘を犯す犯罪者だった。島に日蝕の日がきて観光客が到来した。夫は妻をブス女と貶め、人の不幸ばかりうれしがっている卑しい男だった▼警部は遺言によってヴェラの遺産160万ドルがドロレスに遺贈される事実をあげ、それが犯行の動機だと主張するが、ドロレスは「殺していない」一点張りで事情を説明しようとしない。娘は言う。「そんなことだと刑務所行きよ」母親は言い返す、「極楽よ。寝て座って三度の食事が出るわ」。娘は取材があるからといって島を去る。数日後ドロレスは警察の尋問に呼ばれ、警部はしつこく質問をくりかえす。誘導尋問に近い。そのときだ。「その件は答える必要ないわ」入ってきたのは娘のセリーナだ。娘は母親の尋問に立ち会うことができた。警部の示すあらゆる証拠が情況証拠にすぎないことをセリーナは指摘し、母がヴェラを殺すはずはない、ふたりは愛し合っていたのだと断言する。ここから映画は急展開する▼「ほう、愛の物語をききたいね」冷笑する警部に「22年間週給20セントでなぜ母はやめなかったか。ヴェラが寝たきりになった10年間、一日24時間365日、母はいっしょに暮らした。ふたりは身をよせあって生きてきたのよ。遺産、遺産というけどその遺言はいつ書かれたの。8年前? 母が犯人だとしたらなぜ8年も下の世話をしながら待つ必要があるの。警部、あなたはなぜ母を付け狙うのか、わけを言ったらどう。18年前父が死んだことを母の犯罪だとしたものの、立証できなかった腹いせでしょう。もういい加減にしたら。わたしも父の死には疑問はあったわ。18年間一日も考えない日はなかった。でも精も魂も尽きたわ。これきりにしたいわ。娘のわたしがそれで納得なの。警部あなたはどうなの。それでも裁判にするというなら、ニューヨークから腕利きの弁護士を送り込むわ」検事は起訴しても裁判を維持できないと判断する▼真相はこうだ。娘と町をでると、ドロレスがいちばん先に相談したのがヴェラだった。「ドロレス、わけを話して」「じつは奥様」「お話のときは〈ヴェラ〉よ」性的虐待を聞くとヴェラは慎重に言う。「セリーナがそんな目に…ドロレス。あなたが町をでることはないわ。こうしているあいだにも世界中の夫の何人かは事故にあっているわ。不幸な女には事故という親友がいるのよ」ドロレスは腹を決める。日蝕の日だった。「ドロレス、パーティの支度は万全だわ。ここは大丈夫だからあなたは家に帰って」とヴェラはドロレスを促した。「ご主人も早く帰っていらっしゃるのでしょ。いっしょに日蝕を楽しむといいわ」。ドロレスは帰宅し、酒の支度もできている、つまみもあると夫に話しかけた…野原の空井戸によっぱらった夫をおびきよせたドロレスは、井戸に転落した夫の死を見届け家に戻った。ヴェラの件の真相はこうだ。「ドロレス。わたしは臭い年寄りの自分に愛想が尽きたのよ。手を貸して。病院なんか絶対にいやよ。ここで殺して。お願いドロレス、わたしを助けたいと思うなら早く殺して」もみあううちにヴェラは転落。苦しい息の下から早く殺してくれとたのみ、ドロレスが麺棒を手にしたものの、ためらっているときに郵便配達人がきたのだった。夫殺しは愛しあう女ふたりが、娘を性的虐待から救うために企てた殺人だった▼キャシー・ベイツは水を得た魚ですが、陰々滅々、終始暗い顔で母親を冷たく扱う娘のジェニファーもなかなか頑張りました。事件の処理がついたあとニューヨークに帰るフェリーに乗ろうとして、見送りにきた母親にいう。取材の予定なんかない、仕事は後輩にとられたのだと、シュンとして母親に打ち明けるところなんか、とくによかったですね(笑)。

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