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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2014年3月5日

特集 LGBT-映画にみるゲイ シスタースマイル -ドミニクの歌 (2009年 ゲイ映画)

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監督 ステイン・コニンクス
出演 セシル・ド・フランス/サンドリーヌ・ブランク

すべてを叶えた人生 

 「ドミニク」のシンガー・ソング・ライターがジャニーヌ・デッケルス(セシル・ド・フランス)。彼女はベルギーのブリュッセル近郊のパン屋の娘、厳格は母、善良な父、従姉のフランソワーズと同居する。ガールスカウトでサッカーの試合にでたジャニーヌはプレーの最中アニー(サンドリーヌ・ブランク)とぶつかる。アニーは画家志望。ジャニーヌはフランソワーズといつかいっしょにアフリカに行き救済活動すると約束、でもアニーと気があったものだから美術学校に進学すると方向転換。母親は近所の青年ピーターと結婚させ店を継がせたく、許すはずがない。自分探しに思いあぐねるジャニーヌはある日教会へ。神父の励ましを受けたジャニーヌは今度は修道院に入るといい、母親は「修道院なんか男と人生を恐れる女が逃げ込むところよ!」▼「ドミニク」のメガヒットでその才能と将来を世界にアピールしたジャニーヌだったが、300万枚という大ヒットの収益はすべて修道院に、彼女が独立したあと修道院は「シスタースマイル」の名前は修道院に帰属すると主張して使用を許さず、やっと実現させた念願のツアーでは初日に「金色のピル」を歌って避妊を罪悪視する教会の反発を招き、ツアーは中止。公演の会場を探すが「シスタースマイル」の名前なしに客はよべないと、どこも受け付けなかった。51歳でアニーと心中し一生を終えたジャニーヌだが、行く先々でのトラブルの続出は本人の性格としかいえないものがあって、よっぽど度量のある男か女でないと彼女を包容できるものではなかった。性格がまっすぐで、明るく快活で、知性とユーモアにあふれた彼女が、人間関係のおりあいがつかず、ビジネスを事務的に処理できないことで、頂上から転落していくプロセスはみていてつらい。ジャニーヌとは本来アウトサイダーであって、枠のなかの世界より、枠の外の世界にひきよせられるのだ▼修道院を出たジャニーヌが身を寄せたのはアニーの家だった。アニーは何度も修道院宛に手紙をだしていたが、上司がみな勝手に開封し、一通もジャニーヌの手には渡っていなかった。アニーはサッカーの試合でぶつかって倒れたときからジャニーヌを愛している。ラジオで流れた「ドミニク」の歌声を聞き、名前も姿も明かさない謎のシスターがジャニーヌだとわかった。アニーは町のレコード屋で一枚を求めた。戸口に現れたジャニーヌに「ずっと待っていたのよ。入って」と温かく迎え入れる。いま何をしているのかと尋ねるジャニーヌに「自閉症の子供たちにデッサンを教えているの。わたしの生きがいよ。あなたのつぎに」。銀行の融資をとりつけたジャニーヌは家を見つけてきた。ここにいるのが「いやなの?」ときくアニーに、みてごらんと間取りをみせる。「還俗した修道女のくせに贅沢よ」「還俗したシスターと相棒には広い家が必要よ」ジャニーヌがいっしょに暮らすつもりだとわかったアニーの顔は輝く。新居に入って閉じられていた窓のシャッターをふたりで開ける。明るい光が差し込む。このシーンはラストと呼応します▼しかし取材にきた新聞はたちまち「シスタースマイル、修道院を出て女と同棲」と書き立てアニーは職を失う。ジャニーヌの悪い癖で、相手が(とくに気を許している相手が)ちょっとでも負のことを口にすると自分を責めているように受けとめ、倍にして相手を責め返すところがあった。アニーにすれば生きがいのある仕事を失職したことはたいへんな打撃である。嘆いても無理はないのに、ジャニーヌはたちまちアタマにきて「あなたを愛せない、愛せないのよ」と叫んで飛び出してしまう。以後はほぼ流浪に近い。マネージャーが苦労して歌う場所をみつけてくるが、酒場でのギターの弾き語りは騒音にかきけされた。マネージャーとはケンカして別れる。物乞いに間違われ、いきついた教会で告白した「修道院は歌を利用してわたしを棄てた。なぜわたしはだれも愛せないの」神父は「修道院に入ったのも君、出たのも君だ。君の強い意志できっと愛せるものを見出すはずだ」。ジャニーヌが舞い戻ったのはアニーと暮らした家だった▼別れてから何年たっていたか。家はそのままでベランダに立ったジャニーヌは庭のベンチで本を読んでいるアニーを見る。近づいてくるジャニーヌにアニーはなにもいわず微笑む。よかったなー。この難儀な相棒を黙って受け入れてくれる女性がいて。心変わりもせずズーッと同じ家で待っていてくれたなんて。家賃払うだけでもたいへんだったと思うが。ジャニーヌの人生につかの間の平安が訪れた。アニーといっしょにバスに入る。豊かな緑が見えるベランダのテーブルに並んでふたりでタバコをふかす、アニーがジャニーヌの髪をかきあげる。ジャニーヌはアニーを見つめる。アニーをひざにのせ、ギターを持たせ、アニーの指をコードの位置におき弦を弾く。運命は過酷だった。レコードの売上の莫大な印税が修道院ではなくジャニーヌ個人に課税されたのだ。ガスも電気も止められた家で毛布にくるまり、ふたりは督促状を燃やす。ある日ベランダに出た。冗談のようになにかを嚥下している。二人は室内を整理し僅かな遺品の送り先を明記した。ジャニーヌはフランソワーズへ。アニーは「パパとママへ」手紙を残すと、寝室の、台所の、リビングの、初めてここへ来て、ふたりが開けたすべての窓のシャッターをふたりで閉めた▼死ぬことはなかった。弁護士を頼めば打開策はあること、裁判所だろうと税務署だろうと、首まで持っていくことはできないことをどっちもわかっていた。しかしふたりでたどりついた今が最高の幸せであり、その充足のまま生を終わらせたかったのだろう。ふたりで叶えるものはすべてかなえた、ほかにどんな望みもなかったのである。従姉のフランソワーズに書いた手紙はこうだ「悲しまないで。愛と平和のなかでアニーと旅立ちます。いつも約束を守れなかったけど、アフリカに行く夢をあなたは実現した。ひとつだけ。決してあきらめないで本能の声に従って。あなたはわたしの誇りよ。愛している。ジャニーヌ」

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