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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2014年3月9日

特集 LGBT-映画にみるゲイ52 デストラップ・死の罠(1982年 ゲイ映画)

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監督 シドニー・ルメット
出演 マイケル・ケイン/クリストファー・リーヴ

ダマシの技に堪能する

 シドニー・ルメット得意の室内劇。密室劇といってもいい。「十二人の怒れる男」「オリエント急行殺人事件」は典型的、「質屋」も精神の密室劇ですね。ピーター・シェーファーの舞台「エクウス」もありました。遺作となった「その土曜日、7時58分」も宝石店を舞台とした密室劇といえます。さて本作はこの自家薬籠中の環境設定におけるルメット58歳のときの傑作どんでん返しです。男の作家・ルメットには珍しく女に花をもたせているじゃないですか(笑)。もっとも「刑事エデン」とか「グロリア」というヒロイン映画もありましたけどね。本作ではマイケル・ケインというカメレオンのような名優もさることながら、クリストファ・リーヴがいいわ~。彼はこのとき30歳。彼をスーパーマン俳優だけみたいに思っている人は、本作や「日の名残り」「ある日どこかで」「光る眼」なんかみたらはまりますよ。繊細かつシャープなこと。193センチの高身長、ギリシャ彫刻のような肉体、知性あふれる端麗にして力強い容貌。本作ではマイケル・ケインにキスまでして、弟子にして愛人である野心に燃える青年を、胸騒ぎがするくらい好演しています▼劇作家シドニー・ブリュール(マイケル・ケイン)はここ数年スランプに悩まされている。今夜の新作もコケた。彼は自宅にもどり妻マイラ(ダイアン・キャノン)にうっぷんをぶちまけ「おれはもう終わりだ、自殺しかない」と嘆く。心臓に発作をかかえているマイラはそれだけで不安になる。彼らの自宅というのがセレブの別荘地イースト・ハンプトンの風雅な山荘だ。ログハウスなんてちゃちなものじゃない。木目から木立の匂いがしそうな広いリビングの壁には、シドニーがヒット作に使った殺人小道具がズラ~とかかっている。いろんな型の拳銃、剣、斧、ナイフ、手錠もある。格調高い展示コーナーである。落ち目のシドニーに追い打ちをかけるように、大学の教え子クリフォード(クリストファ・リーヴ)が、是非先生に読んでほしいと習作を送ってくる。一読したシドニーは非の打ち所のないできばえに打ちのめされる▼シドニーは彼を殺してその作品を自作として発表すれば復活まちがいないと妻にもちかける。もちろん妻は反対するがシドニーはガンとして譲らない。ふたりが押し問答しているとき、近所に住む女霊媒師ヘルガがやってきて、家中をかぎまわり「危険がある。男が近づいている。痛みを感じる」など予言して帰った。シドニーはクリフォードを呼び寄せ雑談を装い巧みに手錠をはめさせると、隙をみて絞殺する。おびえるマイラを叱咤してシドニーは死体を埋める。その夜、胸騒ぎがしたマイラはシドニーを起こし、階下に行くと泥まみれのクリフォードが侵入してきた。恐怖と驚愕でマイラはショック死。死を確かめたシドニーとクリフォードはうまくいったと抱き合いキスを交わす▼ここまでなら普通の監督の普通の映画ですね。さてここからが本作の真骨頂である。シドニーは妻の莫大な遺産を引き継ぐ。弁護士はいつも家にいるクリフォードをみて「彼はだれだね」「ぼくの秘書さ。女性だと世間がうるさいからね」とシドニー。なるほどとうなずきながら弁護士は「彼の前身はなんの職場かね」と訪ねる。シドニーは不審げに理由をきくと「さっきでかけるとき、机に鍵をかけてでたろう。そうか。そういう職場だったらたぶん彼の習慣だろうね。公務員はどこにいくにもデスクに鍵をかけるからね。でもシドニー。君は一度ひどい目にあっている。アイデアを盗まれないようにしろよ」と忠告して帰る。シドニーはたちまち疑心暗鬼。クリフォードは共犯者だ。愛人とはいえ彼がシドニーの生殺与奪を握っている。いてもたってもおれなくなったシドニーは、机をこじあけクリフォードの書きかけの原稿をみた。なんと、彼は「マイラ殺し」を劇化しているではないか。冗談ではない。シドニーは血相かえて「破棄しろ」とクリフォードに迫るが、彼はニヤリ。美しい顔に見たこともない笑みを浮かべ「君にそんなことを言う権利はないよ、シドニー」冷たくさとす。シドニーの心臓は凍りつく▼クライマックスに至るまで、まだまだ紆余曲折を経る重層構造に敬意を表して、ネタバレはやめます。ご存知の方は多いだろうけど、それはそれ、自分から言うのとは別ですからね。彼らの欲望はお金ではないのです、それより嘘と策略の重なり、裏切りと欺瞞、妙な言い方になるかもしれませんが、飽くことなくくりだされる「騙しの技」という非日常世界の構築を、作者も監督も俳優もスキルを没頭させて楽しんでいる、そんなエンタメがあふれ、殺しだ、裏切りだという内容がひとつも陰惨でないばかりか、みおわったあと平明なパースペクティヴをかもす。けっこう残酷な内容をスカッとした後味にしたところが最高。

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