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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2014年3月10日

特集 LGBT-映画にみるゲイ53 Vフォー・ヴェンデッタ(2005年 ゲイ映画)

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監督 ジェームズ・マクティーグ
出演 ナタリー・ポートマン/ヒューゴ・ウィーヴィング

神さまは雨のなかに 

 コミックの原作をウォシャウスキー兄弟が脚本にしました。やっぱりうまいですね。最後まで有無を言わせない。直接「ゲイ」とは関係ないのですが、劇中劇というか、ヒロイン・イヴィー(ナタリー・ポートマン)が獄中で読む手紙に、女性ふたりが登場し彼女らの生き方、心のあり方が、イヴィーの人生を変えます▼時代は近未来。第三次世界大戦によってアメリカ合衆国は崩壊し、独裁者アダム・サトラーによって全体主義国家と化したイギリスが舞台です。国営放送に勤務するイヴィーは外出禁止令を破って男に会いに行き、秘密警察の男たちに強姦されそうになる。そこへ仮面をつけた謎の男が現れイヴィーを救う。男は「V」と名乗る。彼は政府が生物兵器開発のため多数の国民を人体実験の犠牲にした国家プロジェクトによって生まれた怪物だった。彼を実験の道具にした製薬会社や政府官僚は独裁政権のもとで権力を乱用し膨大な利益を得ていた。Vは彼らをひとりずつ復讐の血祭りにあげていく。「ヴェンデッタ」とは「血の復讐」のこと▼イヴィーは最初事なかれ主義の受け身のキャラクターとして描かれます。両親は政府に反逆したテロとして処刑され、弟も政府の実験によるウィルスの汚染で死ぬ。イヴィーは生き延びるためには目立たず何も主張せず、流れにさからわない習性を身につけた。ところがVに関わりを持ち、国家が秘密裏に行っていた非人道的な計画に気づく。警察はVを追いながらイヴィーが関係することをつきとめ、彼女を逮捕した。収監された獄舎でイヴィーは頭を丸坊主にされ、水責めや吊り下げの拷問にあう。体力も気力も衰えて横たわるエヴィーは、ふとネズミの出入りする穴の奥になにかはさまっているのに気づく。取り出すと、トイレットペーパーに小さな字がびっしり書き込まれていた。こうある▼「わたしの名はヴァレリー。記憶をたどると窓の外を雨が降っていて、祖母が神さまは雨のなかにいらっしゃると言ったことを思い出す。女子中学に進学しサラを好きになった。手首のきれいな子だった。わたしにとってサラはたった一人の恋人だったがサラはそうじゃなかった。2002年、クリスティーナと恋に落ちた。父はこの家に帰るなといい、母は泣いた。真実を語ってはいけなかったのか。2015年。女優になって主役をもらったときルースに出会った。初めてキスしたときもうだれともキスしないと思った。一緒に住むことにした。バラのスカーレット・カーソンを育て香りが部屋に満ちていた。いちばん幸せなときだった。アメリカの戦争が激化しロンドンに及んだ。表現や解放という言葉を使うことが危険になり、代わって国家への忠誠が力を増していった。人と違うこと(同性愛)は危険になった。ルースが逮捕された。つぎはわたしだった。こんなひどい収容所で死ぬなんて。でもわたしには幸せだったバラの3年間がある。私はここで死ぬが体が消えても残るものがひとつだけある。それは〈真実〉。愛しあった真実は小さく壊れやすいけれど唯一価値あるもの。あなたがだれであれここから逃げてほしい。いちばんの願いは理解してもらうこと。顔をみることもない、いっしょに笑ったり泣いたり、キスもできないあなたを心から愛している。ヴァレリー」▼歴史的に見て体制の最初の犠牲者になるのはいつも少数派だった。ここでは同性愛者だったことをヴァレリーというキャラクターが示しています。政府が国家統制というやりかたで彼らを社会から弾き出した、でもイヴィーはヴァレリーの手紙を読んで、差別も統制も拷問も愛しあった価値を壊すことができなかったことを知る。彼女らが生きた運命を理解する。ヴァレリーの手紙を介してイヴィーの心がいっきょに、今まで横を向いて投げやりでさえあった人生から別の時空に解放されます。イヴィーは受け身の傍観者から理念を明らかにした行動する女に変貌しました。獄舎から出たとき雨が降っていた。イヴィーは「神さまは雨の中にいらっしゃる」と空に向かい、両手を広げて雨にうたれるのです。ここがヒロイン新生のシーンです▼ドラマの構築といい、観客にしかけた罠といい、堪能できるものがあります。ウォシャウスキー兄弟はコミックの内容をかなり変えたようです。いちばんの役得はナタリー・ポートマンですが、終始仮面をかぶったままの出演だったのがヒューゴ・ウィーヴィング。ウォシャウスキー兄弟の映画ではおなじみですね。そう「マトリックス」三部作のエージェント、スミスです。目立ちませんが188センチの長身で、黒いマントと仮面をつけたままでやる難しいアクションをスタイリッシュにこなしました。ナタリー・ポートマンが小柄なので(公称165センチ、一説では161センチ)首を伸ばしてもなかなか届かなかったキスシーンはご愛嬌でした。

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