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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2014年3月16日

特集 LGBT-映画にみるゲイ59ロシアン・ドールズ(2005年 ゲイ映画)

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監督 セドリック・クラビッシュ
出演 ロマン・デュリス/オドレイ・トトゥ/セシル・ド・フランス

セシル・ド・フランス

「スパニッシュ・アパートメント」から5年、バルセロナからパリに戻って金融会社に就職したものの、自分らしく生きるのだ、作家になるのだ、と啖呵をきって会社をやめたグザヴィエ(ロマン・デュリス)も30歳。作家でもなければ詩人でもなく、雑文を書いて食いつないでいる。ガールフレンドだったマルティーヌ(オドレイ・トトゥ)は結婚して子供がいる。ゲイのイザベル(セシル・ド・フランス)は株式仲介人として順調満帆、女同士の暮らしも仲良くうまく行っている様子。バルセロナのアパートで同室だった、イギリス人のウェンディの弟がロシア人のナターシャと結婚し、サンクトペテルブルグに住むことに。その結婚式にアパートの同居人だった7人が招待された▼二作目は一作目に輪をかけて退屈だ。グザヴィエはまるで歩く生殖器で、元カノのマルティーヌ、ブティックの女店員、モデル、だれかれなしと寝ているが一人としてまともな関係が結べない。もっとも30歳になって定職もない男と本気でつきあう女がいるとは思えないが、映画はそういう普通の社会人としての感覚をすっぱり切り落とし、グザヴィエのだらしなさを〈愛の彷徨〉ともいいたげな甘さで加点していく。この軸足の軟弱さにまたしても吐きそうになる。ホントこの映画、体によくないわ▼グザヴィエの女性蔑視も相変わらずだ。ちょっと聞いてみたいが、本作をほめちぎる人は、こんな男が本当によく描けた、青春映画の清々しい主人公だと認知しているのだろうか。だいいち30歳になって青春の迷いもヘチマもないだろ。アホもやり、バカもしつくした青春の取り入れの時期ではないですか。劇中、グザヴィエの「女はコンマ以下同然」発言に頭にきたイザベルの友達が右ストレートを食らわせる。グザヴィエとイザベルはスペイン時代からずっと親友関係が続いている。結婚を急かす親戚をなだめるため、イザベルを自分のガールフレンドに仕立てて連れて行き急場をしのぐが「本当の恋人は自分で探しな」とイザベルに言われてしまう。ウェンディとグザヴィエが別れたりくっついたりする優柔不断な関係にもうんざりする。とどのつまり、グザヴィエは必死になって小説を書くわけでもなく、女と本気でつきあうわけでもなく、何をして食べ、生きていこうとしているのか少しもみえてこない▼この救いのない凡庸な映画で存在感を発揮するのが相変わらずゲイのイザベルである。空中を浮遊するほこりみたいな頼りないキャラのグザヴィエよりよほどとんがっているのだ。だれが主人公かわからない、人間観のピントの甘さと浅い彫り込みが、映画をつまらなくさせている最大の理由だと思える。主人公は男でも女でもいいが、なんの魅力も感じることのできない彼や彼女の在り方が映画に出てくる価値があるのか。これをもってありふれた日常の詩情をいいたいというのなら、通りの並木でも撮っているほうがよほどましではないのか▼セシル・ド・フランスはベルギー生まれの38歳。17歳でパリに出て演技の勉強を始めた。「スパニッシュ・アパートメント」のときは27歳。役柄を広げ「ハイテンション」では女子大生を演じ、女友だちを殺人鬼から助けるために戦うホラー映画で主演した。クリント・イーストウッド監督、共演にマット・デイモン、臨死体験したフランスのジャーナリストを演じた「ヒア・アフター」もある。クセのない美貌で、ファッション誌の表紙になり、いまフランスでもっとも期待度の高い女優だ。息子にリノと名前をつけたのはリノ・ヴァンチュラのリノから。彼女の出世作はいうまでもなくセザール賞新人賞の「スパニッシュ・アパートメント」だがこれも新境地だった。実在の歌手「シスタースマイル ドミニクの歌」でフランスはヒロイン、ジャニーヌ・デッケルスを演じた。日本でも「ドミニク、ニク、ニク」でヒットした「ドミニク」の曲を作り歌った修道女である。ヒロインは1985年ゲイの相手と睡眠薬自殺する。「スパニッシュ」といい「ロシアン・ドールズ」といい「シスタースマイル」といい、彼女のヒット作にはゲイが多い。別に理由はないとしながらも「世の中からはみ出した人間に共感する」とインタビューで答えている。

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