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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2014年3月21日

特集 LGBT-映画にみるゲイ64
2番目に幸せなこと(1999年 ゲイ映画)

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監督 ジョン・シュレシンジャー
出演 マドンナ/ルパート・エヴェレット

マドンナと組んだ遺作

これジョン・シュレシンジャーが73歳のときですね。なんだろな、この映画をみてガックリきた原因は。たぶん監督がシュレシンジャーだから、こっちの思い込みが強すぎただけかも。そんなことよりやっぱりマドンナはステージでワンマンやる歌手で、映画じゃ彼女の栄光のオーラは充分発揮できないってことかもね。マドンナの男っぽいあの顔があんまり魅力的にみえなかったのですよね、本作のヨガのインストラクターくらいじゃ。シュレシンジャーはいっそハンニバルでもやらせたらよかったのだ。マドンナが男のあいだでうろうろするような女かよ。わかったぞ。一言でいうとミスキャストだったのね。だからというか、マドンナに覆面させて見たらシュレシンジャーのいつもの手法がじわじわ浮き上がってくる。ゲイというマイノリティが主人公。社会的な立場をとりつくろう偽装結婚。でもホントの親子じゃなかったとわかっても、最後に残るのは「遺伝子だけがすべてじゃない」ときっぱり言い切った愛情力。さすがに「真夜中のカーボーイ」当時のような毒はふりまいていませんが、それなりに喉にささる小骨みたいなもの、ちゃんと残してくれてスルッと「めでたし」に終わらせない問題意識はいくつになってもシュレシンジャーです▼ロスに住むヨガのインストラクターのアビー(マドンナ)は、恋人ケヴィンと暮らしていたがケヴィンはアビーと別れる固い決心をしてしまった。理由? マドンナだから、じゃなくて「ぼくはもっと単純な女性がいい」だって。要は完璧主義でない息抜きできる女性がよくなったってことなの。アビーはショックで昼間から酒のんでクダまき、親友の男友達ロバート(ルパート・エヴェレット)に失恋の痛手を訴える。彼はゲイだ。ふたりはガブガブ飲んで慰めあっているうちにソノ気になってできてしまう。一晩の、それもアビーにいわせたら「30分の」ことで彼女は妊娠した。彼らのとりきめたことは、婚姻届はださないが出産し三人で仲良く暮らすという風変わりなもの(アメリカとはつくづくなんでもアリにしちゃうのだな)。アビーとロバートは法律上の夫婦ではないが、お互いに長いつきあいの親友同士である。ロバートは目の中にいれても痛くないほど息子サムが可愛い。ロバートはゲイであるからむりやり結婚しても子供を産み、フツーの家庭を築くことはできないとアビーもロバートも考えた上でのことだ。それならば「2番目に幸せなこと」を選択しよう、つまり親友同士としてこれからも仲良くつきあい、どっちもの性向に従って生活しよう、共同生活をしながらロバートは男性と、アビーは異性との恋愛オーケーというわけだ▼サムが16歳になる。アビーもロバートもひとつも老けないがマアそれでもいい、リアリズムは本作で通用する必要がないらしいのだ。サムもいくらなんでも両親の、よその家とはちょっとちがう夫婦の雰囲気に気づく年頃となったが、なにしろ父親の愛情がたっぷり注がれているからなんの欠落感もない。でも16年たってもいやになるほど美しく活力あふれるアビーにとうとう恋人ができた。ヨガの教室に通うベンはやり手のバンカー。リッチであるが成金で教養がないただの金持ちとはちがう。アメリカ経済、いいや、おおげさにいうなら世界の経済にも影響を与える最先端の金融マンである。彼はアビーとロバートの関係にさえ理解を示し、なによりアビーがぐっと来たのは息子サムがぐんぐんベンになついていったのだ。どうするロバート、しっかりしろ▼そこへまだまだやってくれます監督のひとひねり。青酸カリの猛毒ではないかわり、じわじわ効く砒素みたいな毒のまぜ方ですな。アビーは言った「ロバート、サムはあなたの子じゃないの」エーッ。今ごろなにを言い出すのだよーッ。よくよく聞けばちょっと前の検査でサムの血液型がわかった、B型だった。自分もロバートもO型であるからB型は生まれるはずがない、つまり別れたケヴィンの子だったのだ。養育権にケヴィンまで参戦し、もつれにもつれた関係を裁判はどう判定するのか。アビーは子連れでニューヨークのベンの家に移ってしまった。ロバートはどう出る。ゲイは現実の話として圧倒的に不利だという弁護士にロバートは言い返す「遺伝子だけがすべてじゃない、親子の愛ってそれだけじゃないはずだ」いいぞ、頑張れロバート。なんだか調子よく幸福まっしぐらという母親より、ゲイという損な立場にもかかわらず、愛情を貫こうとするロバートがすごくかっこいいのですよね。考えに考えぬいたロバートはケヴィンを巻き込み、実の父親にしかできない、法律上の手続きを動かそうとします。ラストは賛否が分かれるでしょうが、ここまでねばり腰で映画を煮詰めてきたのはやっぱりシュレンジャーだと思います。これが遺作でした。

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