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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2014年3月30日

特集 LGBT-映画にみるゲイ73
エマニエル夫人(1974年 ゲイ映画)

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監督 ジュスト・ジャカン
出演 シルヴィア・クリステル/マリカ・グリーン

シルヴィア・クリステル

おお、とうとうこの映画になりました。なつかしいエマニエル夫人、というよりシルヴィア・クリステルですね。出演のとき彼女は22歳でした。まだあどけなさが残っていましてね。小さな頭に軽くカールした褐色の髪、ツンと上向いたとんがった鼻の先、驚いた子供のように見開いた目。朝日がさす明るい台所に、エマニエルが薄い透けるガウンを羽織って降りてくる。カーテンから秋の日差しがさしこみ、エマニエルは幸福を絵に描いたような新妻だ。その彼女が外交官の夫の赴任地バンコクへ旅立つ。40年前のこの映画、今からみればなにがいいたかったのでしょう。性の解放を説くインチキ教祖みたいなおじさんが、エマニエルの性教育を受け持つのですが、彼がエマニエルに伝えようとするのは「性行為を人間的なものにする思想です。偽善を廃し本質をみつめることです」。それに対しエマニエルは「あまり魅力ないわ」と関心なさ気だがおじさんはひきさがらない。「何事もセックスを通じてですよ。それによって日常と断絶するのです。問題はいかにセックスするかです」「体位のこと?」と無邪気にエマニエル。「ばかな」とおじさんは一喝する(エマニエルの反応のほうが普通だと思うが)▼バンコクで金も地位もヒマもあるヨーロッパ人グループのやることといえばだれといつなにをするか、どう組み合わせを変えるか、そんなことのためにパーティばかり開いている。エマニエルはだんだん退屈になってくる。夫は「ぼくは妻を縛らない」という主義らしい。40年前はなにやら新興宗教の教祖みたいだったおじさんの性の哲学とは、とどのつまり、複数のだれかれと関係をもつこと、それも時や場所に拘束されず。たとえば阿片窟でエマニエルは輪姦され、キックボクシングの勝者に我が身を投げ出し、さまざまな場所で何十人の男とセックスし(しかも一晩に)強姦暴行としかいいようのない体験のすえ、自由な性の解放を得る。メイクはくっきりと濃く、視線は力に満ち、そこであの有名な、身につけているのは白いレースのようなソックスにブーツ、あとは全裸にブラジャーを気だるげに外し、籐椅子に座り高々と脚を組み上目遣いで直視する、例のポスターになって一世風靡したポーズをとるのである。どこが性の哲学だよ。とどのつまり男に都合のいい強姦のいいくるめ方ではないか。歳月と時代の波に洗われていちばんさきに馬脚を現したのがおじさんの屁理屈で、今なお光を放っているのがエマニエルの、というよりシルヴィアの肉体だ。美しいものは美しいのだ。ゴタク並べていないで消えろ、オッサン▼劇中エマニエルは終始受け身で、最初はおどおどと白人クラブ(のようなもの)の催事に出席しバンコクでの生活に慣れていく。でもね、白人の男たちの夜のバーでバンコク女性への接し方なんか全然気分よくないな。エマニエルはビアンな年上の女性や夫の友人らと関係をもつが、充実感がえられない。ある日のパーティで「あれはだれ? 紹介して」珍しくエマニエルから積極的にアプローチしたのはビー(マニカ・グリーン)という金髪の考古学者だ。彼女は「折角だけど、発掘調査に出発するから時間ないの」とエマニエルの誘いを振る。エマニエルがしつこく居場所をきくので教えるが、そこを訪ねても荷物を舟に積み込む最中で、もう出発だという。エマニエルはブレスレットを外してプレゼントするが「要らない。第一つぎに会う日なんかわからない」にべもなく返しジープに乗り換え走りだす。大声でジープを止めたエマニエルは助手席に乗り込み、ジープと馬で二日もかかる奥地にいっしょにいく▼おじさんの複雑な説教よりビーとのわずかな日々の交情で息がつまりそうだったエマニエルは息を吹き返します。ざっくりした発掘の作業着を着て日除けのキャップをかぶり、発掘現場の人夫や子供たちと仲良くするエマニエルが、ビーも可愛くなる。エマニエルが自ら望んで追いかけてきた、という設定ですので、ここでのベッドシーンにいちばん力が入っていたように思います。びっくりしたのはエマニエルの夫で、まさか妻が行き先も告げず行方をくらますとは思ってもいず、戻ってからは、もう相手が男でも女でも、たいていのことには夢中でいれあげたりしないよう、性の哲学者にたのんで再教育してもらうことにした。そこで前述の集団暴行みたいな「特訓」になるわけです。筋が通っているような、いないような、よくわからん感想を当時持ちましたが今みてもいっしょでした。これは理解しなくてもいい映画で、ただただクリステルのキャラを追えばいいのだと再確認しました。ビーのマリカ・グリーンですが、16歳のときロベール・ブレッソンの「すり」に出演した美少女です。彼女の姪がエヴァ・グリーン。ダニエル・クレイグのボンド「カジノ・ロワイヤル」でフランス女優としては5人目のボンド・ガールを演じました。切れ長のクキっとした目力が叔母譲りです。クリステルは2012年10月17日60歳で鬼籍に入りました。エマニエル一作で映画史に残る稀有な女優です。

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