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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2014年3月31日

特集 LGBT-映画にみるゲイ74
クローサー(2002年 ゲイ映画)

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監督 ユン・ケイ
出演 スー・チー/カレン・モク/ヴィッキー・チャオ

別れのキス

筋金入りのアクション映画です。いったいこの映画のどこが「ゲイ」やねん、と思うかもしれないけど、姉妹や彼女らを追う女刑事の相関関係はゲイのメッセージが色濃いですよ。殺し屋の妹と凄腕の女刑事が「兵と賊」(捕らえる者と捕らえられる者)の関係でありながら「あなたがわたしに惹かれるのは、あなたにないものをわたしが持っているから」と妹は言い、最後の死闘を制したあと刑事に近づき別れのキスをする。唇がふれるだけのフレンチキスですけどね。レスビアニズムといえば濃厚なベッドシーンを想像するのは古いです。同性愛という言葉さえそのうち古くなる。性愛を含めて、愛情とは親しさや優しさの伝え方が大きな部分を占めます。それは画一的なものでなく、個々の表現に任されていいことですからね。キスのあと刑事は(所詮わたしたちは兵と賊だった)と見送る。名残惜しげな感情はひとつもみせませんが(所詮わたしたちは)に未練がにじんでいます。それと姉が恋人のプロポーズを受けて殺し屋はやめると妹に告白すると妹は(な、なんですって、お姉ちゃん)びっくりするが同時に面白くない。彼女らには両親が暗殺されたあと姉妹だけで生きてきた背景があり、妹にとって姉は母代わりだった。表向きは祝福するが内心は自分に対する裏切りだと感じる。そこで(もうお姉ちゃんなんか知らない)と独力で殺しの仕事を受け、窮地に陥ることになります▼ユン・ケイ監督はジェイソン・ステーサムの「トランスポーター」やジョン・ウー監督の「レッドクリフ」のアクション監督ですね。本作はまばゆいばかりの香港・台湾・中国の三大女星(女優)競演、それが可愛らしいなどというキャットファイトのレベルじゃない、スー・チーとカレン・モクの手錠をはめたままのアクションなんか瞠目すべき切れ味です。和製ドラゴンこと倉田保昭が57歳とは信じられぬ身のこなしで真剣をあやつり、女星ふたりを血祭りにあげようとする迫力。このシーンは監督の力こぶが入っていまして延々これでもか。倒す方も倒される方もありとあらゆる技をくりだし(いったいだれがいつやられるのだろう)と息を呑みます。主演のひとりスー・チーが前半で殺され退場します。日本の主演女優の扱いでは考えられないバッサリしたやりかたが新鮮ですね。壮絶な銃撃戦でスー・チーは妹救出をナビするため、パソコンの前を離れず殺し屋集団を迎撃するのですがその襲撃がハンパじゃない。軍団で襲うのですがスー・チーは果敢に応戦する。妹がピンチに陥ったのは自業自得のようなもので、とどのつまり「お姉ちゃん、助けて」になったのですが、姉は被弾しながら力をふりしぼって妹に脱出の出口を示し、あとは「突破して」と言い残し倒れます。ことほどさように、強弓をキリキリひきしぼるような緊迫がスクリーンに漲っている。いつ矢が弓から放たれるかがひとつ、放たれた矢がズバーンと的を射抜くカタルシスがひとつ、舞のようなアクションの美しさがひとつ。一言のセリフがなくてもそれだけで最後まで引きずられちゃうでしょうね▼コンピューターをハッカーし、難攻不落のセキュリティを破って単身敵地に侵入、殺しの目的をとげる美人殺し屋リン(スー・チー)は別名「電脳天使」。妹のクワン(ヴィッキー・チャオ)とともにハイテク企業の社長殺害を成功させたものの、依頼主の裏切りで窮地に立たされる。ふたりを追う女刑事コン(カレン・モク)がこれまた武術と射撃の達人。全編にどことなジョン・ウーのムードがただよいます。スローでみせる高度なアクション。血なまぐさい殺伐としたシーンに流れるムーディーなサウンド。本編ではカーペンターズの「CLOSE TO YOU」が何度か使われます。彼女らがトラック・スーツを愛用しているのもご愛嬌だ。もちろんブルース・リーへのオマージュでしょう。復讐を誓った妹が姉の白い服を着てハイテクの牙城に潜入します。姉に成り代わるというか、姉の魂を身につけるというか、装束に意味があるのはやはりアジア人の感性です。潜入をナビするのは女刑事。姉ほど技術に長けていないので妹はイライラ「ドジ!」と叫び、女刑事は「なんですって。そっちへ行って話をつけてやるわ」とばかりコンピューターの前から銃撃戦の現場に。なんでこの映画の拳銃はどれも弾切れにならないのだろうと、素人でも思うくらい撃ちまくってくれます。学芸会みたいなロマンティックなシーンもありますが、たかがアクション映画というなかれ。見てソンのない映画の一本です。

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