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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2014年4月1日

特集 LGBT-映画にみるゲイ7
ボディヒート(1992年 ゲイ映画)

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監督 カット・シア
出演 ドリュー・バリモア/サラ・ギルバート

悪のヒロインは17歳

 ラストにヒロイン、シルビー(サラ・ギルバート)の独白が出ます。「忘れられない。まだアイビーを愛している。わたし以上に孤独だったノラ猫。恋しい」。アイビー(ドリュー・バリモア)とはどこの誰とも、名も知れない17歳の少女。学校の居残り授業で彼女といっしょになったシルビーは、ミステリアスな美少女に惹かれ、迎えに来た父親ダリルに頼んで車にのせ家に連れていく。母ジョージーはアイビーの不良っぽいスタイルと雰囲気に嫌悪を示したが、アイビーが話す身の上にすっかり同情し、家に置いていいとまで言う。ダリルはもともとアイビーに興味しんしん。足首にアイビー(蔦)のタトゥをいれているからアイビーと呼んだだけで、シルビーは彼女の本名も知らない。ずいぶん無茶な話だが、この映画はそういうこまかいことをごちゃごちゃ言ってはいけないらしいのだ▼カット・シア監督は「B級映画の帝王」ロジャー・コーマンの女弟子である。低予算で若い無名の俳優を使いまくり、短期決戦の映画をつくり続け「100本の映画を作り1セントも損をしなかった」(ロジャー・コーマン自伝)というプロデューサーであり監督だ。彼の目的はたったひとつ映画界で「生き残ること」である。大作をてがけて会社に損をさせ二度とお呼びがかからなくなって姿を消す才人監督たちを尻目に、彼は会社に損をさせず役者にギャラを払い、かつ次作につながる人気と話題性のある映画を作り続けた。生き馬の目を抜く映画業界でサバイバルする方法を知り抜いたコーマン人脈は強い。監督ではジェームズ・キャメロン(「ターミネーター」)、フランシス・フォード・コッポラ(「ゴッドファーザー」)、ジョナサン・デミ(「羊たちの沈黙」)、俳優ではロバート・デ・ニーロ、ジャック・ニコルソン、枚挙に暇ない。監督では「告発の行方」のジョナサン・カプランがおり「モンスター・パニック」の女性監督バーバラ・ピーターズがおり、このカット・シアがいる。シアの超能力魔少女映画「キャシー2」はすでにカルト的評価を得ている。そもそも曰く因縁をほじくるリアリズムを排除したところに、エロティシズムとかロマンティシズム同様にオカルトシズムは胚胎するのである。名前も知らぬ美少女を家にひきとるくらい、なんの理由がいろうか▼冒頭のドリュー・バリモアがいい。彼女はいうも蛇足なバリモア家の嫡流。家系をたどれば映画創世期からの一族である。父母はもちろん、祖父祖母、叔父叔母、大叔父大叔母とはてしない芋づるのように映画人が輩出する。もう「E.T」の子役のことは書かなくてもいいだろうが、あまりに早く有名になった反動でグレてしまい、若くして波瀾万丈。本作出演の17歳のときはほとんどのバッド・ガールの経験は卒業していたと思える。ファーストシーン、ドリューが森の木々を背景に、ブランコに乗って空中を遊泳する、このシーンの詩情に引き込まれない観客はおそらくいないだろう。オカルトだろうとホラーだろうと、つまるところ映画とは映像で勝負するメディアであって、美しく洗練された感性とはそれだけで充分なのだ▼サラはアイビーを家にいれたばかりに母親は殺され、父親はアイビーと不倫に走り、サラはアイビーに下女のごとくこきつかわれながら嬉々として買い物の勘定を払う。どんなにひどい目にあってもバカにされても、アイビーの甘い言葉ひとつですべてを許す。サラは自分でも抗しきれない。アイビーはああしろ、こうしろなどと言わない。命令も指示もせず強い言葉、大声ひとつ使わず人をあやつるのだ。原題は「ポイズン・アイビー」である。ピンとこられた方、おられませんか。そう「バッドマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲」のユマ・サーマンが扮するイカれた生物学者がポイズン・アイビーだ。どういう因縁が知らないが、まさかアクション映画の悪のヒロインで再登場するとは思わなかった▼サラはアイビーにさんざん煮え湯を飲まされ、父との不倫の現場も目撃し、ついには母親を殺し、つぎは自分だとわかりとうとうアイビーを窓から突き落とす。しのつく雨に打たれ路上に横たわるアイビーは、悪魔的でありながら今は可憐な少女にしかみえない。愛情にはやさしいとかいとしいとかだけでひとくくりにできない深い闇があり、悪も頽廃も裏切りも憎しみもそのなかに宿している魂のことだ。自分を裏切り続けたアイビーをサラは憎めない。アイビーが恋しい。生きていればいつか殺すことになったにちがいない女だったが、まちがいなく自分は今もアイビーを愛している。やりきれなくてどうしようもない、愛情の正体のようなものがよくわかるラストでした▼それとレオナルド・ディカプリオが出演しているのです。レオ様18歳。でも、キャストとしてクレジットするのは詐欺に近いですよ。どこに出ているかどうしてもわからなかった。ようやくさがしあてたシーンはわずか5秒。教室からどやどやと男女生徒がでてくるグループにレオ様がまじったワンシーン。これで出演といえるのかよ。いうまい、いうまい。ディカプリオの無名時代というだけで売れるほど、彼が大物になったってことだと思おう。

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