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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2014年4月9日

特集 LGBT-映画にみるゲイ83
完全犯罪クラブ(2002年 ゲイ映画)

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監督 バーベット・シュローダー
出演 サンドラ・ブロック/ベン・チャップリン/ライアン・ゴズリング/マイケル・ピット

「裏切るゲイ」が不在

 親がかりの身でなに不自由なく学校にいかせてもらいながら、周りの人間をすべてバカにする、生煮えの超人思想を振り回されてかなわん。アタマにくるクソガキどもをなんとかしろ、といいたくなるこの映画。完全犯罪クラブとはDVDによれば、高校生の「次世代型犯罪の幕開け」が謳い文句なのだけど、次世代もヘチマもあるかい、どんな世代だってこんなアホ連中とだれが組むかよ。それをサンドラ・ブロック扮する刑事キャシーと相棒サム(ベン・チャップリン)は謹厳に捜査に取り組み、上層部の無理解や妨害にもかかわらず真相を究明し犯人を逮捕する、というより犯人が自分で墓穴を掘ったようなものだけど。本作はシカゴ大学の学生ふたりによる誘拐殺人「レオポルドとローブ事件」に基づきます。どちらも裕福なユダヤ人家庭の息子でゲイの関係でした。1924年5月21日、ローブの隣人の遠縁にあたる16歳の少年ボビーを、ふたりはレンタカーに誘い込み、殴打して窒息死させ郊外の排水口に死体を遺棄、身元を不明にするため顔と性器を酸で焼いた。身代金1万ドルを請求したのは、事件をもっともらしくするためで金が目当てではなかった。本作ではゲイであったことはほのめかす程度で、もっぱら前面に出るのはサンドラ・ブロックの追跡調査です▼映画で「レオポルドとローブ」に扮するのはリチャード(ライアン・ゴズリング)とジェスティン(マイケル・ピット)です。ふたりとも高校生という設定。リチャードは金にも容姿にも恵まれたクラスの人気者、ジェスティンは天才肌だが物理オタクのキモい少年。彼らは毎晩のように断崖にある廃屋に来て、犯罪やプリファイリングの本を読みあさり、架空の完全犯罪計画を練っていた。彼らはニーチェの超人思想の信奉者である。ジェスティンはクラスの発表会でこんなことを言う「人は心に弱い面を持ち、自ら進んで自由を捨て支配を 受け入れる。しかし力への要求もある。それは自由を望み、我々自身が個々の判断により善悪を決めることである」彼の隣の席の女生徒リサは、意見発表して席に戻ってきたジェスティンに「あなた、だれかと寝たらどう?」女を知らんからそんなアタマの硬いことを言っているのだというわけね▼ジェスティンとリチャードは廃屋で完全犯罪決行の誓いをたてる。彼らは逮捕される恐れなどいっさいなく、完全犯罪を遂行する能力があると信じていました。彼らは犠牲者を求めて街を車で流し、スーパーで買い物帰りの若い女性に狙いをつける。死体は川のそばの雑木林で発見された。急行したキャシーとサムは、現場にあったブーツの跡からリチャードが怪しいと睨むが、彼にはアリバイがあり、リチャードがすでに盗難届けをだしていた。キャシーは直感的にリチャードが犯人だと信じる。キャシーは上司の反対を押し切って捜査を進め、嘔吐物を手がかりに、リチャードとジェスティンの共犯関係を突き止めます▼映画ではもっぱらキャシーの過去にフラッシュバックし、失敗 だった結婚の傷をなぞっていきますが、こんなこと本件の解決に全然といっていいほど関係ない。高校生のたてた計画通りにやれば完全犯罪が成立するなどという、化けの皮のすぐはがれる幼稚な話を映画にしたことにも首をひねります。彼らの関係がゲイでいっしょに犯罪を犯すほどの、いわば信頼関係が、ジェスティンのガールフレンドの出現でリチャードが疑心暗鬼になり、ジェスティンもまた猜疑心の固まりになったリチャードへ不信を募らせていく、それこそこんな「心に弱い面をもって」いるにもかかわらず、支配と権力にわれを忘れていく人間のほうが、少なくとも「映画のネタ」としては面白くなったのではないかと思えるのです。ラストで「失敗したときはいっしょに死ぬ」と彼らは約束しており、約束通り拳銃を自分のこめかみにおしあて引き金をひきます。カチッ、カチッとレボルバーの弾倉が回転する、ロシアンルーレット式の自殺ですね。ところがジェスティンの弾倉には弾丸が込められ、リチャードのそれはカラだった。このやろう、ハナからぼくだけ死なせるつもりだったのだと、ジェスティンが「愛情の成れの果て」に直面するシーンなど、ほりさげようによっては残酷な人生の真実がもっとよく露呈したのに。これまでほとんどのゲイ映画は「愛しあいながら無理解な差別社会によって傷つくアウトサイダー」としてのゲイでした。しかし少なくともドラマのジャンルではその関係が熟成してきたいま、あらたに「裏切るゲイ」が扱われ始めている。切り口によっては本作など、もっと新しさの出せた映画だったと思います。

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