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シネマ365日

2014年4月14日

特集「無口が似合う女」 エマニュエル・ベアール 変態島 (2008年 ホラー映画)

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監督 ファブリス・ドゥ・ヴェルツ
出演 エマニュエル・ベアール/ルーファス・シーエル

たのむ、助けてくれ

 エマニュエル・ベアールは無口が似合うと言いましたよ、ああ確かに。この映画でも彼女はあんまりしゃべらない。表情を顕にしない、例のミステリアスなまでになにかを見つめる、そんなシーンが随所に出てきます。でもね、しゃべるとかしゃべらないとか以前に、映画の品質ってものがあるでしょ。一体なんなのだろう、言語を絶するこの映画は。ファブリス・ドゥ・ヴェルツ監督って「変態村」という作品があって、人を狂わすのが好きみたいな監督らしいのだけど。「変態島」というから島が話の中心舞台だとだれでも思うじゃないの。ところがね。映画が始まって主人公たちが行けどもいけども、島にたどりつかないのよ。やっと上陸したと思ったら、ガイドの料金つりあげ交渉だとか、薄気味悪い地元の鎮魂祭とか、ばからしいからもう帰ると夫が言い出す、妻は内緒でガイドに有り金全部払って島の探索を続けてくれと真逆のことを言うとか、どう収拾するのか見当のつかない進展が延々続く。DVDの謳い文句は「5分に1回変態の連続」だった。変態らしきシーンが現れたのは映画終了直前の10分くらいだ。これって詐欺じゃないのかよ。エッ▼気色の悪いことおびただしいのよね。島には顔を白塗りにした真っ裸に近い子供たちがぞろぞろいて遠くから、あるいは近くから夫婦の様子を伺い、掘っ建て小屋には年齢の見当もつかない高齢の、男にもみえれば女にも見える先住者が意味不明の言葉のような、叫び声のようなものを発する。ガイドの一人は夫婦を置いてきぼりにして船をさらって逃げてしまうし、残った一人はコロリ穴におちて「助けてくれ」とみじめに連呼、子供たちは罠におちた獣をいじめるみたいに、手当たりしだい泥を投げ込んで生き埋めにしてしまう。子供に集団暴行させなぶり殺しさせるこの筋書き、ひどいじゃない。後味が悪いという以前に、映画センスそのものがドツボだわ▼どうしてエマニュエル・ベアールは本作のオファにOKしたのでしょうね。トチ狂ったとしかいいようがないわ。それともフランスの女優には、ときどき発作みたいに愚劣な映画に出演しなくてはおさまりがつかなくなるビョーキでもあるのだろうか。カトリーヌ・ドヌーブがマンガとしかいいようのない馬鹿バカしい「ストーン・カウンシル」に出たのは彼女が62歳のときだ。ベアールはこのとき45歳だった。まさか、ああ見えて変わったものの大好きな、大先輩ドヌーブの路線を踏襲するつもりじゃないでしょうね▼本作の舞台はタイのプーケット。建築家のポール(ルーファス・シーエル)と妻ジャンヌ(エマニュエル・ベアール)の一人息子ジョシュアが半年前の津波で行方不明になった。生存が絶望視される事実を受け入れることができず、息子はどこかで生きていると、夫婦はタイにとどまり続けていた。パーティでミャンマーの慈善活動を記録したビデオをみていたジャンヌは、赤いシャツを着た男の子の後ろ姿をみて、ジョシュアだと確信する。ポールは半信半疑だったが妻の気持ちを察し、大枚を費やしてガイドを雇い、ビデオを撮影した島に行くことにする。ところが島にたどりつくまでにつぎつぎ生じるトラブルにジャンヌは疲れきり意識すらもうろう。タクシンというガイドは別料金ばかり請求し、ケンカしそうになる夫をジャンヌは制してとにかく息子を探しだすことに専念しようというものの、降り続く亜熱帯の雨、けだるい気候、通じない言葉、不気味な儀式、夫婦をとりまく不都合な環境にだんだんジャンヌは異常をきたす。けだるくモノをいわないシーンは本来ベアールの見せ場なのですけどね、でも残念なことにベアールの前にこっちがおかしくなってしまったから、じっくり見ているゆとりもヘチマもなかったわ。エンディングは無茶苦茶よ。ハエのように群がってポールを惨殺した子供らが、ポールのお腹から腸やら内臓を引きずり出し空へ放り投げる。ジャンヌは子供たちに取り囲まれ恍惚。うわ~助けてくれ、つきあっておれん▼まともな話題をひとつ。美人の女性ガイド、キムに扮したのがジュリー・ドレフュス。大阪外語大学に留学し日本企業のCFや「遠き落日」に出演しました。彼女の母親が「河は呼んでる」の主役オルタンスを演じたパスカル・オードレです。主題歌が大ヒットしましたね。「デュランス河の流れのように、子鹿のようなその脚で、駆けろよ、駆けろ、可愛いオルタンスよ」これを作詞作曲したシンガー・ソングライターのギイ・ベアールがエマニュエル・ベアールの父親です。奇しきご縁というべきでしょうか。

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