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シネマ365日

2014年4月16日

リトル・ミス・サンシャイン (2006年 家族映画)

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監督 ジョナサン・デイトン/ヴァレリー・ファリス
出演 グレッグ・キニア/トニ・コレット/スティーブ・カレル/アラン・アーキン/ポール・ダノ/アビゲイル・ブレスリン

最高のダンス 

 一人娘オリーヴがカリフォルニアで開催する少女ミスコンに入選した。一家全員が黄色いワーゲンに乗ってニューメキシコのアルバカーキから1200キロの旅にでる。メンバーは主婦シェリル(トニ・コレット)と「勝ち組になる9段階」(効果のほどは不明)のステップを子供たちに教える堅物男の夫リチャード(グレッグ・キニア)、ニーチェの思想に影響され「沈黙の誓い」のために口を利かない長男のドウェイン(ポール・ダノ)は、空軍のパイロットなることを夢見る15歳の童貞。ゲイのパートナーに失恋して自殺未遂を起こしたプルースト研究家、妻の兄のフランク(スティーブ・カレル)、ヘロイン中毒でポルノ雑誌を熱読し老人ホームを追い出されたおじいちゃんのエドウィン(アラン・アーキン)。彼は孫娘オリーヴに、ミスコンで演じるダンスを毎日特訓する。ワケありの超個性的、錚々たるメンバーが黄色いワーゲンに乗り込んだ▼オリーヴはお腹がぽっちゃり出たメガネをかけた女の子。美人でないことはわかっているがママは応援せずにはおれない。パパは成功の9段階が出版されさえすればベストセラーだと鼻息は荒いが、旅の途中エージェントからあの話はなかったことにと、冷たい返事が入る。フランクはガソリンスタンドで、自分をふった恋人が若い男といっしょにいるのに出会い自尊心ズタボロ。おじいちゃんは火を吹く毒舌でメッタ斬り、孫のドウェインに「15歳にもなって童貞だと。わしの若いときは…」とたきつける。ママはパパが「成功しないやつは人生の負け犬」だと、それでなくともナーバスになっているオリーヴに言う無神経な発言を制するのに一苦労。オリーヴは大好きなおじいちゃんに「負け犬はイヤよ。パパに嫌われるから」と悲しそうに言う。おじいちゃんの答えが素晴らしい「負け犬の意味を知っているか。負けるのが怖くて挑戦しないやつのことだよ。お前は負け犬じゃない。挑戦しているじゃないか」▼このおじいちゃんがヘロインの誤飲で急死した。たいへん。明日の午後三時までにカリフォルニアのコンテスト会場に到着しないと出場が認められない。ここで葬儀をしている時間はなく、と言って州の外に遺体を持ち出すには許可がいる。パパは息子と義弟に手伝わせ遺体を車に積み込んで(もちろん無許可)発車オーライ。ボロワーゲンはクラッチがいかれてエンジンをかけるには人力で助走せねばならぬ。パパがハンドルをにぎりママも息子も伯父さんもオリーヴもウンウン車を押し「かかったぞ、早く乗れ」みんないっせいに走りだした車を追いかけ飛び乗るのだ。事件はまだ続く。ドウェインが色弱だとわかった。フランク伯父さんは宣告する「空軍はダメだ」。無言の行を続けていたドウェインは狂ったように泣き叫び車を飛び降りて「ひとりにさせてくれ」とすわりこんで動かない▼山盛りのトラブルをかかえつつ、全員は1分前に会場にすべりこむ。姪のためにフランク伯父さんは五輪選手も真っ青な全力疾走。締め切りを3分すぎている、規則は曲げられないと無情な受付嬢。パパは汗と埃でよれよれのシャツとズボンのまま「1200キロ走ってきて帰れるものか、お願いだ、頼む」両手の指を組んでひざまずき受付を突破する。出場者はプロ顔負けの演技を披露し、演目は最後のプログラム「特技」になった。オリーヴはダンスで登録した。パパと兄はオリーヴに恥をかかせるのは可哀想だ、段違いにレベルがちがう、あきらめようと説得する。ママは「オリーヴ、やめてもいいのよ。でも最後までやるならママは応援するわ」「やるわ、ママ」女たちのこのクソ度胸をみよ。ここからがクライマックスだ。おじいちゃんの教えてくれたダンスとは。音楽にのってオリーヴは衣装をつぎつぎ脱いでいき赤いパンツ一枚、審査員は悲鳴をあげ「お下品よ。退場させるべきだわ」観客席からはブーイング。パパと兄貴と伯父さんはうろたえながら、それでもたった三人で打つ手拍子が虚しく響く。ステージのオリーヴはおじいちゃんがいっしょにいるように元気いっぱい。オリーヴの無邪気な奮戦に巻き込まれ、ひとりふたりと手拍子が増えてきた。パパも兄貴も伯父さんもママも、我慢できずステージにかけあがり踊り出した。会場はいまやスタンディングで熱気の渦。ダンスが終わったとき「よかったぞ」だれかが絶叫した▼ルールを無視した違法演技で「二度とカリフォルニアのミスコンには出場しない」と警察で一筆とられた一家は、1200キロの帰路につく。パパの出版の話はゼロに。オリーヴのミスコンは失格に。フランクの職探しは展開が見えず、ドウェインはパイロットをあきらめおじいちゃんは死んだ。彼らこそ負け犬一家だ。それなのに彼らはヘッチャラだ。人はみな前向きで明るくいつでもポジティブ・シンキングでなければいけないのか。ポジティブ・シンキングそのものが借り物のときだってあるだろう。彼らはカリフォルニアに発つ前までは、お互いが無関心で落ちこぼれで独善的で押し付けがましく閉鎖的だった。オリーヴのミスコン出場がなければやっぱり食卓で口もきかずきっかけをみつけてはののしり、人の価値観を認めようとしなかった。ミスコンで栄冠は手に入らなかったけど、人が幸福を感じるあり方はみなちがっていていいのだ。カリフォルニアには出入り差し止めになったけど「おれたちのダンス最高だったぜ、イェーイ」。彼らは再びウンウン言って車を押し「かかったぞ、乗れ」パパの合図で走りだした車に飛び乗る。

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