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シネマ365日

2014年4月27日

ワーナー映画の歴史 (2008年 ドキュメンタリー映画)

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製作総指揮 クリント・イーストウッド
監督 リチャード・シッケル

欲望と夢 

 ワーナー映画創業85周年を記念して制作されたドキュメントです。クリント・イーストウッドがナレーションを受け持ちました。アニバサリー作品ですから全編これ祝賀祝典ムードです。テレビの普及と攻勢でピンチに立った映画ビジネス立て直しのため、ワーナー兄弟が自らテレビ映画をつくるところは面白かったですね。この時期のヒット番組が「ハーフサイド6」や「マーベリック」「ハワイアン・アイ」それに「サンセット77」などです。ワーナー映画の黎明期のスター第一号はリンチンチンだった。女優の中の女優というタイトルでベティ・デイビスが登場する。ジャック・ワーナーは彼女の使い方がわからなかった。デイビスはデイビスであらゆることにスタジオと対立する強烈な性格だったが、美人ではないのにそう思わせる不思議な魅力があった。若いときから共演する嫌いな女優を演技のうえでやっつけた(クビを締めたこともある)とか、ふつうわからないエピソードがふんだんに出てくる。映画産業が陥った危機はテレビだけではなかった。戦争があった。赤狩りがあった。映画の、というより文化の危機を乗り越えてきた映画作りや、自分のことを「19世紀の男」と呼んで自分の持ち味を役に反映させ、一世風靡したのがボギーことハンフリー・ボガードだった▼映画史上の決め台詞にも事欠かない。「君の瞳に乾杯」もいいが、20歳のローレン・バコールに「用があったら口笛を吹いて」といわせたのはハワード・ホークス監督だ。彼は尊大で傲慢で気の強い女が好きで、彼のおかげで花開いた女優のひとりがバコールだ。ハワード・ホークス、ジョン・ウェインらが西部劇黄金時代を築くいっぽう、サスペンスの帝王ヒッチコックもまた最高の時代を迎えていた。彼の代表作は1950年代後半から60年代に集中する。「知りすぎていた男」があり「めまい」があり、「サイコ」があり「鳥」があった。映画人たちは観客を映画館にとりもどすため、総力をあげて映画作りに挑んでいたのだと今にして思いあたる。また1960年代映画はアメリカン・ニューシネマという新時代を開拓する。先頭に立ったのがこれ「俺たちに明日はない」だった。テレビでは見られない重厚な作品も送り出された。「尼僧物語」「マイ・フェア・レディ」「ワイルド・バンチ」「ヴァージニア・ウルフなんか怖くない」そして70年代、アクション映画は新しいヒーローを生み出す。ワーナーの一時代を画した「ダーティー・ハリー」だった。インタビューではおとなしい、あたりさわりのないことを言っているクリントが、スクリーンではガラリこれでもかというほどいいカッコしている。こういうところが非常に腹立たしい男なのである▼ジョージ・クルーニーやメル・ギブソンらも当然スポット・ライトものですが、それより大事件は「マトリックス」だったと絶対に思う。ウォシャウスキー兄弟の本作は映像という最高の映画言語の表現に革命的な斬新さを与えた。と言っても決して大げさではない。第一作だけだけどね。そのあとはオタク度最高の兄弟が自作をいじりすぎて失速してしまったけど。そうそう「燃えよドラゴン」もあったな。「スーパーマン」「ブレードランナー」「エクソシスト」「2001年宇宙の旅」時代をさかのぼりついでに「風とともに去りぬ」もあげてしまおう。ティム・バートンが「バットマン」で注目され、あれよ、あれよというまに異能のファンタジー映画を世に送り出した。ジョニー・ディップはこの監督とめぐりあって幸運だった▼こんなことをいつまでも列挙していても仕方ないね。結局本作がいいたかったのはこれか。ワーナー・ブラザーズとはハリー、アルバート、サム、ジャックの四兄弟によって設立された映画スタジオ。ポーランドからの移民で八人の兄弟姉妹が貧困のなか、父が営む靴修理屋を手伝いながら生活していた。長兄ハリーは靴屋を拡大、ジャックは歌手として、サムは仕事を転々。映画の創成期にハリーは映画の魅力にとりつかれジャックのパフォーマンスつきで映画興行を開始し、田舎や鉱山町を巡業したというから根っからの叩き上げである。85周年の歴史でどんな映画より劇的なのはワーナー一家の立志伝だろう。映画館離れをくいとめたのは、いろいろあるが結局は銃と女と暴力を最大限スクリーンに導入したことだ。恐慌もあった、抑圧も戦争もあった、不景気もあった、性の解放もポルノ解禁もあった、ゲイ社会への迫害と理解もあった、現実を忘れたいときもあった、アクションでスカッとしたいときもあった、無法者も殺人狂もいた、宇宙も地底も大自然もインチキも詐欺もあった、それらが詰まった二時間のために人は映画館に来た。兄弟が知りつくしていたものは、結局は人間の欲望と夢だったのだ。

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