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シネマ365日

2014年4月29日

モネ・ゲーム (2012年 コメディ映画)

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監督 マイケル・ホフマン
出演 コリン・ファース/キャメロン・ディアス/アラン・リックマン/トム・コートネイ

善戦キャメロン・ディアス

 億万長者のシャバンダー(アラン・リックマン)にこき使われ、耐え難い侮辱を受けてきた絵画鑑定士のハリー(コリン・ファース)は、腹いせに友人の絵画の贋作名人、退役軍人のネルソン元少佐(トム・コートネイ)にモネの偽物を描かせる贋作詐欺を思いつく。そのためにはナチスからモネの本物を没収したアメリカ兵士を祖父に持つ、PJプズナウスキー(キャメロン・ディアス)を計画に参加させる必要があった。彼女はテキサスのロデオ娘である。人目をまったく気にしないアメリカ娘と、計画遂行にカチカチに凝り固まっているイギリス人ハリーとの対比がまず面白い。俳優たちは多彩です。語り手になるネルソン元少佐のトム・コートネイ。王立演劇学校に学んだイギリス演劇界のベテラン、というより「長距離ランナーの孤独」とか「ドクトル・ジバゴ」とか「将軍の夜」とかで主演・助演し「ライラの冒険 黄金の羅針盤」や「カルテット 人生のオペラハウス」でいまも活躍する長老格の映画人というほうが早い。彼は本作でまともに顔も見せない地味な素振りで出演しますが、そのじつ主人公のパートナーともいえる影の仕切り屋です。監督のマイケル・ホフマンはオックスフォード大学卒。「最終駅 トルストイ最後の旅」とか「真夏の夜の夢」とかどちらかといえばヨーロッパ色が濃い。本作で嫌われ役を演じるアラン・リックマンはなにを隠そう「ハリポタ」の薬物学教授スネイプ先生(髪が金髪だからわからなかったでしょ)。コリン・ファースときたらイングランド国王になってアカデミー主演男優賞ですよ(「英国王のスピーチ」)。こういうイギリス一色といっていい映画でキャメロン・ディアスが奮戦しています。劇中ロンドンのサボイホテルにカーボーイハットで現れるところなんか、やっぱり異質の文化を発散させていますね▼犬猿の仲のシャバンダーとハリーの唯一の共通点は印象派の作品をこよなく愛していること。ハリーは少佐にモネの「睡蓮」の贋作を描かせ、それをPJ家に祖父から伝わる本物とハリーが鑑定し、シャバンダーに売りつけようという作戦を立てた。成功まちがいなかった筋書きなのに、ハリーがド天然のPJに振り回されるわ、シャバンダーがPJに熱をあげるわ、正体不明の日本人企業の社長と社員がぞろぞろ登場するわ。日本人たちの扱い方がまたかなり品下るのですが、最後になってやっと彼らの意図とこの映画のどんでん返しが明らかになり、日本人としてはやれやれという感じ▼キャメロンが「爽快なほど図々しい」テキサス女をコミカルに演じ、観念的で教条的で杓子定規で、しかも偏見のあるハリーにあきれるところがあります。ハリーが言うにはシャバンダーは大富豪のいやらしさの塊でヌーディストだ、部屋の中では素っ裸でいる、人を見下す、人間性のかけらも知性もない男だということになっているがPJは言う「あら、彼は紳士よ。ハリー。人間には二種類いるのよ。手に触れるものみな富になるシャバンダーのような人間と、そうでないわたしたちのような人間と。それでもいいじゃない。あなたはあなたよ」いったいそれでなにが気に入らないのかとPJはいぶかる。ハリーはPJの天衣無縫ぶりに混乱しながらもひかれていく(でもいくらPJがロデオの名手だとはいえ、ライオンをしばりあげるのはちょっとやらせすぎ!)▼ハリー対シャバンダーの対比では、ハリーの復讐メラメラの炎がさかんに燃え上がり、そのわりにはドジばかり踏んで自らピンチを招き、下半身パンツ一枚でサボイホテルを歩きまわるという奇人ぶりをも発揮し、モネの贋作はどこで真価を発揮するのか見当がつかないまま映画は進みますが、ハリーのダメ男ぶりはじつは世を忍ぶ仮の姿。彼と少佐が日本人社長とすべてのやり取りを終えて別れ、ニンマリしながらつぎの仕事を「ピカソはどうだ」なんてうそぶきながら去るところは、やっぱりコーエン兄弟の脚本だなと思います。原題の「GAMBIT」はチェスでいう「さし初めの手」。そこから交渉事などで先を読んだ「切り出し」の意。結論をいうと詐欺は成功し彼らの口座には本物のモネの代金として莫大な金額が振り込まれます。じゃ帰米の航空券だけもらって搭乗したキャメロン・ディアスはどうなるの。ハリーはPJの荷物に自分の手元に残った印象派の小品を忍ばせ、それに気づいたPJはハリーの思い出にと、無邪気な笑顔をみせるのですが、そのころ男ふたりはこんな会話をかわしています。「彼女の席はエコノミーか」「もっと上等に変更するか」「そうしよう」。こ、これがPJの成功報酬かよ。なんたるケチ。コーエン兄弟というブランドがあるとはいえ、また多少のどんでん返しがあったとはいえ、こういうどことない不発感が本作に快哉を叫ぶのをためらわせ、足を引っ張っているのだ~。

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