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シネマ365日

2014年5月2日

特集「料理の映画」 ジュリー&ジュリア (2009年 事実に基づいた映画)

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監督 ノーラ・エフロン
出演 メリル・ストリープ/エイミー・アダムス

料理が救った女ふたり

 監督ノーラ・エフロンに主演メリル・ストリープときいただけでただならぬ気配がする。そこへからむのがエイミー・アダムス(「ザ・マスター」「人生の特等席」)にスタンリー・トゥッチ(「モネ・ゲーム」「ハンガー・ゲーム」)。彼は監督・脚本もやる才人です。それとこの人、出番は少ないけどヒロイン、ジュリア・チャイルドの妹ドロシーにジェーン・リンチが出演しています。背が高すぎて「結婚できないわ」と嘆いているわりには全然屈託ない、明るいアメリカ女性役。本作のときすでに「Lの世界」の弁護士で登場していました。ついでにいうと、チャイルド家はノッポの家系でジュリアは185センチ、ドロシーはそれより高かったというので、当時(1960年代)としては(今でも)群を抜く高身長でした。ジェーン・リンチは地のままでよかったのですが、168センチのメリルはかなりのシークレット・ブーツにハイヒール、撮影時は周囲の家具を小さくしてジュリアを大きくみせました▼いきがいをみつけられないで行き暮れていたジュリー(エイミー・アダムス)はある日「フランス料理の王道」という本にめぐりあう。ジュリーはもともと料理好きだ。著者のジュリア・チャイルドは大使館職員の妻。夫の赴任先パリでこれまたジュリーと同様、なにをしていいのかわからない手持ち無沙汰な毎日に元気がなかった。夫ポールはきく「いちばん好きなことは何だい」ジュリアはすかさず「食べることよ」。「そうか。君は幸せそうに食べるからね」「特技なの。食欲モリモリよ」メリルは料理の皿を目の前にすると目が輝く。ナイフとフォークをなめらかにあやつり、舌平目の背びれをはがすときの満ち足りた目つき。ぷるぷるした白い魚肉を舌に運ぶ至福の一瞬。それはそれは、おいしそうに食べるのだ▼ジュリアは料理学校に入り、無謀にもプロコースを選ぶ。生徒はみなG.Iだ。米軍の台所を担うプロである。有閑マダムの暇つぶしだとみなす男たちの冷たい視線にジュリアは奮起。ある日帰宅したポールはジュリアがみじん切りの練習をする、山のような玉ねぎの刺激に倒れかける。ジュリアは6時半起床、7時半学校へ。じゃがいもの皮むき、ブイヨンを作り魚の骨抜き、パイの下ごしらえとパイ生地作り。一度家に帰り夫と昼食後、ふたたび学校で午後の授業。結婚当初は卵が茹でられる程度だったジュリアは、料理の奥の深さと楽しさに「生きがいをみつけたわ」彼女はついに天職にめぐりあったのだ▼ジュリアの料理本を読みながら、ジュリーはすっかりジュリアの溌剌とした生き方に魅了され「365日でジュリアの料理本にある524レシピを再現する」大計画にチャレンジする。台所で心のなかでジュリアに話しかけながら、ジュリーはなぜジュリアが料理に心を奪われたかがわかっていく。ジュリアの料理はこったシェフの味でもレストランの料理でもなく、仕事をもって家事をする多忙なアメリカ女性が「助手なしで作れるフランス料理」だった。道端にのきを並べる八百屋や魚屋をのぞき、材料を吟味し臨機応変に自分流に変える。本来柔軟な発想のできるジュリアの能力を、いくらでも注ぎ込める豊かな土壌が料理という世界にはあった。楽しくて楽しくて仕方ない。ジュリアもジュリーも自分探しに迷い、料理に救われた女性たちだった。時空をこえてジュリアと対話するジュリーのブログは次第に反響をよび、ある日大新聞が取材を申し込んだ▼夫の任地が変わるたび、パリを離れたジュリアの料理本の出版はのびのびになっていた。パリにいた仲良しの主婦三人で原稿を作っていたが、仲間割れがあったり原稿の遅滞があったり、かきあげはしたものの700ページという大部の本は「主婦はだれもよまない」とほとんどの出版社は引いてしまった。でもひとりだけ女性編集者がジュリアの本の歴史的価値を認めた。それがジュディス・ジョーンズだ。ただしタイトルがダサいから変えろという。ジュリアはさんざん考えるがどうも料理と編集の才能は別らしくすべて没。最後にOKが出たのが「フランス料理の王道」という大胆なタイトルだった。夫ポールは言う「台所にいる妻の姿にみとれる。彼女が片手でフライパンをもち、オムレツをひっくり返し、すばやく皿に移し、つぎの動作で串をシャンシャンと鳴らす」台所のオーケストラともいうべきこのシーンのメリルの動作は、ほれぼれするほど圧倒的だ。彼女の怪演、快演、名演、すべてひっくるめて大女優とよぶことをためらわぬファンの気持ちがわかる。もはやこわいものなしである▼ジュリーに残った最後のレシピはこれぞ料理の真髄「カモの骨抜き」だった。ビデオの中のジュリアは言う「ナイフを手にカモと対決」(対決するわよ)と心のなかでジュリーがつぶやく。ジュリアは「カモの背中を深くナイフで裂く」(裂いたわ)とジュリー。この調子で調理が進む。「首から尾まで切り込んで背骨を露出させる」背骨が出た。「よく切れる小型ナイフで骨に当てるように肉をひっぱりながら骨を外す。まな板にのせ皮を縫い合わす。パイ生地を広げオーブンから出して数時間さます」このシーンの雄弁な語りは言葉より映像に任せよう▼ある日ジュリーはスミソニアンのジュリア記念館を訪れた。ジュリアの写真の前にバターを供える。ジュリアに言わせればバターこそ料理の黄金の鍵らしい。1994年夫ポールが92歳で亡くなり、2004年ジュリアは91歳でみまかった。「王道のフランス料理」は49版を重ねる。ジュリーは作家の道に入り、2005年「ジュリー&ジュリア」を出版した。映画化された本作はノーラ・エフロンの遺作だ。ノーラ・エフロンと言い、メリル・ストリープといい、エイミー・アダムスといい、また充実の脇役陣など、こってりと内容がありながら重くない。本作のどこを切りとっても、女性映画人たちのはなやぎにあふれている。

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