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シネマ365日

2014年5月5日

特集「料理の映画」 シェフ!三ツ星レストランの舞台裏へようこそ (2012年 コメディ映画)

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監督 ダニエル・コーエン
出演 ジャン・レノ/ミカエル・ユーン

厨房のドラマと匂い 

 オープニング・クレジットの導入部は、歯切れよく軽快な、洗練された音楽。音楽ニコラ・ピオヴァーニ? 知らなかったけれどいいセンス。そう思いながら心地よく映画は始まる。これで半分勝負あったって感じね。ここはジャッキー(ミカエル・ユーン)の勤めるレストラン。昼食の混雑時、ジャッキーは盛り付けに余念がない。客は20分で食べるのだからどうでもいいというマネージャーに「とんでもない」とジャッキー。「子牛のブランケット、リブロース、シャトーブリアン」とメニューが通る。さらに「7番、8番(テーブルの番号)にフォジェール」の声にジャッキーは「?」。「8番に通っているのはブランケットだ」。手をとめた彼はつかつかとテーブルへ。客に「なぜフォジェールを?」「彼がすすめた」と男性は向かいにすわる友人を紹介する。「たわごとです。子牛のブランケットには白が合います。どうぞこれを。2003年のミュスカデです」男性は当惑し「おれは赤がいいのだが」ジャッキー「そうですか。では食事をリブロースに変えましょう」さっさと皿を引く。「子牛はどうなる」客は怒鳴る。ジャッキーはクビ▼ジャッキーは有名シェフのレシピをすべて暗記する情熱と才能で自らを「料理のモーツアルト」つまり天才と称する。しかしあまりのこだわりの強さから、客や同僚とすぐトラブルを起こし、どこの店でも長続きしない。恋人の妊娠をきっかけに今度こそ安定収入を得ようと、ペンキ職人になった。アレクサンドル(ジャン・レノ)は三ツ星レストラン「ラガルド」の超一流シェフ。最近料理がマンネリになり「感動がない」とゆううつだ。このままではつぎの採点で星を失いかねないという危機に直面する。アレクサンドルのやりかたを「時代にあわない」と批判する二代目社長は早く辞めさせたい。三ツ星を失格させたらクビだと言い渡し、アレクサンドルは窮地に立つ▼ふとしたことからジャッキーの才能を知ったアレクサンドルは助手にするが意見があわない。料理に関してはどちらもあとにひかない。しかしぶつかりながらも料理への情熱を理解しあったふたりはお互いを認めるが、審査の日は目前に迫っていた。新作料理のために社長がラガルドの公認シェフとして雇うつもりの料理人シリルの店に、ふたりは情報収集のため客に変装し来店する。サムライとゲイシャという日本人夫婦のふれこみでやってきたふたりは、妙な日本語をあやつり、つぎつぎ料理を食べ敵の手の内を知る。本当いうと噴飯物の出で立ちです。ジャン・レノは和服にチョンマゲ、ミカエル・ユーンは花魁も顔負けのカツラに衣装。真っ赤な口紅でふちどった口でフガフガと質問に答えケムにまく。ひとつ間違えば日本文化への無理解と侮辱ですが、大真面目にやっているのが大の親日家であるジャン・レノだから笑っていられる。知性を疑う反日発言を、平気でする女優もいますからね▼筋運びも抑えどころも、類型的といってしまえばそれまでですが、なにしろ色とりどりの料理、ふんだんにテーブルに盛られるごちそうと生き生きしたキッチンの風景。手際よく並ぶきれいな皿、研ぎ澄ました庖丁、ピカピカの鍋、錦上花を添えるワイン。演技がどうだとかこうだとかいう前に、これらの小道具大道具が雄弁にしゃべりだす映画の空気。社長の妨害にもまけず審査員はだされた料理を絶賛。たとえ予定調和であっても、思い切りベタで感動させるのはやっぱり監督の腕ですよ。それとキーとなる料理の「分子料理」。食べたことないけど、ある素材に何らかの力を加え分子状態にする料理らしいです。前衛的な発想と手法で20年前くらいから追及する研究派が、科学者やシェフのなかにおられるそう。新しい料理創造のひとつなのでしょうね。よくわからなかったけど。ともあれ試行錯誤のすえすべて大団円。見た目は鮮やか、お話は起伏にとみ、主役に脇役(特に老人ホームのおじさん三人組や入居者の面々)ら、明るくて後味のいい、だれとみても安心できる映画です。高級フレンチの臨場感をだすため、監督は実際のパリの三ツ星レストランのシェフたちを取材、厨房の匂いとドラマを伝えるのに成功しています。

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