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シネマ365日

2014年5月10日

特集「料理の映画」 厨房で逢いましょう (2006年 恋愛映画)

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監督 ミヒャエル・ホーフマン
出演 ヨーゼフ・オステンドルフ/シャルロット・ロシュ

厨房におしかけましょう

 主人公の天才料理人グレゴア(ヨーゼフ・オステンドルフ)のプラリネ(チョコレートケーキの上に置く飾り)を一つ、口にしたエデン(シャルロット・ロシュ)はその夜、夫にささやく「最高よ。楽園にいるような味よ。あの料理人、天才だわ。楽園を出たくなくてあの子(自分の幼い娘。彼女の誕生日だったのでグレゴアはケーキを作って持ってきてあげた)は癇癪を起こしたのよ。アレルギーからじゃない。衝撃的な味だったわ。わたしの夢だったの。あんなチョコを舌でとろけさせながら、あなたに抱かれたら快感も倍になるはず。手に入れたいわ」そこで彼女は夜遅く新料理を試作中のグレゴアを自宅に訪ねる。グレゴアはとあるレストランで給仕しているエデンが好きなのだけど、口に出せない。いつも黙ってカフェのテーブルに座って彼女を見ているだけだ▼飲み逃げした客がいて、それをきっかけに口をきくようになった。グレゴアは体重130キロの巨体と、はや額が禿げ上がってきた自分の容姿に、女がまともに自分を相手にするはずがないというコンプレックスを持っている。映画のオープニングに語る彼の独白を聞こう。「料理は哲学、化学、物理の母だ。料理の真髄は試作と創意工夫にある。料理は最古の芸術であり洞窟絵画より古い。妹を宿した母の美しい腹をみながらあんなふうに将来見事な腹を持つのだと誓った」グレゴアは夢の実現のため食べまくり「大きな腹はわたしの誇りだ。人生の大半を料理や食材の調達に費やしたが、それ以外の時間は給仕の女性を見て過ごした」。なんとなれば彼の母親は給仕だった。6歳のとき義父がきてグレゴアは彼が好きでなかった。義父が可愛がっていた犬を義父に食べさせたことがある。義父はなにも気付かず皿まで舐めた。グレゴアのそういう偏執狂的な性格がおいおい映画には出てくる▼グレゴアの家にきたエデンはあのチョコレートを食べさせてくれと頼む。普通の感覚からいえばかなり図々しい女だという気がするが、これはほんの序の口だ。グレゴアにすれば快く思っていた女性が自分の料理をほめてくれて悪い気のするはずはない。でも彼はオクテだ。仕事中だから帰ってくれと言うと、エデンは調理中の新作料理を味見させてくれと頼むのである。おいおい。グレゴアは一口皿にわけてテーブルに置き、ワインセラーから戻ってくるまでに帰っておいてくれと念をおしてキッチンを出る。戻ってきて彼が目撃したのは一口どころか鍋いっぱいの料理を夢中で平らげ、退散するエデンの後ろ姿だった。こんな女性ってホントにいるのでしょうか▼夫が留守だという火曜日の夜に、毎週エデンはやってくるようになる。おいしい、おいしいといって「来年2月まで店は予約でいっぱい」という高級レストランのオーナーシェフ、グレゴアの料理をタダメシ食べ放題だ。いつもいただいてばかりで悪いし、夫にもあってほしいからとエデンが自宅に招待してくれた。礼儀正しくグレゴアがスーツで正装して訪問したらエデンはバツの悪そうな顔で「料理しようと思ったのだけど」都合がつかず夫も帰っていないと言う。冷蔵庫にあるものでグレゴアはとびきりの料理を作ってやる。娘とふたりうまそうに平らげたエデンは、今度は娘まで連れて「近くにきたから寄っただけ」と言ってグレゴア宅を訪問する。いい年をした女がグレゴアの視線や口調にある思慕に気づかないはずはなく、いや百歩譲ってほんとになにも知らなかったにせよ、無邪気というにはちょっと軽率すぎるだろう。グレゴアの料理のおかげで、仲が冷えていた夫とはうってかわった情熱的な夜を過ごし、子供は満足してぐっすり眠り、毎日が楽しい、おまけに念願だった妊娠までできた、みんなあなたのおかげ…あんまりおめでたい態度・言い草にだんだんエデンという女がいやになってきたのはわたしだけか▼妻とグレゴアの間が取りざたされるようになり、夫は妻と娘を同伴しパリに旅行に出る。グレゴアは元気がなくなり、料理の味は落ち、グレゴアは隣の犬をキッチンのテーブルに座らせ、うでをふるった料理を食わせる。さすがのグレゴアも「いったい自分はあなたの何だ」と聞いたことがある。「料理が目的じゃないわ。たとえレバーソーセージしかなくてもあなたのところへくるわ。友達だもの。パリから戻ってきたらまた仲良くしてね」無神経としかいいようがない。妻が熱をあげているのはグレゴアの料理なのに、夫はグレゴアに頼む。「女房が好きなら身を引いてくれ。でないとすべておしまいだ」グレゴアは落ち着いて奥さんとはなにもない、コトを起こすつもりもないというが夫は涙ながらに訴える。なんで自分の女房に言わないのよ。泣く相手が間違っているだろ▼夫が腹立ちまぎれにグレゴアのワインセラーを破壊したものだから、ヴィンテージのワインを資産として融資していた銀行が手を引いてしまった。店は差し押さえ。エデンに別れを告げにきたグレゴアを、興奮した夫が殴りつけ危険を感じたグレゴアは森に逃げる。追ってきた夫はでてこいとわめきちらす。木の上に登って息をひそめていたグレゴアは夫の真上に落ちた。130キロの巨体をまともに受け彼は圧死。グレゴアは有罪となり刑務所で臭いメシを食う。数年後、生まれた息子は4、5歳か。息子と娘を乗せエデンがアウトバーンを走っている。ラジオでアナウンサーが言う「世界初の一つ星軽食レストランができました。その店は店主が正装で客を迎え客の身なりもよい、すごい行列でわたしの順番もまだなのです」。エデンはその店がだれの店かわかっている。車を止め厨房に行くとグレゴアが迎えて言った。「あえてよかった」…ふ~ん、つまりこれが「厨房で逢いましょう」? 「厨房におしかけましょう」のまちがいだろ。 

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