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特集「過剰な女たち」

2014年5月12日

特集「過剰な女たち」 キル・ビル (2003年 アクション映画)

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監督 クエンティ・タランティーノ
出演 ユマ・サーマン/ルーシー・リュー

史上屈指のグロテスク 

 オープニングの「バンバン」がまるで「キル・ビル」の主題歌みたいだ。歌っているのはナンシー・シナトラ。歌詞をそのままタランティーノは脚本にしたのではないかと思うほどぴったりの内容だった。どっかからパクってくる、といって悪ければよく似たシチュエーションをつくってオリジナルにオマージュを捧げるのはタランティーノの映画作法のようなものだろう。パクリとオマージュと荒唐無稽と逸脱にバイオレンス、タランティーノの映画は全編これ、そんなキーワードで始まり展開し、締めくくられる。イギリスのサイトによれば歴代の殺し屋(女性)が劇中殺した人数は「キル・ビル」が最高の70数人だった。いうまでもなくメーンとなったのは料亭「青葉家」の大乱闘シーンである。映画とはけっきょくどんな作り方であろうとハチャメチャであろうと、意味があろうとなかろうとおもしろければいいのだ、そんなヤケクソみたいな感想しかでてこないところがタランティーノにはあって困るのだ▼ちょんぎられた生首が宙を飛ぶ、腕がズバッと肩から落とされる、手首が床に転がり膝から下がなくなる、目玉はえぐりとる、こういうシーンのオンパレードがある。あれよ、あれよ、といいながら見ているしかない。ヤクザの親分を襲名した姐さんが、幹部がなにか気に入らないことを一言口にしたとたん、座敷机の上をすべるように幹部の前まで走ったかと思うと刃が一閃、幹部の首が机に転がり血煙があがる。座敷机は黒檀か紫檀か、磨かれているからピカピカ顔が映るくらいだ、だからだろうけど姐さんは裸足でこのとき走るのだ。でも子分を引き連れ料亭に御出ましになったときはまさか素足だっただろうか。和服に草履を履いて素足はないはずだ。このあと姐さんとヒロインの対決のとき、姐さんは足袋をはいた足で草履をぬいで降り積った雪を踏むのである。するとこういうことか。姐さんはさっと足袋を脱ぎ、スススッと机の上を走って首をちょん切ったあと、素早く足袋を履き、決闘に臨んだわけか。しかしヒロインが料亭にバイクを走らせているとき東京都内に小雪もなかった。積雪の量からみて、足あとがめり込むくらいの雪が1時間たつかたたないうちに降るのだろうか▼ヒロインが昏睡(しかも4年間)から目覚めたとき、自分のお腹がペチャンコになっているのを知り、妊娠していたのにてっきり子供は死産だったのだと思って泣くのだが、そのとき「娘が死んだ」というのである。昏睡だったのにどうして男の子だったか女の子だったかがわかるのだ。飛行機の中でヒロインが大事そうに日本刀を座席の横にひきつけて置いている。日本の銃刀法はどうなっている。機内では通用しないのか。千葉真一の「武士たるもの戦いに挑んでは己の敵を倒すことのみに専念すべし」のナレーションは「柳生一族の陰謀」のオープニングそのままだ。女殺し屋のエルがヒロイン暗殺のため看護師に変装して病院の廊下を歩く。彼女はアイパッチをしている。それはいい。でもそのアイパッチに、なんで赤十字のマークが入っているのだよ(笑)。ヤクザの姐さんには家族を暗殺された悲しい過去があった。彼女は復讐を近い立派な(?)殺し屋に成長した。ある日仕事を請け負った。彼女のスタイルといい、武器といい「ニキータ」とそっくり。もちろん武器は「デザート・イーグル」である。姐さんの護衛になんで17歳の高校生がミニスカのセーラー服でガードしているのだ。未成年だろ。おまけに車まで運転して。免許がとれるはずないから無免許じゃないか。広い吹き抜けのある高級料亭に高校生のバンドが生演奏している。ありえない。こんなちぐはぐ、いやはや、タランティーノにとっては大事の前の小事なのか▼すっかりご存知と思える「キル・ビル」の粗筋ですが、ヒロインは女殺し屋、彼女が属するグループは史上最強の「毒蛇暗殺団」。その中でもトップの凄腕「ブラック・マンバ」ことザ・プライド(ユマ・サーマン)だ。タランティーノのいつもの作劇で時間軸が行ったり来たりするが、察するにブラック・マンバは愛する男との間に子供ができて足を洗うことにし、それが気にいらなかった暗殺団の首領ビルが刺客を放ち、ザ・プライドは結婚式のリハーサルで関係者一同教会に集まったところを全員が殺戮された、ザ・プライドだけが奇跡的に命をとりとめ(頭蓋骨にめりこむ銃弾を受けてそんなことアリか)、4年間昏睡し、覚醒したところ13時間で足の親指が回るようになり、24時間たつかたたないかで全身の機能を回復するのだ。この映画の場合リアリズムは敵だな。でもヒロインが大きなノートに復讐する人物の名前を黒のマジックと赤のマジックでかき分け、殺した名前には棒線を引いて消去していくという、完全アナログの情報処理って、みていて子供みたいで可愛らしいと思いませんでした? なんでもスマホ1台で処理する今とちがって、どことなくのんびりしているのです。スクリーンが血の海と化す料亭の死闘は、映画史上最高のグロテスクのひとつでしょう。あまり表情を変化させないユマ・サーマンがはまり役でした。 

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