女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「過剰な女たち」

2014年5月13日

特集「過剰な女たち」 キル・ビルvol.2 (2004年 アクション映画)

Pocket
LINEで送る

監督 クエンティン・タランティーノ
出演 ユマ・サーマン/デイヴィッド・キャラダイン/ダリル・ハンナ

 前作の「キル・ビル」でもそうだったけど、毒蛇暗殺団のヘッドはビルですね。演じる俳優はベテランのデイヴィッド・キャラダインです。本作ではいよいよボスのキルが全面的に登場し、ヒロイン(役名はいくつかあるが面倒なのでユマ・サーマンとする)との恋人時代や中国武術の達人にふさわしい薀蓄を披露したりします。キャラダインによれば、クエンティン・タランティーノは彼を想定してビルを書いたから無条件で引き受けたというの。ふうん。でもね。武術の達人なのだけど彼のアクション・シーンはあんまりないし、わざとそう見せているのかもしれないけど、ヨボヨボして下手な笛吹く枯れ木のようなおじさんが彼です。ユマとかダリル・ハンナとか生きのいい殺しの女が、愛人の座におさまりたがるオーラってあった? 女は権力のある者ならだれとでもくっつきたがるというのなら、まさかタランティーノよ、キミは女嫌いか。基本的な第一印象の「はてな」が尾を引いて、本作の必殺技「五点掌爆心拳」が炸裂したときは(ほっといても発作起こしそうやろ)と思ってしまったのでありがたみが半減した。それにユマに武術を教えた先生は、ダリル・ハンナによって暗殺されたのだけど、殺しの手段は魚の毒ですってよ。毒を持った魚ってフグのことか。あの中国の山奥の積雪の秘境にフグはいたのか。運搬したとすればかなりの日数がかかり当然傷みもしたろうし、腐った魚を判別できないような鈍感な、世界最強の師範ってアリか▼だから一作目ほどの衝撃度はなかったのですが、もういい、すべてに目をつぶろう…それでも吹き出すのがタランティーノなのだ。ユマ・サーマンは「荒野の用心棒」のようにひそやかに、でもカッコよく砂漠の岩山の頂上に姿を現し、殺す男のボロのトレーラーハウスを見下ろす。つぎにどこにいるかといえばトレーラーの床下である。なぜか黒い目出し帽をかぶっている。あたりに猫の子一匹いないのにだれが顔を見るのだ。ユマもそう思ったのかどうか、今度は帽子を取りコンテナのドアを開けたとたん、敵の岩塩弾をまともに胸にくらう。いうなればヒロインが殺しの技をバシッと決めて本作デビューする当然のファーストシーンで、大の字にのびてしまうのだ。このさき大丈夫でしょうか。ユマは懐中電灯ひとつ持つことを許され(理由は不明)手足を縛られ棺桶に閉じ込められる。しかし、しかし。彼女は中国の先生のもとで修業し恐るべき必殺技の数々を体得していた。そのひとつ「拳より7センチの間隔にある厚板を打ち抜く」の成果を発揮する。縄をほどいたユマはガンガンガン、素手で厚い板を連打、ぶち破り砂まみれになって脱出する。つぎはコンテナにやってきた女殺し屋エル(ダリル・ハンナ)との対決である(ユマを岩塩弾でぶっとばした男は、エルのもって来たカバンの札束に手をつっこみ、猛毒のブラックマンバに指やら首やらいっぱい咬まれ、ひどい形相で死にました)。ユマもダリルも長身の細身で金髪。狭いコンテナのなかで日本刀を振り回して暴れ回り、ユマがダリルの唯一残った左目をえぐりだし、ポイと床に捨てグシャッと踏んづける、気の弱い人はめまいがしそうなシーンでして本作のアクションではいちばん迫力がありました▼いよいよ最後の復讐の決戦。ビルとユマの対決ですね。ビルは娘の父親です。ビルの家に入ったユマは、ビルに殺されたと思っていた娘が成長しているのをみて(7歳くらいか)涙する。ビルは母親と娘にひとときの安らぎの時間を与えます。ユマが娘を寝かしつけるときベッドでいっしょに見ているテレビは「子連れ狼」です。タランティーノの日本好きはサイコーですね。決勝戦はカンフーに練達した殺し屋同士、さすがといいたいけどユマがチョンチョンチョンとビルの胸板を突くのが「五点掌爆心拳」で、そこは人体必殺のツボで、五歩あるくと心臓が爆発しちゃうのだ。で、ビルはよろよろと五歩あるいてパタッ。怨念の復讐戦にしちゃあっけなかった。まあいい。とにかく前作はバッタバッタとユマが斬りまくり、本作も負けじと刀を振り回す騒々しい映画はこれで終わり。お疲れさま。蛇足ですが女殺し屋の映画の傑作にレナ・オリンの「蜘蛛女」があります。共演はこれぞゲイリー・オールドマン。徹底的に非情な女をレナが、彼女にメタメタにやられるダメ男にオールドマンが扮し、砂漠のダイナーでひとり女を待つ男の、胸をひきしぼられるような孤独と詩情でラストを締めくくりました。落ち込んでいる時にみるとよけい落ち込む。でも本作はむしゃくしゃしているときにこそみる映画です。

Pocket
LINEで送る