女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「過剰な女たち」

2014年5月16日

特集「過剰な女たち」 テープ (2001年 心理劇映画)

Pocket
LINEで送る

監督 リチャード・リンクレイター
出演 ユマ・サーマン/イーサン・ホーク/ロバート・ショーン・レナード

サイコ男にダメ男

 登場人物は3人。舞台はホテルの一室。高校卒業して10年。オークランドで消防士をしているが本業はドラッグの売人であるヴィンセント(イーサン・ホーク)、映画監督だというが彼の映画は公開されたことがなく、ひたすら大物監督に見出されるチャンスを待っているジョン(ロバート・ショーン・レナード)。高校時代ふたりの友人で地元の大学の法学部を卒業、今は地方検事補としてキャリアを築き、検事の恋人がいるエイミー(ユマ・サーマン)。ユマ・サーマンが登場するのはざっと半分以上過ぎてからです。それまで男ふたりは高校時代の思い出話などとりとめのない世間話をしている。ヴィンセントがジョンとエイミーが卒業間際に親密な仲になったことを言い出す。ジョンは昔話のつもりで適当に相槌を打っていたが、イーサン・ホークはあの独特のいやらしい陰気な、落ち込んだ奥目の上目遣いでチラチラ盗み見るようにしながら、「じつはそうじゃないだろ、ただのセックスじゃないだろ、正直にいえよ」なんて黒蛇みたいに巻き付いてくる。ジョンは「まあね」とか「そんなことない」とかはぐらかそうとするが、どっこい落ち目の男をやらせたらイーサンのキャラにだれがまさるだろう。とうとうジョンは(…)誘導尋問にうなずいちゃう。つまり「半分くらいはそうだった」と煮え切らない回答ながらレイプを認めるのだ▼それですむのか、みとめただけですむのか、とヴィンセントのしつこいこと、しつこいこと。すまないと思うなら謝罪するのがあたりまえだろうと追求し、ジョンはスイマセンといっちゃう。その一部始終がテープにとられていたのだ。「エーッ」なんてことするのだ。真っ青なジョン。そこへあらかじめヴィンセントが呼んでおいたエイミーが到着「なつかしいわね、何年ぶりかしら」などという退屈な切り出しだけど、エイミーはなんのために呼ばれたか知らないから、ま、いいか。ヴィンセントは勝ち誇りジョンが君に謝罪するという。エイミーはとぼける。意欲的な構成だとは思うけど、セリフがこのうえなくタルイのです。一人芝居や二人芝居(三人芝居でも同じだが)は息もつかせぬ緊張したセリフの濃さが生命だ。「ああだろ」「こうだろ」のどうでもいい言葉が多すぎるのだよ。この映画がつまらなかった理由はそれです。「わかるだろ、おれがいいたいこと」とか「なんのこと?」「いったいなにが言いたいのだ」とか「なに言っているの?」「そんなことわからないわよ」「あのときだよ、ほら」「あのことさ、知っているじゃないか」だれが知るかい! こんなやりとりばかり延々続く▼退屈きわまりない学芸会に風穴をあけるのがユマ・サーマンの検事補エイミーだ。クレージーなヴィンセントが、結局なにをいいたいのかというと、ジョンがエイミーをレイプした、その告白をテープにとった、これで君に謝らせてあげる、と言うのだがエイミーは、あれはレイプじゃない、自分はジョンを愛していたといいだす、ジョンはジョンで「レイプしたことを謝りたい」と繰り返す。女は検事補というキャリアで人生を再構築しようとしている、例えレイプが事実で「ジョンを愛していた」が負け惜しみだとしても、自分を呼び出して過去を蒸し返し「謝罪させてあげたよ」なんて、男のひとりよがりに貸す耳があろうか。ジョンというやつもすこぶるつきの無神経である。エイミーが「なんでいま謝るの。10年も放っておいて」と聞く。口をもごもごさせるジョンに「テープにとられたから?」とさらにきくとそうだと答える。証拠があがったから収拾しようとしているだけで、テープがなければ知らぬ顔だった。その程度のダメ男なのよね。ヴィンセントときたら大きな世話焼きなうえに、ひょっとして自分の努力に感謝してエイミーと寄りをもどせるかも、という空想を抱いているのがホラーなまでにサイコ男だしね。うんざりした検事補はさっさと帰ろうとするがただ帰るのはもったいない。黙って電話をとりあげ警察に通報する。「検事補です。室内に違法の薬物があります。同室の男は10年前の強姦を自白しました」検事補によれば性犯罪の場合時効はない、よって自白したジョンは逮捕である、パトカーは4分で到着する。逃げるなら逃げれば? 男たちの皮を剥いて正体を暴露させ、さっさとエイミーはひきあげる。視点をかえればどんな見方だってできるのだ。エイミーにしたらこんな男らを相手に惚れたの、腫れたの、とのぼせあがっていたのかと思うとそれこそが煮えくり返る思いだろう。過剰な感情をエイミーはクールな行動で処理する。たいてい逆の場合が多いのだけどね。

Pocket
LINEで送る