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特集「過剰な女たち」

2014年5月17日

特集「過剰な女たち」 グリーン・デスティニー (2000年 アクション映画)

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監督 アン・リー
出演 チョウ・ユンファ/ミシェル・ヨー/チャン・ツィイー/チャン・チェン

アン・リーの企み 美しい武術 

 武侠映画というのですってね、これ。すばらしいこと。ワイヤーアクションが馬鹿っぽいっていうけど、気持ちいいじゃありませんか、あんなフワフワと空中を飛び交うなんて。どうせ人間技じゃないところでお話が進むのですもん。緑の竹やぶで、竹の葉の上にちょこんと止まったり、深い立木の群れの梢のてっぺんを白いチョウのように浮遊したり、あんまり幻想的なのでひょっとしてアン・リーは筋書きなんかどうでもいいと思っていたのかなんて気がしましたわ。グリーン・デスティニーという400年も伝わる名剣の持ち主にして剣の名人のほまれ高いリー・ムーバイ(チョウ・ユンファ)が平和を求めるため剣を棄てる、ということで剣を北京の長官に譲ることにした、剣の運び役がユー・シューリン(ミシェル・ヨー)。どっちも好きあっているが師弟ゆえ許されない。そういう厳しい修行のうえに武侠の達人はなりたつらしい。そんなおりシューリンは貴族の娘イェン(チャン・ツィイー)に出会う。彼女は結婚を控える美しい娘だ。親の決めた名家に嫁ぐことになったが、本当はユーのような剣士になりたがっていた。おりしも北京には碧眼狐という盗賊が夜な夜な現れていた。盗賊の正体はイェンに剣と闘技を教えた碧眼狐という女盗賊だった。イェンは母親と一族とともに砂漠を横断中、盗賊の青年ローに誘拐され荒野で暮らすうち恋に落ちる。しかし政略結婚が決まっているイェンはローに別れをつげ家に戻る。リーはイェンの剣の素質が並々ならぬ才能であることを知るが、イェンが習ったのは盗賊の剣法であったから邪道である。リーは反発するイェンに正しい剣の道を教えようとするが、ふたりが惹かれ合っていることをシューリンは感じ取る。ローはイェンを忘れられず荒野をあとに北京に現れた…▼前置きが長くなったがようは二組の男女の恋物語である。大人の男女がリーとシューリン。わかいカップルがイェンとローなのですけどね。男のほうがどうも冴えないのですよね。女組は、たとえば脇役であるはずの狐のおばさんなんか凄腕の殺し屋かつ強盗でしてね。リーへの思慕を秘め、死んだ許嫁への「操は守るべきもの」と自らにいいきかせるストイックなシューリン、と思うと名家のお嬢さんのイェンは剣も強いが気も強い、誰のいうこともきかず砂漠でめぐりあったローとしばしの放蕩生活。潮時をみてさっさと家に引き返す。比べて男組。リーは剣こそ名人だが心の迷いから瞑想をやめ修行場の峻厳秘境の山を降り剣は譲る、ですって。きいたシューリンは「まあ」と絶句。剣を棄て自分と結婚する決心でもしたのかと思ったら、若いイェンに剣を教える? シューリンにしたら「ほっとけよ」と言いたいところだろ。それに最後は碧眼狐の吹き矢の毒であっさり死んじゃう。アン・リーよ、ここの意図を聞きたいのだけど、これ狐の恨みにリー先生は敗けちゃったってことね。それにイェンを追っかけて砂漠からやってきたローは、なんだかおそるおそる夜這いに来た童貞男みたいで、お話が進めば進むほどだんだん男組の影が薄くなっていくのはアン・リーよ、きみはなんでそこまで男にたいして意地悪するのだ、ひょっとして快感を感じてでもいるのかと聞きたい▼それにひきかえどうでしょ。イェンとシューリンのアクションシーンは。アン・リーのこの力のいれようったらマア。リー先生のアクションはやたらひょいひょい葉っぱの上をとぶ、上品というか優雅というか、ダンスのような風情なのに、こっちの女二人の武術シーンの本格的なこと。女優ふたりもよく体が動いているし、型はきれいし、まなじりを決した必死の形相も、余裕といえば聞こえはいいが美少女相手に終始ニタニタ笑いを押し殺しているリー先生とケタ違いの迫力。「男たちの挽歌」でみせたチョウ・ユンファの「男」はどこへ消えてしまったのよ。女ふたりのアクションは鋭く華麗に、さすがカンフーの本場と納得できる体技の力強さ。粗筋なんて一言でいうと中国の昔話みたいなのだけど、最後までガンガン引きずられていった魅力はワイヤーアクションだろうとなんだろうとかまわない、すべてひっくるめたうえでの格闘技の美しさですね。こうなると武術のやりとりそのものに幻想性とか幽玄とか、エレガンスとか、そういうスピリッツをあふれさせるアン・リーの企みに、やっぱりひっかかったことになるのですねー。

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