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特集「過剰な女たち」

2014年5月31日

特集「過剰な女たち」 ダメージ シーズン5 (2012年 サスペンス映画 全10話)

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監督 トッド・A・ケスラー他
出演 グレン・クローズ/ローズ・バーン/ジャネット・マクティア

鬼のような女になりなさい

 ファイナルです。シーズン「1」から「5」まで貫通するパティ・ヒューズ(グレン・クローズ)とエレン(ローズ・バーン)の確執に終止符を打つのが本編。パティがかつて裁判で負かし、以後休業していたが、エレンとパティが対決すると聞いて、エレン側につく女性弁護士にジャネット・マクティアが扮しています。ご存知でしょうがイギリスの有名な舞台俳優で、彼女の舞台にグレン・クローズが惚れ込み「アルバート氏の人生」で共演を依頼した女優です。彼女が演じたのは女性と結婚したゲイのヒューバート。男性を装って生きる主人公アルを否定せず「君らしい生き方ができる、いい女性がいるはずだ」と励まします。グレンは長年演じたパティ・ヒューズのファイナルを、息の合う脇で固めたようです。本作は粗筋よりパティとエレンというふたりの女性の生き方と人生の選択に的を絞りました。このシリーズがめっぽう面白かったのは、サスペンスとしてのドラマの構築もさることながら、法曹界のカリスマ弁護士であるパティと、彼女を憎みながらも自分の生きる指標として追ってきたエレンの卓抜な心理劇にありました。パティもまた最初は証人の一コマにすぎなかったエレンの、思いがけない奮戦に、自分の後継者にとまで思うのですがパティの本性を知り抜いているエレンは餌に食いつかない。パティはだんだん本気でエレンが欲しくなります。というところで「4」は終わっていましたね▼娘の監護権をめぐって息子が祖母であるパティを訴え、パティに娘を養育する能力がないどころか、彼女は犯罪者だと証言させるためにたてた証人がエレンでした。エレンにすればそれこそ憎んでも憎みきれない相手がパティでしょう。恋人は殺され、自分も殺されかけ、人生をむちゃくちゃにされた。彼女は復讐の鬼となりました。エレンはパティに距離を保ちながら、弁護士として独立し、パティの名声を利用するところは利用し、最後の一撃を狙っています。エレンの仕事のすすめ方もやり方も性格さえパティ・ヒューズそのものになっています。アタマに来たときデスクの上のものを払い落とすクセまでいっしょであるところは笑います。パティはあらゆる意味で闇の部分の多い女ですが、どっこいエレンも負けなくなってきたのです。本シリーズの監督たちは、みなさん鬼のような女がたいへんお好きで、ダークサイドをあわせもち、しかもそれを力にできる、そんな女こそが待望されるにふさわしいのだと言いたいようです。本シリーズが支持されてきたのは、繰り返しますが旧来の女性像を破壊し、新しさの一例を描き尽くした具体像を社会に提出したからです▼エレンは自分を殺そうとした実行犯の男をつきとめ、パティが彼の証言を阻止しようと買収をもちかけたテープまで手にします。パティは監護権問題と別のもうひとつの訴訟でエレンと争っていましたが(まさに全面対決です)、パティ側の証人に国外逃亡(実は殺害)され、裁判を維持できないと踏んだパティは訴訟を取り下げました。しかもテレビのインタビューで敗北宣言までするのです。エレン側は勝利に湧きますがパティのやり口を知っている観客は、潔すぎる撤退になにかあるぞと思わざるをえない。案の定パティはエレン殺害未遂を闇に葬るために名を捨て、実をとったのです。もうひとりエレン殺害未遂の現場で実行犯の顔をみた人物がいました。パティの息子です。それを知った実行犯は息子を射殺します。原告が死んでしまい監護権裁判は消滅し、証人の喚問も立証も意味ない。パティは自己防衛に成功しましたが、息子の死という悲劇に見舞われます▼パティをめぐる人物のなかでエレンとこの息子は、いやな人間の最たるものでしょう。たとえ裁判の敵方であってもライバルでこそあれ、彼らほどおぞましい連中はいませんでした。彼らの生きる目標はただひとつ「仕返し」。パティの身から出たサビといえばいえるのですが、それに彼らの復讐の理由も無理ないとわかることはわかるのですが、マイナーな目的に人生を捧げることの鬱陶しさ。彼らが登場しただけで窒息しそうになる、陰々滅々の「気」はある意味最高です。ラストはおなじみ海辺の桟橋です。なにかあるとパティがそこから海を眺める場所です。トムが死んだときもパティはここにいました。エレンがきます。パティが買収しようとした証拠のテープも含め、パティが自分を殺害しようとした証拠をすべてパティに渡します。パティは「なぜわたしが訴訟をとりさげたかわかる。あなたの本質がみたかったからよ。あなたは勝つために手段を選ばなかった。立派よ」パティにすればベタ褒めなのですが、エレンはこのおよそ10年に及ぶ長い消耗戦に精も根も使い果たし、歯の浮くようなパティの褒め言葉を受け流すだけ。数年後、パティとエレンは偶然ニューヨークの街角で出会います。エレンは幼い娘の手を引いている。さりげなく挨拶してパティはリムジンに乗る。エレンが窓をノックし、ウィンドウを降ろしたパティに「ありがとう、パティ、なにもかも」そう微笑んだ…パティはそんな幻を見ます。エレンは退役軍人会の夫のもとにいく途中だった。エレンは娘に「ママはもと弁護士だったの」と話している。パティは今や最高裁判事です。そうでしょう、前作で推薦を受けたのですから。パティは法曹界の最高に上りつめ、パティ・ヒューズに勝った弁護士として将来の成功を約束されたにもかかわらず、エレンは過酷な道から降りた。どっちがいいのかどうかそんなこと知るか。どんな選択も人間次第だ。エレンを失ったパティもまた、栄光の頂点にいながら深い失望と寂しさを味わったのだ。しかし面白かったですね。絶対リピートできない役と俳優のリストにグレン・クローズのパティ・ヒューズを加えたくなりました。

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