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特集「女のわがまま」

2014年6月3日

特集「女のわがまま2」 トプカピ (1964年 コメディ映画)

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監督 ジュールス・ダッシン
出演 メリナ・メルクーリ/マクシミリアン・シェル/ピーター・ユスティノフ

悪魔もビビる達人芸 

 映画もここまでくるとヴィンテージものですね。公開が1964年。ジュールス・ダッシン監督、主役のメリナ・メルクーリ、マクシミリアン・シェル、ピーター・ユスティノフは鬼籍に入り、彼らの映画だけが不滅の光を放っている。不滅といっていいエンタメの傑作です。映画史上名高い「天井から宙吊り」のシークエンスはトム・クルーズが「ミッション・インポッシブル1」でよみがえらせましたね。当代一流の俳優陣の達者なこと。メリナ・メルクーリは金髪の美輪明宏さんみたいですし、マクシミリアン・シェルは「ニュールンベルグ裁判」でアカデミー主演男優賞を獲得した翌々年の出演。ピーター・ユスティノフは本作でアカデミー助演男優賞を取りました。舞台はトルコのイスタンブール、トプカピ宮殿とくればなにもわからないうちからぞくぞくするものがある、そんな映画です▼ワンシーン、ワンシーンがなんだか精巧な伝統工芸品みたいに目を吸いつけるのです。美貌の女泥棒エリザベス(メリナ・メルクーリ)はトプカピ宮殿のサルタンの宝剣に魅了される。宝剣に埋め込まれたエメラルドは世界最高、にわとりの卵ほどもある緑の宝石、それが、よ、4つも! さらに柄と鞘にはびっしり並んだダイヤモンドの縁取り。そのまばゆいきらめきときたら、ううう…マリリン・モンローでなくとも「ダイヤモンドは女の親友」と言いたい。エリザベスの相棒は元恋人のウィリアム(マクシミリアン・シェル)。ウィリアムはさっそくチームを編成した。録音オームや演奏人形など変わった玩具の発明狂、イギリス人のセドリック。しゃべれないが身の軽いジュリオ、気の短い金剛力のハンスだ。彼らにはちゃんと役割がある。司令塔はウィリアムだ。ウィリアムとエリザベスは観光客を装ってギリシャに行き、イスタンブールに武器を運び込むため、イギリス人ガイドのシンプソン(ピーター・ユスティノフ)を雇う。シンプソンは高級車を運転し出発したがトルコ国境の検問所で武器を発見され、テロリストに間違われてしまった。トルコ側はテロ組織検挙のためシンプソンを逆スパイとして働かせることに。目的地のホテルまで車を運転してやってきたシンプソンは、いきちがいからセドリックの運転手として雇われる羽目になった。シンプソンは彼らが泥棒の一団であることを知ってたまげるが、スパイとしての役割もはたさねばならぬ。6人の風変わりなチームは決行を前に着々準備を進めた▼博物館の厳重な警戒を破るにはどうする。床を踏めば警報が作動する。方法はたったひとつ天井から垂直に、ガラスケースの真上にたどりつく。高さ3メートル、施錠したケースを外し、かつ等身大の人形が帯びた宝剣をレプリカと取り換え、もういちどケースをかぶせ施錠し、なにごともなかったかのように宮殿を去る。悪魔でもビビる仕事である。今から半世紀前だ。コンピューターのシミュレーションもなければ武器も機材も旧型だ。彼らは派手な爆破もしない。肉体のモロ腕力のみでジュリオの宙吊りを支えるのである。外したガラスケースはどうやって空中で保ち、かつ元通りにする。夜に宮殿の壁と天井を照らすサーチライトを交わす方法は。頭脳と筋肉を絞り切る大作戦に嬉々としてチャレンジする泥棒たち。決行はトルコの国技オイルレスリング大会当日だ。彼らを一網打尽にしようと張り込む刑事らの裏をかいてひとり、ふたりとレスリングの観客席から姿を消すウィリアムら。裸の男たちの肉と肉がぶつかりあう興奮でスタジアムに湧き上がる怒声、歓声をよそに、音もなく姿を消していく。宮殿の上からのぞむボスポラス海峡、歴史を刻む帝国都市トルコの町並み、そこに建つ東西の宝物がぎっしり詰まった宮殿博物館。狙うはひとふりの剣▼あざやかにかれらはやってのける。でもダッシン監督は犯罪者の味方をしない。彼らは揃って刑務所に服役。臭いメシをくっているシーンがきっちりと出る。エリザベスも美男のウィリアムも型なしである。やっと刑期を終え明日は出所。鉄格子越しに、ウィリアムと仲間のそばににじりよったエリザベスは「仕事の話だけど」男連中は声をそろえ「ノー」。エリザベスは声をひそめ「クレムリンのロマノフの財宝よ」とささやく。場面は一転。雪降るロシアは遠景にクレムリンが見える。エリザベスが歩いてくる。シンプソンが走ってくる。向こうから手を降って鹿のように駆けてきたのはウィリアムだ。宙返りしながらジュリオが、いそいそとセドリックが、懲りない面々の仕事がまたもや始まる…「女のわがまま」を思い切り盛り上げて、鬼籍に入った名優たちの冥福を祈ろう。

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