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特集「ディーバ(大女優)」

2014年6月12日

特集「ディーバ13」メリル・ストリープ ダウト ~あるカトリック学校で~ (2008年 シリアスな映画)

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監督 ジョン・パトリック・シャンディー
出演 メリル・ストリープ/フィリップ・シーモア・ホフマン/エイミー・アダムス/ヴィオラ・デイヴィス

怪物メリル・ストリープ 

 「疑う」という一点をとりあげてかくも分厚い映画にしてしまうのは、やはり議論を文化の基礎においている国だからでしょうか。日本の繊細な〈以心伝心〉とは基本的に異なるコミュケーションであり、理解の手法だと思えます。俳優陣では校長アロイシアスにメリル・ストリープ、フリン神父にフィリップ・シーモア。彼は2014年2月に惜しくも46歳で亡くなりました。まだ可愛らしさの残るエイミー・アダムス(今が憎らしいという意味ではありません)、ワンシーンですがメリル・ストリープを向こうに回し一歩も引けをとらなかったヴィオラ・デイヴィス(「エデンより彼方に」「ナイト&デイ」)。彼女は黒人少年の母ミラー夫人を演じます▼封切りでみたときは頭カチカチの校長に(もうちょっとなんとかならんのか)と辟易したことを覚えていますが、今回見直すと全然ちがいました。彼女の「ダウト」とは信念なのです。自分でも持て余すほど強固な信念であり強靭な性格です。カトリックという男社会で、信徒に人気のある神父が裏でやってきたことを彼女は許せない。糾弾するが神父は君のいうことなど行き過ぎてクレージーだ、女の思い込みにすぎないと簡単に退けようとする。どっこいそんなことで引っ込むメリル、いや校長ではない。二人の名優の白熱バトルだけでも見る値打ちのある映画です。登場人物が少なく筋書きはシンプルなのに、見終わって疲れを覚えるほどの完成度は、主役級四人の快演にありますが、迫力においてはメリルの圧勝です。うまいとかヘタとかいう域ではない、メリル・ストリープとは怪物なのです。本作のアロイシアス校長とか、最近ではサッチャー首相とかに彼女のエキセントリックな「魔」がよく現れていたと思えます▼ニューヨークのブロンクスにあるカトリック学校の校長アロイシアスは信仰心に厚く道徳に厳格だ。新人教師ジェイムズ(エイミー・アダムス)に物事は疑惑の目でみなければならないと教える。司祭のフリン神父は現代的な開かれた教会をめざすべきだという持論で、旧来の道徳観の持ち主である校長と対立していた。学校にただ一人の黒人であり、家も裕福ではなく母親が苦労している家庭で一生懸命勉強しようとしているドナルド・ミラーという黒人少年がいた。ドナルドの夢が神父になることだときいたフリン神父はドナルドを可愛がり、なにかにつけて励ます。ミラー夫人は息子をやさしく力づけてくれる神父を信頼しありがたく思っていた。礼拝の従者役に選ばれたドナルドは、ある日酒臭い息をしていた。神父とドナルドは特別な関係にあるのではと恐れたジェイムズはそれを校長に報告する。校長はドナルドの母親に会い、神父と少年の関係に妖しいものがあると告げるが、母親はそんなことなど人間ならありがちなことだ、けしからんことでも悪いことでもない、あと6カ月で息子は卒業である、そっとしておいてくれ、息子の数少ない味方である神父を、自分はとやかくいうつもりはないと断言する。言い忘れたが本作はケネディ暗殺の年が舞台である。まだまだ人種差別は根強く、貧しい黒人社会の悲憤と実感を母親は体現している。校長はフリン神父を校長室に呼びさらに真相をただす。フリンは教壇のワインを盗み飲みした生徒をかばっただけだと突っぱね、証拠もなく自分に反発する校長をただではおかぬと息巻く。校長は(あら、そう)という感じでフリンが転任をくりかえしていること、前職の教会のシスターに確認したことによれば、彼には一部の生徒と特殊な関係をもつ性的嗜好がある、その証言だけで充分な証拠だと指摘、出て行くのはお前のほうだと辞任を迫った▼シーンは一転、フリン神父が「名残惜しいがこれも神のご意志」と転任の挨拶をしている。信徒生徒に人気のあった神父である。ジェイムズは落ち葉の散る校庭のベンチにひとり腰掛けている校長をみかける。神父をとうとう追い出したのですね、といいたそうなジェイムズに校長は意外なことを告げる。神父は栄転である、左遷ではない、これでまたうまくいったと思って彼は行く先々で同じ所業を繰り返すであろう…自分がフリン神父につきつけたシスターの証言はハッタリだったが正しいに決まっている、だから彼は足元の明るいうちにトンズラしたのだ、品の悪い言い方であるが校長の真意はそんなところだ。そのくせ疑いに固まっている自分の業に嫌気がさしたように、ジェイムズがあわれを覚えて抱きしめるほどわなわなと震える。放っといたって大丈夫だと思いますけどね。ジョン・パトリック・シャンリイ監督は「月の輝く夜に」(1987)でアカデミー脚色賞を受賞した人。本作はアカデミー主演女優賞(メリル・ストリープ)、助演男優賞(フィリップ・シーモア・ホフマン)、助演女優賞(エイミー・アダムス)、脚色賞(シャンリイ監督)にノミネートされました。

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