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特集「ディーバ(大女優)」

2014年6月14日

特集「ディーバ13」メリル・ストリープ 判決前夜/ビフォア・アンド・アフター (1995年 家族映画)

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監督 バーベット・シュローダー

家族の肖像 

 雪の上に置き去りにされていた少女の惨殺死体。そこはアメリカ東部、ニューハンプシャーの田舎町だ。容疑者は少女のボーイフレンド、ジェイコブ(エドワード・ファーロング)。父は前衛彫刻家ベン(リーアム・ニーソン)、母は小児科医キャロリン(メリル・ストリープ)。妹のジュディス。絵に描いたようだった幸福な一家に襲いかかった息子の犯罪。それに対応する「家族の肖像」がこの映画です。ぶっちゃけて言うと平々坦々として盛り上がりがない。だからつまらないかというとそうじゃないところがややこしい。ややこしいというのがピッタリだな。気の短い観客だと「それでどうせいっちゅうねん。えッ」となるね。平凡な構成のわりにはけっこうクドクドしている粘着質な運びです。そこがやっぱりバーベット・シュローダー監督。手綱を放さずあやつっていきます。思えば「ルームメイト」(1992=ブリジット・フォンダ)や「運命の逆転」(1990=グレン・クローズ)や、「陰獣」(2008=ブノワ・マジメル)もありました。狭い範囲に舞台を限定し、少ない登場人物をじっとり描き込むのが得意な監督ですから、これはもう覚悟して、短気を起こさずつきあいましょう▼「家族の肖像」に戻ります。父親ベンはくず鉄をつないだり曲げたりした作品を物置に、もといアトリエに並べている彫刻家。パパは息子が犯人かもしれないと警官にきき、大急ぎで彼の使った車を調べると、べっとり血のついた手袋やジャッキが。すわ。パパはたちまちそれらを処分します。あとでママから「証拠品を隠滅してどうするの。犯人がさわったかもしれないじゃないの」と追求され(当然よね)ヘドモドしますが「家族を守らなければ」と迫力で回答。この映画の頃からリーアムの「親父力」はダントツですな▼激情家のパパに比べ、お医者さまのママは冷静な判断を失わない。我が子がかわいいのはいっしょなのですが、パパにまかせておいたら暴走するにちがいないと踏んでいる。やっぱり。パパは真実をうちあけるより、陪審員に心証を悪くさせる情報は隠しておいたほうが、いや隠すのではなく「本当のことを言わないだけだ」とか屁理屈コネ出すし、ママは「真実をいうべきだわ。殺人ではなく事故よ。陪審員にはわかってもらえるわ」としごくまっとうな主張をするのだがパパは受け入れない。保釈金大枚払って息子は家に帰ってきたが、村の住人は一家を「人殺し」と決めつけ、ママは病院をクビになり、妹は学校でつまはじき。唯一被害を受けないのは自由業のパパというところも、どっか彼の、情熱的ではあるが性本来、浮きがちな性格を示しているようでおもしろい▼パパが勝手に作戦をたててしまうのでママはとうとう頭にくる。これ以上やらせていたら収まるべき事態も悪化する。ならば、とママは腹をくくって事情聴取で真実をばらしちゃう。弁護士もパパも仰天。パパは自分のことは棚にあげ「なんてことを」絶句。息子は息子で「隠し事をしているのは辛い、苦しい」とストレスに耐え切れず警察に出頭する。自分は監獄に入ることになろうとも、息子を守るためにすべてを隠蔽しようとしたパパの苦労はなんだったのだと思うが、この息子よくいえば繊細、そうでない言い方をすれば線が細すぎ、キョーレツなパパやママの影みたいである。でも両親がいちばん危惧した「少女のお腹のなかの子はだれ」には、ちゃんと避妊はしていたと答え親は(ホッ)でもどこか感心していましたけど▼この息子になったエドワードにご記憶ありません? ジェームズ・キャメロンのかの「ターミネーター2」に抜擢された主役の少年です。キャメロンが第一作を超える映画にしてやると豪語し、その通りにした快作。シュワちゃんのターミネーターに「ああしろ、こうしろ」とエラソーに命令していたハンサムな少年がいたでしょ。あの子よ。非常に彫りの深い大人顔です。彼はいま36歳ですがドラッグとアルコールで逮捕・入退院を繰り返し、暴力沙汰でせっかく得た主役を降ろされるなど、困難がつきまとっている。この映画の彼の顔って、あんまり整いすぎて、年齢に不似合いな憂いすらただよう。顔ってどこか破調のあるほうが自然ですね。本作のパパのあぐらをかいた鼻を、ママのとんがったキツネ目をみてごらん。活力にあふれているよね。

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