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特集「ディーバ(大女優)」

2014年6月18日

特集「ディーバ13」メリル・ストリープ シー・デビル (1989年 コメディ映画)

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監督 スーザン・シーデルマン
出演 メリル・ストリープ/ロザンヌ・バー/リンダ・ハント

メリル・ストリープの変身

 ラブロマンス小説の女王メアリ(メリル・ストリープ)に夫を取られたルース(ロザンヌ・バー)は怨嗟の言葉を吐く。「わたしは体重101キロ。相手は若くてきれいで金持ちで海辺の御殿に住む。メアリ、あんたの御殿など海に沈むといい。陶器のような肌はザラザラ、金髪はごっそりと抜け落ちろ。でも今はただ様子を見守り、時を待つわ。家の仕事にせっせと励み、女を磨く」。夫のボブは実家の両親兄弟が遊びに来るというので、おもてなしをルースにいいつけるが、彼女のだした皿には死んだネズミ(「なにがジェーンに起こったか」へのオマージュか)。ボブは「お前は歩く疫病神だ。結婚したのが間違いだった。お前は悪妻で、愚母で料理オンチだ。鏡を見たことあるか。女じゃない。女悪魔(シー・デビル)だ」罵詈雑言を浴びるルースの頬を涙がつたう▼ルースの反撃開始。メアリの母が預けられている高額介護施設に派遣として入ったルースは、実母に近づきメアリの情報を聞き出す。母は娘の小説を「この本はバカ丸出しよ。あの子がやさしい娘だって。オニ女さ。私を施設に入れ、自分は御殿暮らし。だれとでもヤって16歳で孕んで、養子に出す以外なかった。名門の出? ユダヤ人の貧乏人さ」。ルースは鎮静剤を強壮剤に詰め替え、ベッドで眠らされていた老人たちは一挙に活性化する。彼らは庭でサッカーし歌を歌い、明るく活動的になった。施設に働くフーパー(リンダ・ハント)と仲良くなったルースは、フーパーが貯めた5万ドルを元手に、施設をやめ、ふたりで人材派遣会社を立ち上げる。元気になって施設をでたメアリの母は娘の御殿にやってきた。いい忘れたがルースは自宅に火を放ち、住まいのなくなった子供たちをメアリの家に連れてきて、自分は施設に住み込んでいたのだ。メアリは闖入してきた「家族」に混乱。家事雑用の嵐で小説を書くどころではなく、完全なスランプ状態に陥った。ルースは夫の事務所にとびきりの美人秘書を派遣し、女好きの夫はたちまちメアリから秘書に鞍替え。映画はルースのナレーションが挿入される。「あわれメアリ。初めは熱く燃えた男の愛も、愛人が妻のように振る舞うと冷める」。メアリの脳は完全に拒絶反応を起こし、本は全然売れなくなった。ルースは秘書から夫が顧客の金をピンハネし、スイスの銀行にプールしている秘密を聞き出し、警察に告発する。夫は刑務所へ、メアリは海辺の家を棄てた。そして数年。メアリはロマンス小説をやめドキュメント作家として再起、夫は塀の中で更生中。ルースは公私とも順調で人生満帆。ある日メアリのサイン会にルースが顔をみせた。メアリは自著に「ルースへ」とサインして手渡す▼いかにもブス丸出しのメークで登場したルースが、復讐が進むうち、服も体型もサッパリしてきれいになっていく。逆に白毫の光に包まれていたメアリがくすんでくたびれた落ち目の中年女に。ルースのマンガティックで過激な行動が、ひとつも陰々滅々としていないところがブラックな笑いをまきおこす。名脇役のリンダ・ハントがルースの周りをハツカネズミみたいに歩き回りながら映画に凹凸をつけます。彼女は身長145センチ。小柄な体で強烈な個性を放ち、1982年「危険な年」で男性カメラマンを演じ、主演のシガニー・ウィーバーやメル・ギブソンを完全に食い、その年のアカデミー助演女優賞をさらいました。スーザン・シーデルマン監督は訳ありの女たちが陰影を刻みながら立ち直り、自分を取り戻す、そんな映画が好きなようです。しかしこの映画がもたらしたいちばん大きな成果は、30代にシリアスな社会派映画でつぎつぎ映画賞を総なめにし、ハリウッド女優のトップに立ったものの、以後の展開が見えにくくなっていたメリル・ストリープに、コメディという「黄金の畑」にクワをいれさせたことでしょう。彼女は本作以後「永久に美しく」「ミュージック・オブ・ハート」「プラダを着た悪魔」「マンマ・ミーア」「ジュリー&ジュリア」「恋するベーカリー」そして最新作「31年目の夫婦げんか」と、それまでのシリアスなだけでないコミカルな役を、自家薬籠中としていきます。彼女をどこにも死角のない、ナンバー1女優としたのは、劇中めった打ちにされたメアリという「やられ役」であったといっていい。本作はメリル・ストリープという女優のイメージにおいても力量においても、飛躍させた記念すべき映画です。

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