女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「ディーバ(大女優)」

2014年6月21日

特集「ディーバ13」メリル・ストリープ 31年目の夫婦げんか (2012年 コメディ映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ディヴィッド・フランケル
出演 メリル・ストリープ/トミー・リー・ジョーンズ/エリザベス・シュー

最高だったセックス 

 「家があるだけで他にはなんの絆もないみたい。わたしたち部屋は別々だけど、二人の労働者が二段ベッドで寝ているのと変わらない。彼はわたしによく触ったけど、今は触らない。話もしません。わたしも自分の気持ちを話すことはなくなりました」ヒロインのケイ(メリル・ストリープ)はそうバーナード医師に打ち明ける。結婚31年目。ふたりはここ5年間セックスレス。会話も関心もなくなった現状改善を願うケイに対し夫は無関心だ。ケイは夫アーノルドに無断でカップル集中カウンセリングに申し込み、夫を連れて受けにきたのだ。しぶしぶ来たものの「結婚生活でできた傷を除く」ための立ち入った質問に夫は逆上、医師の前にもかかわらず「カウンセリングなんか馬鹿げている、詐欺同様だ、おれは帰る」と噴火する▼夫の無理解に切れてしまったケイにアーノルドも歩み寄る。この映画ああだ、こうだと言ったところで結末は予定調和以外のなにものでもない、と思わせる要素は随所にあるのですがそこに観客をはまらせないのがやっぱりこの人、メリル・ストリープ。医師の質問は微に入り細を穿って、回答にためらうものばかりです。たとえば「セックスは好きですか。どんなセックスがよかったですか。楽しかったことは。オーガズムを感じましたか。オナニーは」最後の問いにケイは「しません。あるときから夫やセックスのことを考えるのがいやになりました」「どんなことを想像しますか」「もう一度結婚の誓いを交わしたいのです」「性的な想像は。今までしたことのないセックスを想像したりはしませんか」「いいえ」質問に何度も割って入り、カウンセリングを中断させようとするアーノルドに医師は「ケイに聞いているのです」きっぱり退ける。ホテルに戻ってアーノルドは「なぜここへ来た」と今さらのように聞く。ケイは「人は幸せを求めるものでしょ。結婚したら、子供ができたら、子供たちが独立したら…いつもなにかを楽しみに生きているものよ。ある日その楽しみがもうないのに気づく。わたし今はまだこのまま下り坂になるのはいやだったの。でも選択肢はもう残っていないのかも」▼翌日もカウンセリングは続く。医師はアーノルドがカウンセリングに怒る原因を尋ねる。「言わないことを言ってしまってとりかえしがつかなくなるからだ」「どんなことです」「妻はオレになんでも決めさせ、気にいらんと黙りこむ」「クリスマスの贈り物が気に入らなかったの。湯沸かしだとかカップのセットだとか」「欲しいといっていたじゃないか」「あなたがチップス食べると息が臭いわ。あなたの愛撫も嫌いよ。急かされているみたいで気持ちよくない。キスもしない。彼はいつも目をつぶるのです。目的はわたしではなくアレよ」「アレで悪いか。オレだってしたがらない相手とするのは楽しくなかった、でも一度も文句は言わなかった」「わたしは愛が欲しかったの、セックスでなく」「いやがったのはそっちだろう」お互いの嗜好のちがいが露わになり、同時にそれについてなにも話し合っていなかったこと、お互いが喜ぶことをしようと努力もなにもしなくなっていたことがわかってくる。やりとりを黙ってきいていた医師は「最高だったセックスを話してください」とたのむ。ふたりはしばらく黙りこんでいたがアーノルドが「ひとつ思い出した」…▼妻の気持ちを汲んだアーノルドはレストランに夕食を予約した。こざっぱりしたしゃれた店だ。この店を愛する予約客で席は満席。むりやりキャンセル待ちに割り込んだアーノルドは、はしゃぐ妻を見て自分まで機嫌がよくなる。そして耳元でささやくには「上に部屋をとってある。このまま上がればいいのだよ」。監督はでも手綱をひきしめ、観客の先走りを許さない。赤々もえる暖炉のそばで「最高だったセックス」のときのように床に横たわったふたりは、ぐんぐん盛り上がる。いよいよというときケイが言う「わたしを見て」。アーノルドは目をつぶっていたのだ。「わたしを見て」みたとたんしぼんじゃうのだ。翌日ケイが医師に報告している「うそだったのです。わたしが魅力的だなんて。わたしをみたその瞬間にやめたわ」医師は我慢強く言う。「最高の結婚もすさんでしまうことはある。あきらめないで。ここでやったことが必ず役立ちます」再び変化のない朝が訪れた。出勤するアーノルドにベーコンと目玉焼きの朝食。新聞を読みながら食べる夫。「じゃね」「いってらっしゃい」ふだん通りアーノルドは玄関に向かい、ふとたちどまった。もどってきた夫に「?」というケイを抱き寄せ、なんとッ…▼ヒューマンドラマというか、知的なコメディというか、いつのまにかわずかな隙間が、びっくりするような亀裂になっていた。妻は修復したいと思うが夫にはその気がない。なぜか。夫は外で対人関係もあれば仕事も交渉事も友人関係もあり、変化がついてまわるのにケイは家のなかで家事と育児におわれてきて、やっと卒業したと思ったら今まで自分の世界だった夫との間に巨大な空隙。外で憂さ晴らしもできる人間関係もない。虚しくもなるわ。アメリカでカウンセリングが「常備薬」みたいになっているわけがわかるわ。ケイが夫の無神経さにアタマにきて町をほっつき歩き、ふと入った酒場のママにエリザベス・シューが扮しています。とても感じのいい女優さん。今年50歳。きれいな人でしてね、初めての酒場に足がすくんでいるケイに「どうぞ、だれもこわい人なんていないわ」と気さくにカウンターの中から声をかける。ここだけで「なんでこんな田舎に」と思うほど彼女の整った顔立ちが目立ちます。「リービング・ラズベガス」でアカデミー主演女優賞候補に。ハーバード大学在学中、女優をめざして勉学を中断、15年後大学にもどり学位を取得しました。トミー・リー・ジョーンズがハーバード、メリル・ストリープがイェール、そしてエリザベスのハーバードと本作の出演者はアイビーの秀才ぞろいです。

Pocket
LINEで送る