女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

シネマ365日

2014年6月22日

エアポート’75 (1975年 アクション映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ジャック・スマイト
出演 チャールトン・ヘストン/カレン・ブラック/ジョージ・ケネディ/グロリア・スワンソン

最高の「ベイビー」

 38年前の映画だ。300万ドルの制作費で4700万ドル稼いだ映画だ。チャールトン・ヘストンが51歳。カレン・ブラックが35歳。ジョージ・ケネディが49歳。グロリア・スワンソンが75歳だった。ケネディを除く三人がはや鬼籍に入った。カレン・ブラックは2013年8月8日、74歳だった。この映画は確かにパニック映画のさきがけとか、空港アクションものの傑作とか、4700万ドルにふさわしいほめ方がいまだにされるのだけど、その中に絶対このシーンが含まれている…▼満員の乗客を乗せたコロンビア航空409ボーイング機がダレス国際空港を離陸、ロスへ向かう。客室乗務員のなかにナンシー(カレン・ブラック)がいる。乗客には映画女優のスワンソン(本人)、腎臓移植を控えている少女ジャニス(リンダ・ブレア=「エクソシスト」で悪魔に取り憑かれた少女を演じた)、コロンビア航空副社長夫人と息子らがいた。409便は濃霧のためソルトレイク・シティに臨時着陸することになった。同じくソルトレイクに向かっていたセスナの操縦士が操縦中心臓発作を起こし、409便の操縦室に激突した。副操縦士は機外に放出され、航空機関士は即死、機長は目をやられ重傷、ナンシーは機長の指示で自動操縦に切り替えたものの、409便は高度を維持できず降下。行く手にはけわしい山脈が待っていた▼事態を知った副社長パトローニ(ジョージ・ケネディ)は妻と息子が、409便の操縦教官マードック(チャールトン・ヘストン)は恋人ナンシーが同機に搭乗していた。乗客は120人。救出方法はただひとつ「操縦席に移乗し機体を着陸させる」しかない。空軍のベテラン操縦士が志願した。軍用ヘリから宙吊りされながら409便のコックピットに乗り移るのだ。荒唐無稽だがこれしかないというのだから仕方ない。管制塔でああだ、こうだ、こうだ、ああだ、言っている最中にテレビの報道車は押し寄せるわ、レポーターはかけつけるわ、空港はごった返した。機中では腎臓移植のタイムリミットが迫っている少女、飲んだくれのおじさんグループ、自叙伝口述中のスワンソンは「死んだほうが本はよく売れるわ」と秘書に耳打ちする。男たちは死んじゃうし、機長は重傷だし、いったいだれが409便を操縦するのだ。主任客室乗務員が指示を受けながら操作に当たっていますと副社長夫人が現状説明に当たると「女が!」おじさんたちは真っ青になる▼ナンシーもたまったものではない。マードックも副社長も空軍機も出発し409便に近づいている。無線でああしろ、こうしろ、といちいち指示は入るが機体の揺れは激しくなる。だれが考えても当たり前だろ。生まれて初めて操縦席に座ったナンシーになにができるのだ。それに機長はいくら重傷とはいえ口はきけるのだから、客席に毛布でくるまっていないで「操縦席に連れていけ」と言うのが役目だと思うのよね。おまけに無線すら途絶えた。孤立無援のナンシーのところへ、わからないなりに力になりにくるのは同僚や副社長夫人や女ばかりである。のぞきにきたおじさんの一人はポッカリ空いた操縦席の穴をみて「こりゃだめだ」と逃げ帰り騒ぎを大きくする始末。機体は高度を下げけわしい山脈地帯に入った。空軍のパイロットは移乗に失敗した。409便は山間の隙間を縫うような高度にまで低空している。山あいを飛ぶ409便の銀色の機体が感情を拒否した無機質な美しさを放つ。ナンシーの目の前に巨大な山腹が迫った。このときである。自動操縦をオフにしたナンシーが操縦桿を握るのだ。ゆっくりと、手応えを確かめつつ蒼い冷たい操縦桿を押す。わずかに機首が上がる。これでいいらしい。もう少し。見開いたナンシーの目の前に山肌が、その山肌すれすれに409便は飛んだ。救援機は409便が上昇しているのを見る。「ナンシーだ。ナンシーが自分で操縦しているのだ」と副社長が叫ぶ。マードックがうめくように言う。「のぼれ、ベイビー、のぼれ」▼あるシーンのある一言が忘れられない、そんな場面が映画にはある。本作の「ベイビー」はまぎれもないそのひとつだろう。ありふれた粗筋と信じられないような救出作戦に、最後まで横を向かせなかったことがすばらしい。そのなかでも「どこが」と聞かれたら、映画のなかで発されたベイビーという言葉のなかで最高の「ベイビー」だったからと言いたい。

Pocket
LINEで送る