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シネマ365日

2014年6月26日

キャット・ピープルの呪い (1944年 ホラー映画)

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監督 カンザー・∨・フリッチ/ロバート・ワイズ
出演 シモーヌ・シモン/ケント・スミス/ジェーン・ランドルフ/アン・カーター

ロバート・ワイズの監督デビュー作 

 「キャット・ピープル」の後日譚。猫族の末裔であり黒豹に変身したイレーヌ(シモーヌ・シモン)が絶望のあまり自殺して数年後、元夫のオリバー(ケント・スミス)は恋仲だったアリス(ジェーン・ランドルフ)と結婚し、一人娘エミリー(アン・カーター)を得ました。エミリーは空想好きの小学生。父オリバーはもちろんエミリーは自分とアリスとの子であるものの、どこかでイレーヌが乗り移っていないか心配で仕方ない。エミリーの空想癖が、猫族は興奮すると黒豹になるというでっちあげの空想のあまり(オリバーはそう信じている)死んでしまったイレーヌに似ていると思う。アリスは夫の杞憂であると一笑に付し、娘の味方をするが、父はなにかにつけ娘が真実を話していないと叱りつける。そんなとき近所でも評判のよくない、荒れ果てた屋敷の住人ファレンおばあさんからエミリーは指輪をもらう。黒人の召使のエドワードは指輪には願い事がかなうという言い伝えがあると教える。エミリーは「友達がほしい」と願いをかける▼そこで友達として現れるのがイレーヌです。イレーヌはやさしく話し相手になり、エミリーはすっかり明るい子になる。イレーヌは自分がオリバー一家に決して歓迎されない存在だと知っているから「わたしのことはパパやママにいっちゃだめよ」と口止めする。イレーヌはエミリーのさびしさが生み出したアルター・エゴですね。エミリーは「友達ができた」と喜んでいたが、ある日父の引き出しに入っていた写真をみてうっかり「この人が友達なの」と教えてしまう。父は仰天、イレーヌの呪いだと思い込む。呪いどころかイレーヌは影になり日向になってエミリーの孤独を癒やすのだ。自分の空想を「うそつき」だと父親に決めつけられてばかりの少女は、気持ちを受け入れてくれる相手がほしいのである。学校のキャラハン先生は「友達のいない子は空想で友達をつくることがある」と父親にいうが、パパは受け付けない。このかたくななばかりの拒否は、イレーヌの死がトラウマになっているというより、イレーヌを裏切ってアリスに乗り換えた後ろめたさよね。エミリーこそいいトバッチリだわ。それに比べ、自分を棄てた男の娘をとり殺すどころか、精神的成長に手をかしてやるイレーヌこそ「呪い」どころか霊界からきた名カウンセラーではないか▼ファレンおばあちゃんは元女優。ちょっと認知症気味で、自分の面倒をみている娘のバーバラが、娘をかたる詐欺師だと信じよせつけず、他人の娘であるエミリーばかり可愛がる。とうとうバーバラはアタマにきて「あの娘が今度来たら殺してやる」と言う。いくらなんでもいい年の中年の女性が、子供相手にそこまで嫉妬するのは大げさですが、イレーヌの出没だけではストーリーに味付けがなかったのでしょう、能面のような陰々滅々とした娘バーバラをエリザベス・ラッセルが好演しています。イレーヌはエミリーが元気になると別れを告げます。行っちゃいやだとエミリーはイレーヌを追いかけて雪のつもった森へ。大騒動のすえ、ファレンおばあちゃんは心臓の発作で亡くなり、バーバラはエミリーを殺すつもりが「あなたはわたしの友達よ」と抱きつかれ殺意が消え(これもイレーヌが自分の姿をバーバラになげかけ、エミリーはイレーヌだと思ってバーバラに抱きついたのである)パパとママはエミリーを探し当て、パパは反省しエミリーのいうことを信じることにしました▼ハッキリ言ってしょうもない筋書きを、メリハリつけたのは奇をてらわないロバート・ワイズが白黒の画面を印象的な陰影で引き締めているからです。彼は途中降板となったフリッチ監督を継いで登板し、スケジュールも予算もかなり厳しい状況をてきぱき処理しただけでなく、ヘタ打つとこどもだましになるストーリーに親の猜疑や子供の孤独感や、認知症が進み普通でなくなった母親を介護する娘のやりきれなさなど、社会的な問題を加え大人の目に耐える映画に仕立て直しました。編集の手腕や光と影を多用した撮影手法は「市民ケーン」のオーソン・ウェルズのもとで習得したといわれますが、もちろんそれはあるでしょうが、後年の「ウェスト・サイド物語」や「サウンド・オブ・ミュージック」あるいは「アンドロメダ」「砲艦サン・パブロ」などをみると、この監督生来のセンスだと思います。

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