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特集「美しい虚無-妄想映画の魅力」

2014年7月6日

特集 美しい虚無=妄想映画の魅力 クローン (2001年 サスペンス映画)

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監督 ゲイリー・フレンダー
出演 ゲイリー・シニーズ/マデリーン・ストウ

とってもよかったわ

 ゲイリー・シニーズとマデリーン・ストウという組み合わせです。ゲイリーは地味だけどとてもテイストのいい人だと思います。このごろはテレビの「CSI:ニューヨーク」の主人公のほうが有名になったかもしれませんが。彼が監督した作品に「二十日鼠と人間」とか「マイルズ・フロム・ホーム」があります。後者ではリチャード・ギアが若い農夫を演じ、カンヌ国際映画祭パルム・ドール賞候補となった佳品です。どっちかというと脇役の多いゲイリーが本作ではバリバリの主演。彼の異相といっていい顔とたっぷりつきあえます。一部の映画人にはしっかり認められているとはいえ、彼が才能のわりにもてはやされないのは、たぶんあの鋭すぎる顔のせいでしょうね。決してブ男ではないのに、エイリアンふうだというだけでソンをしている。眉毛が薄いのも哺乳類というより爬虫類に近い印象を与える。鼻はとんがっているし、顎は骨ばって、唇をひき結ぶと見ようによっては酷薄な感じがする。でも本人は学生時代に結婚した奥さんとズーッといっしょ。平和な家庭生活を守る夫であり、聞く限り浮いた話しもありません。性格と同じく体格も目立つ身長でも体重でもないですが、この映画で見る裸のように、よくバランスがとれ筋肉を維持しています。このとき46歳ですから老けこむ年ではないとはいえ、若い時の体型を保つには注意深い日々のトレーニングが欠かせなかったはずです▼時代は未来。異星の侵略と闘う地球防衛局ESAの科学者スペンサーがゲイリー・シニーズ。彼は同局で天才と称される武器開発技術者だ。その妻であり防衛軍病院の医師マヤがマデリーン・ストウ。ある日スペンサーは出勤すると突然保安局の責任者ハサウェイに逮捕される。理由はスペンサーが宇宙人によってつくられたクローン人間で、体内にはESAの長官暗殺を目的とした爆弾が仕掛けられているというのだ。敵のクローン技術は精巧緻密で、性格外見などはもちろん記憶や思考回路までクローンする。スペンサーは自分がオリジナルの人間であり、体内に爆弾など持っていないことを証明しようと、妻が勤務する病院の検査施設に接近する▼ハサウェイの執拗な追跡をふりはらいながら、スペンサーは今まで自分が足を踏み入れたこともなかったスラム街に逃げこむ。そこでは充分な医療も受けられず医薬品も満足になく、難病で苦しむ多くの人とその家族がひしめいていた。スラムの住人たちはスペンサーをつきだして賞金を得ようとするが、スペンサーは自分を病院に連れて行けば、治療に有効な医薬品を手に入れることができると交換条件をだす。難病の妻を持つ黒人の青年が協力する。ハサウェイというのがやり手の役人でしてね、宇宙人狩りを冷酷なまでに遂行する。彼の誤認逮捕によって殺された地球人は10人。ゆきすぎではないかと長官に指摘されると、10人の犠牲のおかげで1万人が助かっているのだと反論する。彼が蛇のようにスペンサーを追い、妻のマヤを病院に訪ねる。マヤは「夫がクローンだというが、いったいいつ夫はクローンと入れ替わったのか、睡眠中か、仕事中か、食事中か」という質問に答えられない。あなたは確証のないことで夫を疑っているのかとハサウェイは追い返される。マデリーン・ストウが凛々しくてカッコいい▼いたるところで襲撃にあいながらとうとうスペンサーは検査室に入る。そこで輪切りになって映し出される映像のどこにも爆弾など仕込まれていなかった。多くの人種が同居するアメリカでは、アイデンティティとは日本人が考えるより以上に複雑で重要だ。アメリカは戸籍法がないから、何処に住む某というIDは絶えず要求される。この映画でも主人公はアイデンティティにこだわるわけです。ハサウェイはスペンサーを追い詰め、彼が脱出した検査室で検査のデータを見る。どこからみても人間だ。ここまでやりぬくとは「なんという根性だ。将軍にさえなれる男だ」とハサウェイは腹のなかでうめく。しかしクライマックスはこのあとです。墜落した宇宙船を探し出せばそこには宇宙人の残骸があり、真相が究明できるとスペンサーは森に落ちた墜落現場にマヤを同行してたどりつく。ハサウェイも追ってきた。彼は「我々が間違っていた、君はクローンではなかった」と繰り返し呼びかける。スペンサーが黒焦げになった宇宙船のドアを破ろうとするとハサウェイは声を限りに叫ぶ「やめろ、それを開けるのはやめろ、中を見てはいけない」。幸福だった夫婦につきつけられた残酷な現実。これまでの人生は何だった。自分はだれだった。二重、三重にたたみかけるラストのどんでん返し。最後まで緊張感のあるいい映画でした。

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