女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「美しい虚無-妄想映画の魅力」

2014年7月9日

特集 美しい虚無=妄想映画の魅力 ドット・ジ・アイ (2003年 サスペンス映画)

Pocket
LINEで送る

監督 マシュー・パークヒル
出演 ガエル・ガルシア・ベルナル/ナタリア・ベルベケ/ジェームズ・ダーシー

よくできているのに熱狂できない映画 

 みごとなどんでん返しというべきなのだろうけど、ほとんど主人公の妄想に近いわ。たぶんね…なんて煮え切らないほめかたになってしまうのは、映画の作り方としては納得しても、感動できたかというとそうでもないのよね。これとよく似た感じを「ワイルド・シングス」でも持ったわ。いい意味で観客は裏切られる連続なのだけどしまいに「またかよ。わかった、わかった、もうそれくらいにして」と言いたくなってしまう。この映画も前半のロマンス編はそれなりにじっくり描き込んであり、素直にみておれる。それが後半の謎解きというか、監督がいちばん観客を罠にかけたかったであろう中心部に近づくにつれ、くどくどとしつこくなって白け、どうでもよくなってくる。のっけから期待はずれみたいなこと書いたけど、だから駄作かというとそうじゃないのよ。そこがちょっと面倒な映画なのだわ▼ロンドンで暮らすスペイン人のカルメン(ナタリア・ベルベケ)は、恋人のバーナビー(ジェームズ・ダーシー)からプロポーズされた。知り合って半年。君といる幸せを失いたくないと彼はひざまずいて求婚しカルメンはOK。友人たちとヘン・パーティ(独身最後のパーティ)をとあるレストランで開く。女たちは全員黒のタキシードにネクタイ、つけひげまでつけて列席。そこへ店の主人がパーティのルールにのっとってその場にいる男性をひとり選びキスしてほしいと頼む。カルメンが選んだのはキット(ガエル・ガルシア・ベルナル)だ。このへんでカンのいい人は(やらせか)ピンとくるでしょ。ほかにろくな男性客がいなかったとはいえ(それも計算のうち。これ以上は言わないけど)キットときたら薄汚いダブダブのTシャツにチノパン、あとの友達ふたりも何屋か仕事の見当もつかないプータロー同様の身なり。みるからに頭空っぽの風情だ。このバカ友のひとりがトム・ハーディよ。まったく。当時トムは26歳。この7年後になにあろう「インセプション」の夢の偽装師イームスを、さらにその2年後、男の中の男ともいうべき主人公を「欲望のヴァージニア」で演じます。それを思うと本作の役の軽さって驚愕ものね▼しかしまあキットとカルメンははばかることなく熱烈なキスを交わす。まだやってンのと思うくらい長い。やっと終わったカルメンは、あまりのよさにキットが運命の男だと思い込む。こういうところなのね、本作にのめりこめない理由のひとつは。あまりにもこじつけが目立つのよ。あんなプータローのキスがいくらよかったからって金持ちでハンサムでやさしい、人も羨む婚約者忘れて、ふらふらっとなるかよ。ま、なったから仕方ないか。バーナビーのジェームズ・ダーシーだけど「ヒッチコック」でアンソニー・パーキンスを演じました。長身で繊細で、感受性の強いナイーブな青年役がいかにも似合います。彼はカルメンがキス事件以後キットに引き込まれているのがよくわかる。結婚式は1週間後だ。君には迷いがありそうだから自分の心をしっかりみきわめる時間をとろう、結婚式の土曜日まで君はひとりで過ごして自分をみつめてくれ、なんてバーナビーは言います。カルメンとキットはますます接近。結婚式の当日不安げに教会の玄関で新婦を待つバーナビー。彼女は来るのか。おお、先に来ていたじゃない。シーンは一転、カルメンに本心を打ち明けようと教会に走りこむキット。しかし「卒業」とはいかず新郎新婦は新居に落ち着く▼カルメンはスペインで精神障害のある暴力男に塩酸をかけられた、腕に火傷のあとがある。自分をストーカーしている気配をいつも感じ、おびえている。半年で職場を35回変わったという経歴の持ち主。けっこうなアバズレである。バーナビーとケンカして新居を飛び出しキットの部屋にきて、汚くて狭い散らかった薄暗い床にすわり、コップでワインを飲む。そのワインはホテルで無銭飲食のついでに盗んできたものだ。キットは片時もビデオカメラを放さないのにカルメンは不審をもつ▼もうそろそろこのへんで終わりにしたい。いつまで書いてもこの映画の人物たちに共感できそうにない。製作の基本が騙しの策略で、しかもそれが野心的なたくらみであることはよくわかるから、実際に映画をみて判断してもらうのが公平というものだと思う。主人公たちが復讐にでるのは無理ないと思うが、手持ちの隠しカメラに映っただけの、場当たりな映像をつなぎあわしただけで映画祭の新人賞ですって。いくらなんでもバカにしていない? さすがにこのたび限りはバーナビーは生き返りませんでしたね。

Pocket
LINEで送る