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特集「美しい虚無-妄想映画の魅力」

2014年7月11日

特集 美しい虚無=妄想映画の魅力 ハイド・アンド・シーク/暗闇のかくれんぼ (2005年 ホラー映画)

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監督 ジョン・ポルソン
出演 ロバート・デ・ニーロ/ダコタ・ファニング/エリザベス・シュー/エイミー・アーヴィング

「チャーリー」はあなた

 ホラー映画の欠かせないアイテムというか、イコンというのがあります。水に濡れた浴槽、子供がクレヨンで描いた絵、風にバタン、バタン鳴る窓、ひらひらと揺れるカーテン、だれもいないはずの部屋に開いているドア。セリフなしで視覚に訴える恐怖、それらがマア見事に本作には多用されていますね。それとホラーにはそれなりの「段取り」があります。恐怖をひきたたせる前段階として、平凡で幸福で健全な日常を映しておかないといけない。冒頭の母親アリソン(エイミー・アーヴィング)と、一人娘エミリー(ダコタ・ファニング)が公園で遊んでいるシーンがそれに当たります。エイミー・アーヴィングときいてピンときた方おられませんか。ホラーの傑作「キャリー」で主役のシシー・スペイセクをいじめた高校生のひとりでした。お~なつかし。もうひとつ。ホラーには「ブギーマン」が大事な役を果たす。ブギーマンとは子供たちが信じている伝説上のお化け、怪物、亡霊など。本作の「チャーリー」がそれ。魔女やヴァンパイアも形を変えたブギーマンととらえてもいいかもしれない。ドキュメンタリー手法で大ヒットした「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」もストーリーの主軸は魔女伝説でした▼製作年には無差別に、つぎの映画をあげていきます。カッコ内は主演俳優です。「シークレット・ウィンドウ」(ジョニー・デップ)、「クアドロフォニア」(オーウェン・ウィルソン)、「ファイトクラブ」(エドワード・ノートン)、「アメリカン・サイコ」(クリスチャン・ベール)、「エンゼル・ハート」(ミッキー・ローク)、「ふたりの男とひとりの女」(ジム・キャリー)、「マーニー」(ティッピ・ヘドレン)、「KーPAX 光の旅人」(ケヴィン・スペイシー)。ちょっとちがうかもしれないけど「ケイティ」(ケイティ・ホームズ)に「セックスと嘘とビデオテープ」(ジェイムズ・スペーダー)、「家」(カレン・ブラック)そしてやっぱり元祖に敬意を表して「サイコ」。これらの映画がなにかというと、みな「二重人格」もしくは「多重人格」を扱ったサイコスリラーです▼ここまで書くと本作はネタバレ同然ですね。「ホラー」の必要アイテムはこの映画にみなそろっている、俳優は一流だし、けちのつけようはないのだけど、消去法でいったら、残る登場人物はロバート・デ・ニーロとダコタ・ファニングしかいなくなるのよね。この映画にはいくつかの異なるエンドがあるらしいけど、どう考えても9歳や10歳の女の子に、成人女性を殺したあげく浴槽に浸けたり出したり、大の男の保安官に深手を負わせたり、そんな力仕事はできないでしょ。それじゃもうロバート・デ・ニーロで決まりじゃないですか。そこがちょっと物足りないのよねえ。いうなれば二重人格はどんでん返しの常套手段として使い尽くされてきた。その手法を使い、なおかつ驚愕させるタネと仕掛けはかなりの高難度が要求される。なにしろ意地悪な観客が「その気」でみると、結論ミエミエになりがちなのが二重人格ものだからね。本作のホラーのキーワードはもちろん「チャーリー」だけど彼が登場した時点で、これが「ブギーマン」だととらえた観客がいたのなら、この映画の「ホラー」は解体されたようなものよ▼最後までひっぱっていったのはロバート・デ・ニーロの狂った父親と(ラスト近くなると彼の得意中の得意である、ほんとに気色悪い顔になります)、真相がわかりながら最後まで父親を守ろうとする、出来スギの感さえあるダコタ・ファニングの快走でしょう。エイミー・アーヴィングまで出演しているしね。気にいらなかったのはエリザベス・シューがあっけなく退場すること。それも毒に薬にもならないしょうもない役で。ド派手に二階の窓からぶっ飛ぶのにたまげたわ。忍者「九の一」だってここまで空中遊泳できませんよ。彼女の理性も知性も踏みにじるような、くだらん役をエリザベスはいくら共演陣が魅力的でも引き受けるべきではなかったのだ。でも最後にピリッとさせたのはダコタ・ファニングの描いた絵(ばっちりクレヨンで)かな。女の子が大人の女性と手をつないでいるのだけど、その子の頭がふたつある。娘は自分の二重人格性に気づいているのか、父親の血を受け継いだのか、悲劇は繰り返されるのか。不気味な暗示だったけど、でもそれはまた別の話。

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