女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「美しい虚無-妄想映画の魅力」

2014年7月13日

特集 美しい虚無=妄想映画の魅力 キャリー (1976年 ホラー映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ブライアン・デ・パルマ
出演 シシー・スペイセク/ベティ・バックリー/パイパー・ローリー

想念の力

 ジャンルはなんでもいいけど、ロマンスでもミステリーでも、サスペンスでも西部劇でも、いやミュージカルでさえ、映画をいい映画足らしめる要素のひとつは破壊力だと思うのです。因果関係に多少つじつまのあわない箇所があっても、そんなことが気にならない、気にはなってもどうでもいいと思える、そんな映画ね。チマチマと重箱の隅をほじくってあそこがおかしい、ここがおかしいといいたくなる映画って、ほめるところが見当たらないからって場合が多いのよ。観客にウンともスンともいわせない暴力的なまでの力というのが、いい映画には必ずあるわね▼「キャリー」なんてその最たる作品だと思うわ。キャリー(シシー・スペイセク)というテレキネシス(念動作用=精神を集中すると物を動かせる能力)のある少女は、さえない容貌と引っ込み思案な性格。高校の級友たちはイジメまくるのに反抗ひとつしない。隅っこでウジウジ。教師でさえ活発で可愛い子ちゃんでハキハキした女の子をひいきし、キャリーが発言しても揶揄の対象にする、というけしからん連中を、例によってブライアン・デ・パルマは憎々しいタッチで紹介していく。こういう人物を描くときの彼の冴え方は、本作を撮った36歳のころから顕著だったのですね。後年「アンタッチャブル」で、ショーン・コネリーを暗殺した犯人が「どうだ、おれを逮捕してみろ、できるか、できまい」とケヴィン・コスナーにうそぶくときの嫌悪感を、すでに本作でもかきたてていますね▼ラストの炎上シーンで、観客が感じるのは、キャリーが犯罪者だとか、復讐の殺人鬼だとかいう弾劾や裁きとはおよそかけ離れていて、それどころか「やっちまえ、キャリー。こいつら全員ぶっ飛ばしてしまえ!」だと思うのです。キャリーが噴出させるのはもはや私怨ではない、人間の残酷さに対する神の鉄槌である、そんなふうにさえ見える。巻き添えくって気の毒なひとたちもいましたよ。数少ないキャリーの味方でいつも彼女をかばい、意地の悪い級友や教師たちから守ってきたコリンズ先生(ベティ・バックリー)や、キャリーとプロム(卒業パーティ)に行くことになった学園一のハンサムな人気者・トミーが、キャリーの念動力のために死んじゃうのだ。トミーは女友達にむり無理、押し付けられた形でキャリーをパーティに誘ったとはいえ、話しているうちに無垢な彼女の性格が好もしくなり、自分なんかあなたとペアになるのはもったいない、というキャリーに「ぼくらはいっしょにここにいる、それがぼくはうれしいよ」なんてやさしく言ってキャリーを涙ぐませるのに。原作はこの人の名をいえば「やっぱり」と思うしかないスティーヴン・キングです▼登場人物のなかでも異色といえばこの女優、狂信的なキリスト教信者であるキャリーの母マーガレット(ハイパー・ローリー)でしょう。15年間のブランクをものともせず、本作でアカデミー助演女優賞にノミネート。前作「ハスラー」では主演女優賞候補となっていた演技派です。彼女のキャリーに対する虐待同様のパワハラは、狂信を通り越してもはや「エクソシスト」の世界ですね。ベテラン復活にふさわしい力強さは恐怖すら与えました。シシー・スペイセクはこのとき27歳でした。27歳の女優が17歳の高校生を演じるのですが、不自然さを感じさせません。彼女はこの役がほしくて欲しくて、あっちこっちに手を回し、やっと手に入れただけにただならぬ力のいれようだった。ラストで彼女の目が異様に光を放つシーン。あの光が本物だったといわれてもわたし、驚きませんね▼母親の反対を押し切って、自分で作ったドレスを着てキャリーはプロムに出席する。トミーは不安におびえるキャリーを励まし、ふたりはパーティのベストカップルに選ばれる。それこそがキャリーを陥れる罠だった。プロムのキングとクィーンに決まったふたりが壇上で感きわまったとき、天井に仕組んだバケツの大量の血がキャリーに降り注いだ。落ちてきたバケツがトミーの頭を直撃。トミーを助け起こそうとするキャリーは血まみれだ。驚愕と悲鳴はやがて哄笑に。会場いっぱいに響く嘲笑のなかで、キャリーは持てる異界の能力を解放、噴出させる。映画史の記憶に残る「クライマックスベスト10」を選ぶなら、まちがいなくランクインするであろう、カルト的シーンがこのあと続きます。過激すぎる? デ・パルマには通じませんよ。好き嫌いはあるでしょうが一度はみておくべき映画ですね。

Pocket
LINEで送る