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特集「美しい虚無-妄想映画の魅力」

2014年7月15日

特集 美しい虚無=妄想映画の魅力 ペーパーハウス/霊少女 (1988年 ファンタジー映画)

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監督 バーナード・ローズ
出演 シャーロット・バーク/エリオット・スピアーズ/グレン・ヘドリー/ベン・クロス

死の世界からきた美少年 

 主人公の11歳の少女アンナ(シャーロット・バーク)がもうひとつ可愛くないのだ。いじわるそうな目で、ママ(グレン・ヘドリー)には反抗的、パパ(ベン・クロス)は単身赴任かなにかで家にいない。学校でもアンナは浮き上がっている。友達もいない。学校の廊下に立たされ気を失ってから、アンナは絵に描くことがそのまま夢に現れるようになった。つまり夢と現実の間をアンナは往還できるようになった。考えれば怖いし不気味だ。アンナは自分が描いた、丘の上にポツンと建っている白い家に窓をつけ、道を造り、窓からのぞく少年を描いた。でも脚を描いていなかったので、夢で会った少年マーク(エリオット・スピアーズ)は脚が動かなかった。アンナは脚を描き忘れた罪滅ぼしに、少年の好きそうな本やおもちゃを描き足し、外に出たことのない少年のために野原に連れ出し、次第に距離を縮めていく。キスまでする。まあいいけど▼この映画は始めから少女が夢の中に自分の幻想世界を作り出すことを予め観客に教えているから、少女が現実との境界を出たり入ったりすることは予定調和になっている。それによって生じた出来事を終局どこに着地させるかだけの問題だ。気の毒な役がパパにまわってくる。アンナはふだん家にいないパパに不満を感じていたのか、自分を可愛がってくれていないと受け取っていたのか、腹立ちまぎれにパパの顔を塗りつぶしてしまう。すると夢の中で出てきたのは丘の向こうからやってくる真っ黒な影のような男。彼は「オールドボーイ」みたいに金槌をふりあげて近づいてくる。殴り殺される、とアンナは恐怖におののく。マークはアンナを助けようと必死で動こうとするがなにしろ半身不随なのだ。そうこうするうちパパはアンナをつかまえて胸に金槌を何度もふりおろす。このシーンが児童虐待だと問題になった。毎晩熱を出して夢にうなされるアンナをママは心配でたまらない。とうとう赴任先からパパをよびもどし、アンナの健康回復のために旅行にでることにする。それも海を見たがっていた娘のために海辺のホテルに連れていくのだ。やさしい両親の配慮にアンナはふてくされてろくに口をきかない。彼女の胸中は夢の世界とそこにいる少年のことでいっぱいだ▼映像はきれいだしセンスは悪くないのに、この映画にもうひとつ共感できないのは、アンナが、くりかえすようだけど、ひとつも可愛気がないからなのだ。思春期の少女といえばもちろん反抗もするし人のいうこともきかないが、アンナのふるまいには自分のために仕事を休んで看病する母親や、仕事をやりくりして戻ってきた父親への理解もなく、ただのわがままと頭の悪さにしかみえないことがこの少女の魅力を半殺している。男子なんか大キライ、なんていいながら絵の中へいそいそとマークとデートしにいくときは、ちゃっかりおしゃれなタウン着に着替えているところは案外可愛かったけどね。とにかく劇中彼女がほとんど笑わないのは不自然なくらいです▼アンナはしかしだんだん現実と妄想の世界を溶けあわせていく。海辺のホテルにきたアンナは丘の上に立つ燈台にマークがいると思う。燈台の下に立って叫ぶアンナにマークが降りてくる。姿を表したマークはいつのまにか歩けるようになっている。崖の上で懐かしそうに話していたがマークはちょっと待っていてくれとアンナを残し燈台に戻る。もうすぐヘリコプターが迎えにくると言って。不安にかられたアンナはマークを呼ぶ。その頭上をヘリコプターの大きな影がおおう。マークが「はしごを下ろすから昇っておいで」と叫んでいる。はしごをつかもうとするが手が届かない。両手を泳がせるアンナの足元は断崖のふちだ。足をすべらしそうになったアンナを抱きとめたのは、ホテルから出た娘の行方を探しに来たパパとママだ。アンナはマークのいる黄泉の国に入りかけていたのだ▼マークを演じたエリオット・スピアーズはこのとき15歳。線の細い思春期の、少年から青年に移行するとき独特の不安定な表情で、死の世界からきた美少年を好演した。彼は本作の5年後20歳で没しました。詳しいことはわかりません。この映画の、ヘリコプターに乗って去ってしまったマークの役が暗示的です。音楽は「ライオン・キング」(アカデミー賞作曲賞)、「マダカスカル1・2・3」「インセプション」「それでも夜は明ける」のハンス・ジマーです。

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