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特集「新宿2丁目を連れて歩きたいボーイフレンド」

2014年7月23日

特集 新宿2丁目を連れて歩きたいBF トム・ハーディ 「ブロンソン」 (2008年 アクション映画)

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監督 ニコラス・ウィンディング・レフン
出演 トム・ハーディ

刑務所を愛する男 

 刑務所で30何年も服役してこの筋肉隆々を維持するのって、よっぽどごちそうの出る刑務所なんでしょうか(笑)。トム・ハーディは「欲望のヴァージニア」の男の匂いをぷんぷん放つ次男役が渋かった。彼は本来二枚目なんですよね。「インセプション」でもレオ様よりずっと存在感があったくらい。それを本作では刑務所に収監されおそらく一生出られないであろう囚人ブロンソンを演じます。ヘッドスキンに囚人服。ちょっとだけシャバに出たときはビシッとスーツで決め、なにをするかといえば恋人を振り向かせるため宝石店に押し入る。ニコラス・ウィンディング・レフン監督は「ドライヴ」のライアン・ゴスリングみたいに「シュッとした」役者がお気に入りかと思っていたのですが、「ブロンソン」ではトムを、別人のようにワイルドな主人公に仕立てました▼この囚人、ストリート・ファイターをやっていてリングネームに「ブロンソン」を名乗ります。有名になりたいから郵便局に押し入り、御用となって刑務所に入る。彼が常人と異なるところは刑務所入りとなって落ち込むどころか、ちゃんと所内での計画をたて日々を楽しく暮らそうとするのだ。一言でいうと、この人刑務所だろうと懲役だろうと、全然苦にする様子がないのだ。だから犯罪を犯そうと監獄に入ろうと、そこに楽天地をみつける。ただ意味もなく暴れまわる傾向がある。自分の監房に人質をとってたてこもる(もともとたてこもっているのだが)が、人質を殺すでもなければいじめるでもない、ちょっとした言い草が気にいらないとか、なんでそんなことで刑期を重くするのか解しかねるのだが、そこは刑務所にいることが苦にならないような男の感覚を、常人の感覚で理解することは無理だ。恋人ができたとき、彼女の気をひこうと涙ぐましい努力をする。でも彼女は他の男とつきあっていると言う。ブロンソンはそれでも苦にする様子はない。せっせとアプローチを続ける。彼女は遠回しに言っている限り通じないとわかってだれそれと「結婚する」と明言する。ブロンソンはダイヤモンドを贈るために強盗し刑務所に逆戻り▼この主人公に観客は途方にくれる。いったい彼がなにを望んでいるのか、さっぱりわからないのだ。ときどき怒りにまかせた発作のように暴力をふるうが、性格的には残虐ではないし変質者でもない。腕っぷしがやたら強いので、怪力に任せ破壊力を示したがるだけかもしれない。示されたほうこそいい迷惑だが、刑務所の所長も最初こそ異常性格の変態男だと緊張していたが、だんだんブロンソンの気性がわかって、対応がすっかり板についてきたところは笑ってしまう。大の男4、5人が飛び込んでブロンソンを抑えこむ、たったそれだけの騒動を起こすのが、彼は楽しいようにさえ見える。かぎりなく「有名になりたい」熱望は、たとえ刑務所の中でも派手な行動をとらせたがるのかもしれない。ナレーターをも務めるブロンソンが、話し終わってにっこり笑うシーンが何度か挿入される。このニッコリが、気色悪いのか無邪気なのか判断がつきにくい。トム・ハーディはそもそもこの奇妙な役柄で「ダークナイト・ライジング」をものにしたのである▼コメディでもシリアスでもないざらつきはレフン監督独特のものだ。映像は思い切り単純化されたかと思うと、いきなりコテコテの舞台劇ふうになり、トム・ハーディのスキンヘッドは「ナチュラル・ボーン・キラー」のウディ・ハレルソンを思い出させる。「実在するイギリスでもっとも有名な犯罪者」というが、彼が有名になったのは犯罪によってではなく刑務所内で起こすトラブルによってである。だからこの映画は犯罪映画というより、ブロンソンといういっぷうかわった囚人のトラブル記録みたいなもので、なぜかれがつぎつぎ揉め事を起こし刑期を延ばすかといえば、彼は刑務所が好きだったのだ。凶暴は凶暴だが、単純に腕力が強いだけで通り魔であるとか、連続殺人犯であるとか、無差別殺人犯でもなければ稀代の毒殺魔でもないし精神異常者でもない。彼が出所したとたんいつもスーツを着用する身なりに気をつかう男だったことを思い出そう。彼はダンディズムに限りない自意識を持つ男。したがって世間に身を隠すより目立ちたかった男なのだ。ムショ入りし、そこで有名になっていつまでもそこにいることに愛着がある男。劇的であることからほど遠い人物を劇的に装わせることに、トム・ハーディが成功している。

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