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特集「新宿2丁目を連れて歩きたいボーイフレンド」

2014年7月25日

特集 新宿2丁目を連れて歩きたいBF ダニエル・デイ=ルイス 「ボクサー」 (1997年 社会派映画)

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監督 ジム・シェルダン
出演 ダニエル・デイ=ルイス/エミリー・ワトソン/ブライアン・コックス

アイルランドの映画 

 ダニー(ダニエル・デイ=ルイス)は元IRA(アイルランド共和軍)のテロリスト、14年の刑を終え出所する日。ダニーは刑務所の運動場でひとりシャドー・ボクシングを黙々とこなす。このときのダニエルのフォームがじつにきれいだ。看守が迎えに来て「ダニー、14年もいてまだいるつもりか」と声をかける。彼はボクサーとして将来を嘱望されながら爆弾テロ犯として逮捕された。IRA幹部の穏健派ジョー(ブライアン・コックス)の娘マギー(エミリー・ワトソン)とは恋人同士だったが、ダニーは服役しマギーはダニーの親友と結婚し息子をもうけた。ダニーが19歳、マギーが17歳のときだ。ダニーはマギーを思い続けている。元ボクシングコーチのアイクと、ダニーはジムを再開する。IRAの過激派であるハリーは、ジョーの指示にも従わないばかりか、自分の罪をかぶって刑務所入りしたダニーが刑期を終え町にもどったのが目障りだった。マギーの夫はIRAの闘士として服役中。それなのに女房は元愛人と密会している、汚らわしい連中だと吹聴し、ダニーを町から追いだそうとする▼アイルランドの重苦しい抗争が縦糸に、ダニーとマギーの恋愛が横糸に、北の海の荒涼とした風が吹きつけるベルファストの町で、スクリーンは終始灰色のトーンで移行していく。ボクサーとして再起をめざすダニーは、トレーニングを重ね対戦相手を倒し、ボクシングジムにはダニーに憧れる子供たちがこぞって練習に集まった。ハリーはますますおもしろくない。ダニーとマギーの距離は縮まっていく。ダニエル・デイ=ルイスが抑制の効いた演技で、心の底を打ち明けるシーンはこうだ。「刑務所は沈黙の世界だ。なつかしい人の声を思い出して話しかけるが、しまいにそれも消えていく。自分の声だけしか聞こえなくなる。それも遠のいて沈黙だけになる。14年もそれに慣れると、君とこうして会っていても急に話すことが出てこない」「どうして待てといわなかったの」「そう言ったら待ったか」「待ったわ。わたしの貞節を疑った?」ここでダニーは笑うのだが、思いつめた生真面目な表情が一変するときの、別人のような笑顔がいい。マギーは人妻だし、息子は思春期の多感な年頃だ。夫は服役中でダニーへの思慕は強まりながら身動きとれない。冬の海岸を歩きながらマギーが「息子が生まれる前に結婚は壊れていたわ。わたしの気が狂わなかったのはくり返し、くり返し、あなたの声が頭の中で聞こえたからよ。すべてうまくいくと」「これでいいんだ」「なにがいいの?」「こうしてお互いがいる。それで充分だ」▼ジムはマギーの息子の放火によって灰になる。母親が自分を捨ててダニーと町を去るのではないかと疑ったからだ。ダニーはロンドンでセレブたちの座興のエキジビションのボクシングをやるが、見世物扱いに嫌気がさし、ベルファストに戻る。ハリーのダニーに対する中傷と妨害に我慢できなくなったアイクが「この町で唯一誇れる男をお前は引きずり降ろそうとしている。お前のおかげでたくさんの仲間が殺された。ダニーは口を割らなかった。おまえはダニーを騙し討にしたんだ」とハリーの急所を暴きたてる。翌日アイクの死体が操車場で雨に打たれて横たわっていた。アイクの死を知ったダニーはこの町でマギーと生きていく、なにがあってもどこにも行かないと覚悟を決める。危険だから逃げろという父親に「逃げるのは犯罪者のすることよ」とマギーもまたとどまることを決意する。アイクの葬儀の日同じ車で帰ろうとするダニーとマギーはハリー一派の襲撃を受けた…▼物語は始めから終わりまで暗い色調で展開されますが、陰気にも退屈にもならず緊迫が最後まで維持されるのは、男優陣が分厚いからです。これは男の映画でもあります。最後に不穏分子となったハリー抹殺を指示する父親役のブライアン・コックス、男同士の友情をまっとうするアイクのケン・スコット。彼はつい最近「ホビット」で元気なところをみせていました。悪役ハリーのジェラルド・マクソーリーもアイルランド出身。ジム・シェリダン監督のもとで「父の祈りを」を撮っています。ダニエル・デイ=ルイスはアイルランドという風土がよほど気質に合うらしく、アメリカとアイルランドと交代で暮らしています。

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