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特集「新宿2丁目を連れて歩きたいボーイフレンド」

2014年7月27日

特集 新宿2丁目を連れて歩きたいBF リーアム・ニーソン 「アフターライフ」 (2009年 ミステリー映画)

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監督 アグニェシュカ・ヴァイトヴィッチ=ヴォスルー
出演 クリスティーナ・リッチ/リーアム・ニーソン/ジャスティン・ロング

葬儀屋の正体

 リーアム・ニーソンの代表作とはいったいなんだろう。「シンドラーのリスト」か。いいや、とんでもない。若いときはシェール扮する弁護士の弁護をうける「容疑者」、メリル・ストリープと共演の「判決前夜」、ジョディ・フォスターとでは「ネル」、ジュリアン・ムーアとは「クロエ」、まったくオスカー女優総なめのモテぶりであるほか、熱血親父の「96時間」、アイルランド出身の彼がシリアスな社会派映画に取り組んだ「レクイエム」、まだまだあるぞ、キンゼイ博士にもなった、神父もやった、おお、ライオンの声まで(「ナルニア国物語」のアスラン)。しかしこれだけはまだだったというのが本作の葬儀屋▼映画の半分くらいが「わたしは死んでいない」「君は死んだ」の繰り返しという奇妙な映画よ。それをヨソ見させず首をひねりながらも観客についてこさせるのは、ひとえにリーアムとヒロインのクリスティーナ・リッチの、貫禄と繊細の組み合わせの妙だろう。主人公は小学校の教師アンナ(クリスティーナ・リッチ)と葬儀屋のディーコン(リーアム・ニーソン)とアンナの恋人ポール(ジャスティン・ロング)。ポールがアンナを最高級レストランに招きプロポーズしようとしているのに、話半分まででアンナが別れ話だと早とちりし、店を出て車に飛び乗り、運転事故する。気が付くと葬儀屋のストレッチャーに横たわっていて、ディーコンがアンナを覗き込み「君は死んだのだ」と言う。そんなバカな、わたしはこうして生きているじゃない、とアンナ。葬儀屋は「みんな同じことをいうのだ」といやに落ち着き払っている。アンナは脱出しようと試みるが葬儀屋に捕まり、彼は脅したりなだめたりしながら注射を打ち、アンナを眠らせる。この葬儀屋、なにかというと注射をうって黙らせる不気味な男▼アンナの教え子が、葬儀屋と問答しているアンナを窓に見かける。先生は生きているというがもちろん葬儀屋は丸め込む。葬儀屋は死者の魂と話ができるそうだ。ポールは悲しみにうちひしがれていたが、彼もまた恋人は生きていると確信するに至る。葬儀屋は家族でないと許可されないという理由で、遺体をみせてくれない。リーアム・ニーソンの声やら態度、一挙手一投足は自信にあふれ、しまいにアンナまで「そうだ、わたしは死んだのだ。死んでよかった」とつぶやくにいたる。葬儀屋のオフィスの壁には彼が扱った死者たちの写真がびっしり貼られている。彼はそれを自分の作品のように満足気に眺めるのだ▼アンナが事故に遭ってから埋葬まで3日。葬儀屋とやりとりするアンナの言動はばかにリアルである。しかし生きているとすればお腹もすくだろうし、喉も渇くと思うが、そんなことに葬儀屋もアンナも頓着しないからやっぱり死んだのかもしれない。隔靴掻痒のもどかしさを覚えながら、観客は葬儀屋の片言隻句に引きずり回される。いよいよ葬儀の手はずが整ったと葬儀屋はアンナに通告し、精も根も尽き果てたアンナは自ら棺桶に入り、最後に自分の死に顔をみたいと葬儀屋に頼む。渡された鏡を見たアンナは鏡が息で曇るのを確かめた。死んでいなんかいない、自分は生きている、暴れだすアンナを葬儀屋はまた注射で眠らせる。こうなるとやっぱり葬儀屋はペテン師だとだれでも思う。なにが死者と会話できるだ、会話なんか一言もなく注射で眠らせるだけではないか。アンナの教え子の少年は、でも葬儀屋の洗脳にあってすっかり仲良くなり、葬儀屋の手先になって連れだって歩くようになる。葬儀屋はポールにアンナは生きているかもしれない、埋葬したばかりだから掘り返せば間に合うかもしれないと使嗾し、墓に車を走らせたポールはこれまた事故って死んでしまう。ポールの車に衝突しかけたのは葬儀屋の車である▼どゆこと? 葬儀屋とは悪魔の使者か。死の天使か。そんないいものではなく彼の正体はサイコな連続殺人犯。リーアム・ニーソンの重々しい演技がまことしやかに本性を隠しているが、彼には殺人の基準があり、生を受けながら人生をせいいっぱい、一生懸命に生きておらず、愚痴ったりうらんだりしているやつをみると許しておけなくなるのだ。なんでアンナが? 彼女は母親に愛された経験がなく、アンナが死んだ(と思われたとき)母親が発した言葉は「これからだれがわたしの面倒を見るのよ」だった。そんな可哀想な境遇にいるアンナなのに、葬儀屋はアンナが恋人に文句ばかりいっているのが気にいらない、もっと真剣に生きろといいたいらしい。ポールを殺したのはなぜ? 彼は弁護士だ。警察に友人がいる。葬儀屋のことを怪しいと疑い警察にあれこれ質問しだしたからだろう▼イカレタ葬儀屋のおかげで何十人も「事故に会い」「注射で仮死状態にされ」「目がさめて葬儀屋と対話し」(これがいわゆる死者との対話)「墓に生き埋めにされた」。途中でそれに気がつくから「大真面目でこんな映画みておれるか」と思うのだけど見てしまう。まことしやかなリーアムと迫真のクリスティーナ・リッチと、かわいそうなジャスティン・ロングのさすがの演技に敬意を払うのはやぶさかではないが、ここだけはちょっと。恋人とマンネリ気味だとはいえ、彼があらたまってポケットからなにか取り出しかけている素振りなのに、それを無視してしかも一直線に別れ話だと思い込み、店を飛んで出る女なんていない。席を蹴って帰るのは、ポケットから出てきたものを確かめてからよ。

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