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シネマ365日

2014年7月30日

キング・オブ・マンハッタン 危険な賭け (2012年 サスペンス映画)

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監督 ニコラス・ジャレッキー
出演 リチャード・ギア/スーザン・サランドン/ティム・ロス/ブリット・マーリング

身から出たサビ 

 つまりこういうことね。主人公のロバート・ミラー(リチャード・ギア)はヘッジファンドの大物。一代で莫大な富と名声を築いた今年60歳の男。娘ブルック(ブリット・マーリング)と息子は優秀な後継者と育ち、妻エレン(スーザン・サランドン)は慈善活動に余念がない。社交界・経済界から羨望の目でみられている一族だ。でもロバートがロシアの銅山の出資に失敗し大損した。多額の負債を返却するため粉飾決算し自社を売却する準備を進めている。しかし売却相手の銀行は取引に姿を現さずロバートは(おれが絶壁にいるのがばれたのかも)と焦燥をつのらせる。別荘で飲んだ帰り愛人をのせた車で事故を起こした。助手席にいた愛人は死亡。車は炎上。ロバートは彼に恩義がある黒人青年ジミーをよび事故の後始末を頼んで自分は口をぬぐう。酒酔い運転、日本で言う救護法義務違反、粉飾決算と詐欺、それに結果的に殺人がかぶさってくる▼事件に目をつけたのが風采のあがらない刑事ブライヤー(ティム・ロス)だ。金融界の超大物逮捕のビッグチャンスである。まず公衆電話の通話記録からジミーにたどりつき、真面目な黒人青年をさんざん脅したりゆさぶったり、正直に白状したらお前は自由だと証拠固めにかかる。ロバートの会社、家庭に出没する、汚らしい初老のチビ男がティム・ロスである。じつにうまい。彼が姿を現すだけで観客席まで空気がドヨヨ~ンとなる。ニコラス・ジャレッキー監督はこれが長編第一作。ていねいによく作りこみ、一難去ってまた一難。これじゃたまらんなアと思わせるに充分なストレスとトラブルをテンコ盛り、ロバートに用意する。そのわりにリチャード・ギアの形相は険悪にならないのですよね。それがこの人の持ち味といえばいえるのでしょうが、見ている方は(どこかで助かるようにできている)とばかり、のめり込んでいけない。それでソンしているのね、この人。でもね、いってみれば彼がトラブルにつぐトラブルをかかえこむのは自業自得でしょ。ロシアだなんて勝手のわからない国の投資先に、人のいうなりに金をつぎこみ、引き上げ時をまちがえ大損。資金繰りに行き詰まって会社をいい値段でうるため損失を隠し、警戒して乗ってこない銀行にはハッタリをかます。会社の幹部である娘は二重帳簿に気づき「パパ。これはどういうこと」女は真面目だからパパが苦し紛れにいう「事業にはこういうときもある」なんて言い逃れに耳を貸さない、いいぞ、ブリット・マーリング▼ロバートは「投資した罪もない人をまきこむのだ、そんなことはできない」とか言う。巻き込んだ張本人はお前だろ。ビジネスだけなら最悪の場合倒産だが、殺人となると本人が塀の中に入るだけですまない。家族もろとも抹殺である。24時間以内に借金を返済しなければお前の会社は破産宣告だと最後通牒をつきつけられ、ロバートは最後の賭けにでる、と書くとカッコいいが粉飾がばれないうちに実質財務破綻の自社を売り逃げするのよ。刑事は「大富豪憎し」の怨念が暴走して証拠偽造が暴かれる。ティム・ロスは無念の涙をのみます。出演陣のなかでもうひとりの大物、スーザン・サランドンはどう出たか。彼女は良妻賢母の見本である。いつもやさしく夫を迎え、誕生日には家族揃ってお祝いの席をプロデュース。娘も息子も母親にも一目おいているふうがありあり。誕生日にもかかわらず「会社に戻る。すぐ片付けてくる」という夫を送り出すが、目つきは猫の目のようにキラリ。そもそも社長が夜の夜中に出て行かねば処理できぬ用なんて、もしあるとすれば、そらそんな会社つぶれても仕方ないですわ▼彼女が愛したのはロバートとその財産。自分の知らぬ間に遺産相続執行人の法的手続きを済ませている妻に、ロバートは複雑な表情。とっくに愛人もばれていた。愛人のひとりやふたりどうでもいいけど、あとくされで面倒をおこすのはやめて(今回のように)と妻にいわれシュン。このときとばかり妻は全財産を掌中に納める。ロバートにはかろうじて傷つかずにすんだ体面が残り、マンハッタンのキングとしてパーティに出席する。ま、どっちにしても会社経営なんか板子一枚下は地獄。妻にしても娘にしても口でいうほど順調に運営していけるとは思えない。ロバートにとっていちばんの打撃は愛人を失ったことね。この映画は「キング・オブ・マンハッタン 身からでたサビ」よ。

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