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特集「男前」

2014年8月2日

特集「男前」 ブリット・マーリング ザ・イースト (2013年 社会派映画)

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監督 ザル・バトマングリ
出演 ブリット・マーリング/アレクサンダー・スカルスガルド/エレン・ペイジ

頑張れ「デロッシ」君

 ブリット・マーリングが自分でも脚本に参加しているせいか、いかにも彼女らしい映画になっています。一言でいえば問題意識にあふれた社会派映画で、ヒロインが才色兼備の優等生という。こういうやりにくい秀才が昔から学年のどこかのクラスにひとりくらいいました。なにやらせてもできる。男にはあこがれの的、じゃ女から嫌われるか。いいえ。彼女の笑顔とフェアで聡明な性格を女だって好きだ。ブリット・マーリングをみるたび、かのアミーチスの永遠の古典「クオレ物語」の級長デロッシ君女子版というイメージが彷彿として仕方ない。秀才で勉強はいつもトップ、でも嫌われるガリ勉かというとそうじゃない、スポーツは万能、才能があるとかないとか問題じゃない、なにしろ努力家だからバレーボールだろうと水泳だろうと、一定以上の成績は必ずあげるのだ。学業優秀を鼻にかけずやさしく親切で、責任感が強く言わねばならぬ主張を断固行動で貫く。こう書くとこの映画の半分は言えてしまったようなものなのです▼民間調査会社の調査員ジェーン(ブリット・マーリング)は、環境テロリスト集団「イースト」に潜入調査を命じられ、サラと名を変えた彼女はグループの一員になることに成功する。イーストは環境汚染や健康被害をもたらす製薬会社、鉱山発掘会社に過激な報復を行っていた。彼らの正体は謎に包まれ、FBIでさえ追跡できなかった。潜入したサラはイーストの過激な思想に反発を覚えたが、カリスマリーダーのベンジー(アレクサンダー・スカルスガルド)のリーダー・シップや彼らのカルト的団結に次第に魅力を覚えていく。グループは起居を共にし、排他的であるが厳しいルールを自らに課している。メンバーには薬害によって妹が自殺し、自らも副作用に侵されている医師。父親が大企業の社長で自分はその娘であるイジー(エレン・ペイジ)。彼女はイーストのつぎなる標的が父親の会社であるにもかかわらず、父親とかれが経営する会社に懲罰を与える活動をやめない▼サラはベンジーにぐんぐん惹かれ、寝ちゃうのです。セオリー通りという気がしないでもないですがマア先に進もう。イーストの活動に共鳴するようになったサラですが、そこはやっぱりプロですから、リーダーと寝たくらいで仕事を放り出すような真似はしない。立派にミッションを果たし、シャロン社長はじめ幹部一同から賞賛を受け再び組織に潜入。シャロンを演じるのがパトリシア・クラークソンです。この人本来、やさしい柔和な面立ちですが、面割れしたら命はない潜入捜査を、平気で命じる女社長のいやな表情をうまく出しています。イェール大学とフォーダム大学で演技を学んだこれまた秀才組み。フォーダムの後輩にアマンダ・サイフリッドがいます▼土壇場でカリスマのはずのベンジーがとんでもない食らわせ者だったことがわかる。サラはイーストの最後の標的が自分の勤める会社だと知る。それでもベンジーの要求通り潜入捜査員のデータを盗み出すのだが、ベンジーはサラが調査会社の社員だとわかっていて泳がせていたというのです。つまり彼女とは寝るだけだったってこと? 彼がサラに言うにはリストを得ることで世界中に派遣されている調査員を監視することができるのですって。監視してどうするのよ。このグループはいつも手元不如意で夕食はスープ一皿よ。でもベンジーはサラが盗みだすのに失敗したとウソをつくと激怒して、調査員の先入先をぜんぶばらしてやると本音を言う。そんなことしたら潜入中の調査員はみな殺されてしまう、サラを含めて。サラは国境でベンジーと別れる。おとなしい幕引きですよね。このへんが野蛮になれない女子デロッシ君の限界かな。と、思ったら彼女には彼女のやりかたがあった。暴力ではなくさりとてだれかが犠牲になるわけではなく、大企業のエゴをきっちり告発する正義の行動…彼女の結論部分がエンド・クレジットにかぶってちょろちょろと表現されていくにとどまるのが、うまくはしょったって感じね。なんのことかわからん観客だっていますよ、きっと。「彼女は意外な行動を取る」なんて思わせぶり過剰なコピーがDVDパッケージにあるのだけど、一言でいえばウィキリースクでしょうか▼リストを手中にしたサラは、テロ組織に潜入している調査員と連絡をとりあい、企業告発に転じます。企業保護をビジネスの目的にしているシャロン社長にすれば社員の裏切り、イーストにすれば静かなる報復の継続。もひとつ決着のでない大問題に、いわゆる「一石を投じる」って映画なのね。マーリングは好きだし、よくできていると思うけど、現実の苛酷さがもう少しなんとかならなかったの、たとえばゴミのなかに混じっているリンゴや野菜を食べるようなこと以外に。それにサラの恋人はなんのために出てきたのでしょう。ちょっと気の毒だったわね。こういう問題意識の強いヒロインには、理解ある、もしくはその逆の恋人がいるのがセオリーだという、ありふれた前提でしかなかったのでは。作劇術の練り方が彼女の課題だと思うわ、頑張って、男前のデロッシ君。

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