女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「男前」

2014年8月7日

特集「男前」 サンドラ・ブロック(上) デンジャラス・バディ (2013年 コメディ映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ポール・フェイグ
出演 サンドラ・ブロック/メリッサ・マッカーシー

快作、女子バディもの 

 2013年はサンドラ・ブロックにとって実り多い年となりました。本作「デンジャラス・バディ」と「ゼロ・グラビティ」があいついで公開されたのです。「デンジャラス」は4300万ドルの制作費に世界で2億2900万ドルの興行収入。「ゼロ」のほうは1億ドルの制作費に7億ドル。サンドラは遠からず「もっとも稼いだハリウッドのセレブ」のひとりとなること疑いなしでしょう。こういう好結果はひとえに彼女の選択眼のよさにあると思うのです。サンドラの出演映画でコケたというのがあまりない。あるにはあったろうが「スピード」でブレイクしてから20年、コンスタントに仕事をこなしているのは、サンドラ・ブロックという女優は損をさせないという評価が定着しているからでしょう。オスカーは取ったし(2009「幸せの隠れ場所」)スキャンダルはない。仕事熱心で人から好かれる。ジョディ・フォスターが「自分がこの業界でやってこられたのは、定められた日の定められた場所の、定められた時刻にきちんといて、完全にセリフを覚えスタンバイしていたからだ」と言っていたけれど、大成する女優(男優も)のほとんどは手品を使うわけでも、抜け道を知っているわけでもなく、すべての関係者に迷惑をかけず自分の本分を果たすという、仕事のイロハをおさえているからなのよね▼サンドラは自分のキャラを熟知している。モーツァルトがディレッタントについて面白い意見を手紙に書いています「彼らには共通点が見られる。独自の思想を持っていないので他人の思想を借りてくるか、独自の思想を持っている場合は使いこなせないか、そのどちらかです」使いこなせない自分自身など屁の役にも立たぬと、この天才は言っているのと同じだ。彼は音楽という独自の思想を使いこなし、音楽はモーツァルトという人間を使い果たした。話はちょっとおおげさになったが、サンドラ・ブロックという女優の賢さは、自分の手にあう役柄だけを十全に表現してきたことだ。どんなにカッコよい役でも自分のガラではないこと、自分の性格にあわないこと、無理をしなければ入り込めない役は賢明に回避してきたと思われる。人は失敗から学ぶというが、わかりきった失敗を招き寄せなければ、いちいち学ばずともすむのだし、もっとも合理的ではないか▼情があって頭がよく、仕事熱心で融通がきかない真面目な女。ユーモアを解するセンスと勇敢な性格は、勇気りんりん色気ゼロ点。一言でいえば、サンドラってとても同性から好かれるキャラなのだ。おっちょこちょいぶってはいるが、そういうところも見せておかないと、頭のよさがほとばしっているジョディ・フォスターみたいだと、人はなかなか寛大になってくれない。それにこういっちゃなんだが、目がくらむような美人でないところもトクだ。サンドラが泣いたり笑ったり怒ったりするたび、観客は同じ感情を共有する。もしジョディ・フォスターが(ごめんな、ジョディ)泣いたら、人は(お前みたいな女が泣くはずないだろ、ウソ泣きだろ、わかっているぞ)と信じないだろうし、大笑いして喜んだら「ふん、気を使ってわざと笑ってくれなくてもいいのだけど」と斜めに見る。ジョディにふさわしいのは思考する教授のような雰囲気で、サンドラがそれをやると(おい、悪いものでも食ったのか)とたずねたくなる▼本作でサンドラは相方に恵まれました。メリッサ・マッカーシーです。「ブライズ・メイズ 史上最悪のウェディングプラン」でアカデミー助演女優賞にノミネート。数多くの主要映画賞を受賞あるいは候補となってブレイクした女優です。彼女はFBIのエリート捜査官、上昇志向の固まりサラ・アッシュバーン(サンドラ・ブロック)と真逆、叩き上げの粗野で野蛮な所轄の女刑事シャノン・マリンズに扮します。容疑者には暴力をふるって吐かせ、頭の固い上司をだまし野獣のようなカンで捜査を進めていく。お互いが反発するのはこの手のバディ(相棒)ものの常道です。しかしながら「ありふれた役なんてない。ありふれた役者がいるだけだ」というシドニー・ルメットの言葉を思わず持ち出したくなるほど、ありふれた役をありふれていなくさせた女優たちでした。映画がはじまってまもなくサンドラが大きな猫を抱いています。10キロはありそうな巨大な猫です。隣家の猫ですがときどきサンドラの家にくる。サンドラはこの猫を可愛がっていたが、ニューヨークからボストンの麻薬捜査に出張し、相棒と顔をあわしたときマリンズが猫の写真に目をとめ「この猫は?」とききます。「ニューヨークでいなくなったの」「かわいそうに。あなたのみじめな人生に猫でもノー・サンキュー。出てったのね」。つぎにこれはマリンズがサラを迎えにきたシーン。「でかけよう」とマリンズ。「着替えるわ」とサラ。「スーツ着てるじゃん」「これパジャマ」。子供の頃から孤児院か里親か、とにかく両親に縁のなかったサラは里子としてあちこちの家を転々としました。さびしい少女時代でした。事件を解決して約束だった昇任を捨て、ボストン支局に残ることにしたサラに、ある日マリンズがプレゼントをもってくる。「クソオタク」とサラのことを呼びかけたカードにはこうある「里子に姉妹ができたぞ。マリンズ」。男同士が占領していたバディものに、スカッと風穴をあけた快作です。

Pocket
LINEで送る