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特集「男前」

2014年8月11日

特集「男前」 ニコール・キッドマン デッド・カーム/戦慄の航海 (1989年 サスペンス映画)

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監督 フィルップ・ノイス
出演 ニコール・キッドマン/サム・ニール/ビリー・ゼイン

逆襲するキッドマン

 ニコール・キッドマンが23歳のときのオーストラリア映画。本作をみたトム・クルーズがキッドマンを見染めハリウッド入りしたいわくつきの映画です。今とまったくちがった顔ですが、透き通るような白い肌で、きりっとしてとてもきれいですよ。ちょうど「エイリアン」でデビューしたころのシガニー・ウィーバーによく似ている。どっちも痩せて背が高いしね。ニコールはどうして後年、ボトックスで顔をガチガチにしてしまったのだろ。彼女の憎めないところは、笑ったらひきつるくらい肌が固定して、いくらなんでも不自然だという指摘が集まり、デトックスの使用を認め、懲り懲りだから二度としない発言したのよね。ところがカンヌ国際映画祭(2014)のレッドカーペットで、ニコッとしたときまたもや頬が硬直していると指摘され「ボトックス再び」と書き立てられた。すぐばれてしまうことをホイホイやってしまうところなんか、どう考えても人が好いとしか思えないのよね▼女優とは一言でいうと「華麗なるおっさん」ともいうべき存在だ。はたして仕事に打ち込む女を「おっさん化」していると言うが、そんな呼称こそ女を男性に従属させる見方とちがうか。なにもかも放り出さなければやっていけないものが女の仕事にはある。男が社会で安定した評価を得られてきたのは、主婦もしくはそれに代わる存在を確保したからだ。これまでの女が結婚によって奪われたものは、時間でも自由でも私有の所得でもない。孤独である。孤独とは遺棄回避すべき人生のダークサイトか。そんなふうに考える女がいまどきいるだろうか。仕事をする女は寸刻みのスケジュールとプレッシャーと対社会的な責任で緊張を強いられ、暗い静かな安全な場で自分を取り戻す、適宜な時間を求める。おかずの支度も家事もおつきあいも放り投げたい。あまり極端に投げ捨てては世間的なしわよせがきて、その処理にまた余計な時間を取られるから、適当に対応するものの本音はこれ「なにもしたくない!」あるものを食べ、飲み、寝転がって電話もメールもシャットアウト、そのへんを好き勝手に散らかし、しかも罪悪感にとらわれたりしない▼ジョディ・フォスターなんかオフのときはメークもしない、服にもこだわらない、料理は自分で作る(ただし簡単なもの)、時間がある限り本を読む。彼女が本を持って部屋にたてこもると、母親さえ声をかけない無言の協定がフォスター家にあったと実兄が書いている。それぞれの状況は異なるとしても、超一級の仕事をする女たちの共通項のひとつは集中力だ。あれもこれも絶対にしない。する気もない。障害と予測される案件については注意深く、繊細な配慮で事前に取り除く。私生活の安定を大事にし、共演者とのトラブルはまず起こさない。恋愛もトラブルのひとつと考えているふしがある。離婚、結婚にともなうトラブルは、あったとしても問題処理能力が高い、言い換えれば立ち直りの早さは無類である▼本作当時のキッドマンが将来そうなるとはだれもいえなかったと思うが、しかし思考や行動パターンが、いわゆるカスタマナイズされた女から逸脱していくであろうという、予感を覚えた人はいるのではないか。女は本来ラディカルな生き物だが、多くの女自身がそれを抑圧してきたことを否めない。しかし中には仕事というテコ、ましてそれが女優というジャングルの生存競争となると、のたうちまわってでも浮上する以外、自分を許せない類の女がいたにちがいない。キッドマンやフォスターのワーカホリックは業界でも有名で一種の強迫観念に近い▼そこで本作だが、子供を交通事故で失い自分も重傷を負った主婦レイ(ニコール・キッドマン)が、夫ジョン(サム・ニール)とふたり、癒しの航海にでる。ジョンは豪華客船の艦長である。優雅なクルーザーを操舵して船は大洋へ。おりしも海はデッド・カーム(べたなぎ)のある日、ジョンは沖に一艘の船を認める。荒れて人影も見えない。双眼鏡はひとりの男が懸命にクルーザーに向かって漕いでくるボートを捕らえる。彼はヒューイ(ビリー・ゼイン)。登場人物は3人だ。男がいうには船内で食中毒が発生し全員死亡した、自分はボートで脱出し船は難破した、簡単にいうとそれだけである。ジョンは救助できるものならしなければならぬと律儀に難破船に向かう。レイは不吉なものを覚えやめてくれと頼むが夫は行く。残されたレイにヒューイは態度を一変させなれなれしく接近する。ジョンが難破船でみたものは船底を浸す海水に沈んだ死体や切断された肉体の一部だ。食中毒ではない、虐殺である。ジョンとの交信がとだえたレイは、危険な男ヒューイにレイプされ、銃も奪われるが態勢を立て直す▼ヒューイが死んだと思ったら生き返る、そこはホラーの常套手段だが、レイが反撃に転じるまでちょっと時間がかかりすぎ。ヒューイが普通の男でないことがわかった段階で射殺するのが自然だろうに、もたもたしていたのはキッドマンのレイプシーンをみせるための時間かせぎだとしか思えない。ジョンは(もともとお前が余計なことするからだろ)とはいうものの、無事女房と助けたことだし、キッドマンの撃った照明弾がヒューイの脳天をぶちぬくのは決まりすぎだったけど、まあいいか。

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