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特集「男前」

2014年8月14日

特集「男前」 ナタリー・ポートマン 水曜日のエミリア (2009年 家族映画)

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監督 ドン・ルース
出演 ナタリー・ポートマン/スコット・コーエン/リサ・クドロー

破壊女子ポートマン 

 ナタリー・ポートマンが製作総指揮までして入れ込んだ映画。よほど気に入ったのでしょうね。ヒロイン、エミリアが彼女自身にそっくりだからね。略奪婚したハーバード大学出身の、上昇志向の強い弁護士という設定。性格が破壊的だと劇中指摘されているのはともかく、バッタバッタとなぎ倒すような口撃は、現在(2014)ベストセラーの「他人を攻撃せずにはいられない人」みたい。エミリアにも人にいえない心の傷があって、その防御本能が人を攻撃させているのだけど。エミリアの夫ジャック(スコット・コーエン)が、妻の破壊力にほとほと手を焼き「君は愛する人に厳しいのだ」と匙を投げた気持ちはよくわかるわ。エミリアのここがとか、どこがとかが悪いのじゃない、彼女の性格が完全なサドなのよ。最後はなんとなく家族がまとまるいい雰囲気で終わるけど、ジャックにとったらまだまだ先は「千仭の谷、万乗の山」ね。ご一家の平安を祈るわ。弁護士だから理屈に強いのは当然としても、揚げ足は取るわ、逆ねじは巻くわ、ケンカばかり吹っかけ泣いたり怒ったり、しょっちゅう激している騒々しいエミリアです。一挙に話をとばさないで順序立てて述べていきますね▼新人弁護士のエミリアは毎週水曜日、継子のウィリアムを迎えに行くのが憂鬱だ。夫ジョンの息子で、前妻キャロリンとの間にできた子で8歳。両親が離婚し、自分が母親と引き離されたのはエミリアのせいだと思っているからあからさまに反抗する。エミリアはエミリアでべたべたガキのご機嫌をとるつもりはない。ふたりは常に膠着状態である。キャロリンは医師だ。ことあるごとに育児方針に口をだしてくる。それでもエミリアは学校の帰りやタクシーのなかでアプローチを試みる。アイスクリームをいっしょに食べたり、いっしょに料理したり、かなり涙ぐましい努力をするが、それを尻目に父親の帰宅をまちかねてウィリアムが告げ口する。憎らしいガキである。ジャックは根気よく息子の言い分に耳を傾け決して叱らない。エミリアはむかむかしてくる▼ジャックはエミリアの上司だった。ジャックは妻とは形だけの夫婦だと不仲を言い、恋におちたエミリアは「もともと壊れている愛情なのだから別れられるでしょ」と破壊女子の本領を発揮する。おまけに妊娠したという。これまた「できちゃった婚」のナタリーその人を思わせる。案の定ジャックはエミリアと結婚、めでたく娘イザベルが生まれた。絵に描いたような幸福な家庭ができあがるはずだった。ところが3日目に赤ん坊は死んでしまう。エミリアが授乳したまま眠ってしまい、気がついたら腕のなかで赤ん坊は呼吸していなかった。死因はSIDS(乳幼児突然死症候群)と診断されたがエミリアは自分の過失による窒息死だと信じる。その日から社会のあらゆる視線が自分を責めているように思えてならない▼エミリアの母親は父親の浮気で悩まされたあげく離婚。父親は判事である。エミリアにすれば羊の皮をかぶった狼かタヌキに等しい。妻を泣かせた男がしゃあしゃあと人さまを裁くとは、盗人猛々しいにもホドがある。ところが母親は父を許し復縁するのだ。ママしっかりしてよといいたいのに、あろうことかウィリアムは「おじいちゃん、おじいちゃん」と祖父になつくのだ。おじいちゃんといわれ相好を崩す父親に、怒髪天を衝いた娘は「あなたの孫じゃないでしょ!」エミリアの身勝手で無神経な発言は暴走する。女友達ミンディが流産したときは「すぐまたできるわ」となぐさめにもならぬ言葉を言い、娘をなくして失意のエミリアをミンディはやさしく励ますのに「胎児と乳児はちがうわ」(お前それでも弱者を守る弁護士か)と思ってしまう失言迷言をいいまくる。もうこれ以上いっしょにおれない。ジャックもエミリアもどっちも疲れはてエミリアが出て行くことにし、どこかさびしげなウィリアムにこう言う「あなたの家にわたしは合わないの。わたしの歯は尖りすぎているし、尻尾が長すぎる」▼ある日キャロリンがエミリアを呼び出した。表情を固くして診察室にきたエミリアに、イザベルの死は100%SIDSだと断言する。優秀な小児科医であるキャロリンがさらなる専門医に診断を仰いだ結果だった。呆然とするエミリアに「あなたが理解できるまで繰り返すわ。新生児は死ぬことがあるの。あなたはたまたまそのとき赤ん坊を抱いていただけなの」エミリアの頬を滂沱と流れる涙。「ひとりにしておいてあげるわ」とキャロリンはさっさと部屋を出ていく。このシーンのキャロリンもかなりの男前ですね。彼女が再診断に動いたのは、なんと息子ウィリアムの頼みがあったからだった▼継子と継母が心を通い合わすいいシーンがラストにあります。ウィリアムが「ぼくは仏教徒になるンだ。仏教徒は輪廻転生の教えを信じている。人は死ぬと生まれかわるのさ。ぼくは信じている。生まれかわったイザベルにまた会えると。そのとき人はこう思うんだ。あの人が好きだ、でも理由はわからない…」。キャロリンもエミリアも生まれかわりを信じる宗教ではありません。しかし仏教徒になるという息子の意志を尊重する。失ったイザベルを、自分の妹として愛するウィリアムの気持ちがわかっただけで、エミリアは報われたことでしょう。

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