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特集「男前」

2014年8月22日

特集「男前」 ジェニファー・ローレンス ハンガー・ゲーム (2012年 アクション映画)

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監督 ゲイリー・ロス
出演 ジェニファー・ローレンス/ウディ・ハレルソン/ジョシュ・ハッチャーソン/ドナルド・サザーランド

この3人が救い 

 アメリカとカナダで4億ドル、世界で6億9000万ドルっていうからすごいヒットでしょ。だからどんな映画かと思ったのよ。主演はジェニファー・ローレンスだしね。「ウィンターズ・ボーン」のあのしっかりものの娘ね…と思い出していたら、おやま、今度も愛する妹の身代わりで死のゲームに出場するお姉さん役なのね。どこまであなた苦労性なの▼文明が崩壊した独裁国家パネル(総統スノーがドナルド・サザーランド)では、キャピトルと呼ばれる富裕層に支配され、その下部に農業、漁業、炭鉱など12のセクションにわかれた労働者層があった。昔反乱があり第13セクションが政府の鎮圧を受け壊滅した。以後クーデターを制裁する記念イベントとして、各地区の12~18歳の男女ひとりずつを選び、計24人が、キャピトルがハイテク装置で厳重に監視するなか、野外の広大な競技場で最後のひとりになるまで殺しあう。その国家イベントが「ハンガー・ゲーム」で、くじびきで当たった出場者は「いけにえ」と呼ばれる。今回で74回目だ。第12地区のカットニスは11歳で父親を炭鉱の事故で亡くし、妹と母親の三人暮らし。その妹が「いけにえ」となった。カットニスは迷わず自分が身代わり志願する▼各地区担当の教育係がいて、第12地区担当はヘイミッチだ。飲んだくれの教育係をウッディ・ハレルソンが好演する。彼もかつては「ハンガー・ゲーム」の勝者であったが、なぜか世をすねている。彼が妹の身代わりになったというカットニスに共感するものを覚え、サバイバルのテクを伝授する。ゲームが始まったら殺されるより寒さと感染症で半分は死ぬ、ヨーイドンでみなといっしょに武器を取りに走り出すとはじきとばされる、様子をみて森のなかに隠れ水のそばを確保しろ、キャピトルのお偉方がスポンサーになるとゲーム中、救援物資を差し入れてくれるから訓練実習期間に自分をアピールしておけとかである。こういうところ、なかなかきめ細かくていい。でもね、肝心のゲームがなかなか始まらないのよ。まあ140分の尺だからのちほどこってり描き込むのだろうと思っていたけど、ざっと半分くらいまでキャピトルの内情や、幹部の紹介や、彼らセレブ層は滑稽としかいえないメークと衣装をまとって、殺人ゲームの開会を今や遅しと待ち構えている。支離滅裂の仮装行列みたいな出で立ちが、映画そのものの知性を疑わせる。こんな連中が国を支配するのだから教育係たるもの、幻滅して酒も飲みたくなるわな▼やっと試合開始である。カットニスは同郷のピータ(ジョシュ・ハッチャーソン)の自分に対する恋心を知るがいずれは殺しあう宿命にある。ゲームが始まってみるみるうちに大砲が8つ鳴る。ひとり死ぬたびに1つ鳴る。このあたりテキパキと進んであっというまに人数が減る。こらもう下手に動くより身を隠して寒さと感染症でほとんどが死んじゃうのを待つほうが賢いとカットニスが思うの、無理ない。彼女ははやばやと木に登って持久戦に出る。じつに気の長い映画である。カットニスの窮地を救ってくれた第11地区の少女はまだ12歳。カットニスは彼女を助け共闘するが、カットニスを襲いにきた集団に少女は殺されてしまう。もし少女とカットニスが生き残れば殺しあうわけだから、それを避けるために少女を退場させたとしか思えない脚本だ▼映画の後半になってやっとアクションシーンが入るのはどう考えてもお粗末だ。コンピュータ班が裏で操作し、森に火事を起こしたり猛獣を放ったり、ゲームの規則まで変えるのはそれこそルール違反だろう。国家の制裁を忘れさせないために「いけにえ」たちに殺しあわせるのがゲームの目的であり、セレブたちはだれが生き残るかで賭けをしている。そこへ規則をこう変えた、ああ変えたと主催者側が都合のいいことばかりやって、ゲームなんかなり立たないだろう。しかも「ハンガー・ゲーム」はテレビでライブ中継される国家イベントなのだ。ルールに公平でなければ命を的に戦う「いけにえ」の家族から反乱が起こるのは当たり前よ▼それといちばんバカらしかったのは、勇敢で冷静な少女カットニスが勝者となっただけで、この映画は終わっちゃうのよね。愚かな国家は存続するわけね。なんのためのヒロインよ。どうせマンガなのだから国家転覆、指導者交代、美少女革命、宇宙からの急襲とか74年もやっているうちには制度疲労もあるだろうし、遺伝子操作の間違いで悪の怪物が生まれるとか、リアリティ完全ゼロの馬鹿騒ぎくらいはさせるべきだわ。ジェニファー・ローレンスのストイックかつ無愛想な主人公、いい加減な酒飲みだけど仕事はプロの教育係ウッディ・ハレルソン、映画界の恐竜みたいな巨体でヌッと現れ、不気味さをかきたてるドナルド・サザーランド、かれらの重量感だけが救いだったわ。

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